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ITEM2024 バリアン メディカル システムズ ブースレポート 放射線治療装置の新製品「Halcyon HyperSight」を中心に,がん治療の高品質化・効率化への貢献をアピール

2024-5-10

バリアンメディカルシステムズブース

バリアンメディカルシステムズブース

シーメンスヘルスケア(以下,シーメンス)と合同ブースとして出展したバリアンメディカルシステムズは,シーメンスと一体感のあるブースデザインで“One Healthineers Ecosystem”というコンセプトを表現した。Ecosystemとは「生態系」を意味しており,両社のソリューションが補完し合ってがん医療に立ち向かっていくという姿勢を表している。その具体的なアプローチとして,人工知能(AI)を活用したシーメンスの放射線治療計画支援システム「syngo.via RT Image Suite」とバリアンの放射線治療計画システム「Eclipse」を用いたワークフローの最適化が挙げられた。自動コンツーリングやデータの自動転送などによって,検査から診断,治療に至るまでの時間を短縮できるほか,治療計画の質を高いレベルで均質化でき,医師らの負担軽減にも寄与することがアピールされた。
また,今回,新製品や新機能などが複数発表された。特に注目されたのは,シーメンスと合同開催のアンベールイベントで発表された放射線治療装置の新製品「Halcyon HyperSight」である。「Halcyon」にコーンビームCT(CBCT)ソリューション「HyperSight」を搭載したことでCBCT撮影が高速化し,良好な画像をより短時間で取得可能となる。さらに,放射線治療計画システム「Eclipse」のVersion 18.0が発表されたほか,小線源治療装置(アフターローダシステム)「BRAVOS」の新しいアプリケータや,体表面モニタリングシステム「IDENTIFY」が放射線治療装置「TureBeam」の照射と連動するようになったことなどが紹介された。

●新たなCBCTソリューションを搭載し,約6秒での画像取得を実現した放射線治療装置の新製品「Halcyon HyperSight」

Halcyon HyperSightは,2023年6月に製造販売承認を取得し,今年,国内2施設で稼働を開始したことが紹介された。Halcyonは,リング型ガントリを採用し,高品質な強度変調放射線治療(IMRT / VMAT)を効率的に提供可能な装置で,シンプルなワークフローや,高速なkV CBCT撮影(最短約17秒),2段式のデュアルレイヤーMLC(Multi Leaf Collimator)によるリーフ間の漏洩線量の低減,高い静音性,などの特長を有する。さらに今回,新たなCBCTソリューションであるHyperSightを搭載したことで,従来のコンセプトを継承しつつ,より高速かつ高品質なimage-guided ratiotherapy(IGRT)の提供が可能となった。
従来のHalcyonでは43cm×43cmだったkV CBCTイメージングパネルが,HyperSightでは放射線治療業界最大(同社調べ)の86cm×43cmと2倍に拡大し,最大53.8cmのFOVを取得することができる。回転スピードも10s/rotと高速化したことで,kV CBCTの撮影時間が約6秒と従来の半分以下にまで短縮。これにより,多くの患者が1回の息止めでのIGRTが可能となるため,モーションアーチファクトの低減による画質向上が期待できるほか,患者がカウチ上にいる時間が短縮することで負担軽減にも寄与する。また,ソフトウエアも進化した。画像再構成アルゴリズムが改善され軟部組織のコントラストが向上したほか,金属アーチファクト低減アルゴリズムの搭載によって,人工股関節や金属・歯科インプラントを装着している患者においても良好な画像が得られる。
なお,今回のITEMでは,即時適応放射線治療のトータルソリューションである「ETHOS Therapy」にHyperSightを搭載した「ETHOS Therapy HyperSight」も発表された。CBCTの画質向上は,カウチ上で再治療計画を行うon-couch adaptationにも寄与することが期待される。また,Halcyon,ETHOS Therapyのいずれも,アップグレードによってHyperSightの搭載が可能である。

アンベールイベントで発表された放射線治療装置の新製品「Halcyon HyperSight」

アンベールイベントで発表された放射線治療装置の新製品「Halcyon HyperSight」

 

●放射線治療計画システム「Eclipse」のVersion 18.0ではワークフローの最適化に寄与する新機能を搭載

放射線治療計画システムのEclipseは,バージョンが18.0に上がったことが発表された。治療計画立案時の計算スピードが従来の約2倍となったほか,「Multi Criteria Optimization(MCO)」ではスライダーバーを用いてターゲットとリスク臓器のトレードオフ関係をダイナミックかつリアルタイムに調整できることに加え,新たにマウス操作によって線量分布のラインを直接つかむことで局所の線量補正が直感的に行えるようになった。また,多発脳転移などの複数のターゲットに対して一度に定位手術的照射(SRS)を行う技術である「HyperArc」では,正常臓器の線量を抑制する最適化パラメータ「SRS-NTO(Normal Tissue Objective)に加えて,体幹部定位放射線治療(SBRT)などのより広い領域の転移性腫瘍にも対応する「SBRT-NTO」が搭載された。
これらのほか,Eclipseのコーナーでは,Siemens HealthineersとのOne Healthineers Ecosystemを実現するAIを用いた具体的なアプローチとして,シーメンスの放射線治療計画支援システム「syngo.via RT Image Suite」とバリアンの放射線治療計画システム「Eclipse」を用いたワークフローの最適化についても紹介された。これらを用いることで,治療計画CT撮影後のsyngo.via RT Image Suiteへのデータ転送や,コンツーリング,コンツーリングされたデータのEclipseへの転送といった放射線治療計画立案に関連する一連の流れが自動化され,医師や医学物理士の負担が軽減するとともに,治療計画の質を高いレベルで均質化することが可能となる。なお,自動コンツーリングの対象部位・臓器は,昨年は約85であったが,現状では166部位に増えたことがアピールされた。

