2013-12-6
「Selenia Dimensions」
RSNA 2013 [第3日:12月3日(火)]
米国内においてマンモグラフィ装置の60〜70%のシェアを占めるHologic(ホロジック)は,トモシンセシス対応の乳房X線撮影装置「Selenia Dimensions」を中心に,周辺機器も含めて展示した。
Selenia Dimensions(日本国内では日立メディコより発売)は,トモシンセシス撮影を大きな特長としている。15°の範囲を15回照射して断層像を取得し,3D画像を再構成する。その断層像をスクロールして観察することで,2D画像では乳腺の重なりにより観察が難しい関心領域も明瞭に確認することができる。
今回,米国では先行して実用化されているトモシンセシスを用いた生検のガイダンスシステム「トモバイオプシー」(3Dバイオプシー)と,トモシンセシス画像をもとに2D画像を作成する技術「C-View」が,11月末に日本国内で薬事承認を取得したことが発表された。
展示会場にはワークショップブースを設け,2D,C-View,トモシンセシスの比較読影やトモバイオプシーのワークショップが開催され,日本からの参加者もあった。今後の日本での展開が期待される。
従来のマンモグラフィを用いたバイオプシーでは,位置決めをするのにスカウト撮影のあと,角度を変えて2回撮影するステレオ撮影を行い,2枚の画像それぞれでターゲットの指定(クリック)を行う必要があった。
これに対してトモバイオプシーでは,トモシンセシス撮影を1回だけ行い,3D画像からターゲットの写り込んでいるスライスを探して,そのスライス上で1度ターゲットを指定するだけで,x,y,zの座標を指定することができる。これは,ターゲットの深さ方向が,スライス場所でわかるためである。トモシンセシス撮影後すぐに,穿刺に進むことができることで,乳房の圧迫時間,検査時間を短縮し,被検者と医師双方の負担を軽減することができる。あらかじめトモシンセシス撮影を行っていれば,ターゲットの位置を三次元的に把握して検査のシミュレーションを行うことも可能なため,生検時のポジショニングが容易になる。
また従来は,座標を決めるために3回撮影する必要があったが,トモバイオプシーでは,トモシンセシス撮影1回で可能であり,トモシンセシスの被ばく線量が2D撮影の1.1〜1.2倍と言われることから,座標決めの際の被ばく線量は従来のバイオプシーに比べ半分以下に抑えられる可能性がある。
さらに,2Dでは見えず,トモシンセシスでしか見えない病変もあるため,それらに対するバイオプシーが実施できるという利点もある。
C-Viewは,トモシンセシスの3D画像から2D画像を作成する技術。トモシンセシス画像は専用のビューワが必要だが,C-Viewは通常の2Dと同じDICOMフォーマットで作成されるため,通常のマンモグラフィ用ビューワで表示でき,画像を活用できる場所が広がる。
2Dでは見えないようなターゲットであっても,C-Viewではトモシンセシスの特長である組織の重なりを排して,構造の重み付けを行って重ね合わせているため,スピキュラや石灰化に加え,血管なども2Dより明瞭に描出される。FDA申請時の検証では,2D単独読影とC-View+3Dの読影結果では,C-View+3Dの方が感度が高く,診断能が向上するとの報告が行われている。日本国内でも今後,2Dと比較しつつ読影を行っていくことで,将来的にC-View+3Dだけの読影ですみ,低被ばくでマンモグラフィ検査を行えるような可能性も出てくると考えられる。
これまでトモシンセシスは,石灰化のコントラストが低いという課題があったが,それをC-Viewで補うことができる。また,C-Viewでは病変の存在を確認しやすいため,C-Viewで確認された病変がありそうな位置を重点的にトモシンセシスで観察することで,読影の精度が高まり,トモシンセシス読影に要する時間も短縮できる。さらに,2Dでは重なりか病変かを鑑別できずにフォローアップが必要になる症例もあるが,トモシンセシスでは明確に鑑別できるため,カテゴリー3の診断にも有用である。感度,特異度が上がることで,不要な精密検査を減らし,本当に精検が必要な人を拾い上げられる可能性がある。
今後日本国内においては,Selenia Dimensionsのバージョンアップを行い,トモバイオプシーとC-Viewの臨床評価を進めていくとしている。
バイオプシー位置決め専用装置「MultiCare Platinum」は,受診者がうつぶせになった状態で,テーブルの下に乳房を下垂させて,テーブルの下でバイオプシーの作業を行うことができる。受診者には生検針が見えないため,心理的負担や驚いて身体を動かしてしまうことがなく,安全に検査ができる。また,テーブルを最大約130cmの高さまで上げることで,広いワークスペースを確保でき,医師も椅子に座った楽な状態で検査を実施することができる。ポジショニングにおいては,Cアームが180°回転するため,受診者が頭足方向を入れ替えることで,乳房に対して360°の方向からアプローチができ,生検が難しい場所に病変がある症例でも比較的容易に行える。現在,日本国内には80台程度が導入されている。
このほか,乳腺専用吸引式組織生検システム(ステレオ/超音波/MRIガイド下)と組織標本撮影専用のX線装置が紹介された。