放射線治療計画システム「Eclipse」のVersion18.0が登場

放射線治療計画システム「Eclipse」のVersion18.0が登場

 

Eclipseのコーナー

Eclipseのコーナー

 

Multi Criteria Optimization(MCO)ではマウス操作で線量分布のラインを直接つかんで局所の線量補正が可能に

Multi Criteria Optimization(MCO)ではマウス操作で線量分布のラインを直接つかんで
局所の線量補正が可能に

 

●体表面モニタリングシステム「IDENTIFY」のVersion 3.0で追加された機能として,「TureBeam」の照射との連動を紹介

体表面モニタリングシステムIDENTIFYは,治療計画CT撮影時の呼吸管理や,放射線治療時のセットアップのサポート,治療中の患者の体動のモニタリングが可能なシステム。3台の光学式カメラを用いて1mm以下の精度で患者の体表面の動きをリアルタイムに監視することで,体表面画像誘導放射線治療(SGRT)を支援する。同社の外部放射線治療装置を用いたノンコプラナー照射に対応しており,通常の放射線治療はもとより,深吸気息止め照射(DIBH)やHyperArcでの治療時の患者のモニタリングも可能。また,同社の「Visual Coaching Device(VCD)」と接続することで,患者への呼吸コーチングに用いることもできる。さらに,今回のITEMでは,最新バージョンのIDENTIFY 3.0で追加された機能として,同社の放射線治療装置の主力製品である「TrueBeam」との連動が可能となったことが紹介された。照射中に患者の体表面の動きが一定の閾値を超えると,照射が自動で停止されるため,治療の安全性向上に寄与する。

最新バージョンの「IDENTIFY 3.0」を発表

最新バージョンの「IDENTIFY 3.0」を発表

 

●国内8施設で稼働中のアフターローダシステム「BRAVOS」では,アプリケータのラインアップが拡充

アフターローダシステムBRAVOSは,豊富なアプリケータのラインアップによってさまざまな部位への小線源治療が可能なシステム。これまでもアプリケータの拡充を図ってきたが,今回のITEMでは,新たに子宮頸がん用や,外部照射と内照射を併用するハイブリッド照射用のアプリケータが追加されたことが紹介された。また,BRAVOSは,Eclipseや放射線治療情報システム「ARIA OIS」,TrueBeamなどとの親和性が高く,放射線治療全体のスムーズな運用が可能な点が特長である。小線源治療計画装置「BrachyVision」がEclipse内に統合されているため,同社の外部放射線治療装置と共通の操作性で小線源治療計画が可能であり,ハイブリッド照射の治療計画もEclipse 1台で行うことができる。

アフターローダシステム「BRAVOS」

アフターローダシステム「BRAVOS」

 

豊富なアプリケータをラインアップ

豊富なアプリケータをラインアップ

 

●各分野のエキスパートが放射線治療の業務を支援する「Advanced Oncology Solutions(AOS)」を提供

今回,新たなサービスとして,AOSが紹介された。同社ではこれまで,放射線治療装置のMachine QAコンサルティングやコミッショニング,ワークフロー最適化のサービスを提供してきたが,AOSは医療機関ごとにより安全で効率的な業務体制の構築を支援する,従来よりも一歩踏み込んだ人的サービスとなっている。AOSには,クリニカルサービスとプロフェッショナルサービスの2種類がある。クリニカルサービスはTrueBeamやEclipseの導入施設を対象とし,医学物理士の業務をサポートするほか,医学物理士が不在の医療機関に対して診療放射線技師のサポートや,医学物理士に代わって実際の業務を行う。一方,プロフェッショナルサービスはARIA OIS導入施設を対象としている。同社スタッフが医師らに聞き取りを行った上で,ARIA OISを軸に,患者の受診時から治療,再診までの一連の業務を効率化するためのマネジメントを行う。

「Advanced Oncology Solutions(AOS)」を紹介するコーナー

「Advanced Oncology Solutions(AOS)」を紹介するコーナー

 

●お問い合わせ先
社名:株式会社バリアン メディカル システムズ
住所:141-0032 東京都品川区大崎1丁目11番1号 ゲートシティ大崎ウエストタワー
TEL: マーケティング部TEL03(4486)5235
URL:https://www.varian.com/ja