2023-4-28
島津製作所ブース
島津製作所は,2023年度からの中期3か年経営計画の策定に合わせて新たなテーマ“Evolution, Innovation, Transformation —solving challenges together”を発表し,予防・診断・治療・予後における革新的なソリューションを医療従事者とともに創造し,課題解決に取り組む姿勢を表明した。ブースでは,超高齢少子化や人手不足などを背景に負担が増加する医療現場に対して,人工知能(AI)技術を活用した業務効率化や,DXを推進するシステムを提案する展示を展開。2023年4月にバイプレーンシステムが発売された血管撮影システムの最上位機種「Trinias」シリーズや,FPDを搭載した外科用X線テレビシステム「OPESCOPE ACTENO FD type」などの新製品を中心に,X線撮影システムのラインアップを紹介した。また,クリニック向けのコーナーでは,X線撮影装置「X'sy Anesis」と無床診療所向け統合型電子カルテシステム「SimCLINIC T4 Cloud」の2つの新製品を展示し,連携した運用による業務の効率化を提案した。
●血管撮影システム:バイプレーンタイプの発売でフルラインアップがそろった血管撮影システム「Trinias」
●外科用Cアーム:X線テレビシステム上位機種の画像処理技術を導入した外科用X線テレビシステム「OPESCOPE ACTENO FD type」
●クリニック向け:新製品のクラウド型電子カルテとX線撮影装置を,連携機能とともにアピール
●AI:骨粗鬆症診断をサポートする椎体計測ソフトウエア「Smart QM」を展示
●回診用X線撮影装置:対応するDRシステムを拡充した「DR “NEUTRAL” 3.0」をアナウンス
●受付システム:院内DXを推進する放射線科専用受付システムの最新モデルを参考展示
●体験コーナー:自院への装置導入をシミュレーションできる「おためしレイアウト」を紹介
●血管撮影システム:バイプレーンタイプの発売でフルラインアップがそろった血管撮影システム「Trinias」
血管撮影システムは,2022年に発売されたシリーズ最上位機種「Trinias」の実機がITEM初展示となった。ITEM 2023直前の4月12日には,バイプレーンタイプ3モデルが発売されたことで,Triniasシリーズのフルラインアップが出そろった。会場では,16インチ×12インチのパネルを搭載した放射線科向け天井走行式シングルプレーン「Trinias C16s with SCORE Opera」が展示され,来場者は直感的な操作を可能とするコントローラーや高速化したCアーム動作などを実際に触って確かめていた。
Triniasは,世界で初めてAI技術を活用した画像処理エンジンを血管撮影システムに搭載した製品で,「ALARA Design」「Lean Design」「Sustainable Design」の3つをコンセプトに開発された。ALARA Designは,低線量と視認性向上の両立を実現するコンセプトで,AIフィルタを搭載した画像処理エンジン「SCORE Opera」により透視線量を約40%低減しながらノイズ抑制やコントラスト強調を実現する。また,手技中に総線量が高くなりすぎることを防ぐため,線量閾値に到達すると画面上にアラートを表示する機能「SMILE Dose eye」を実装したほか,リアルタイムで局所的線量をマップ表示する「Dose-eye Live」も用意している。
ワークフローを向上させるLean Designにおいては,Cアームの動作スピードの向上に加え,ワンタッチでポジションチェンジを行えるようにユーザーインターフェイスを刷新した。「ダイレクトメモリー」機能は,直感的なタッチパネル操作でCアームの角度を設定できる。また,フェモラルアプローチにおいては,「Femoral Approach Mode」によりCアームが自動で待避し,スムーズな手技進行を支援する。
Sustainable Designは,サブスクリプションサービス「SCORE Link」によりソフトウエアを定期更新して,常に最新の機能を使えることをめざしたコンセプトだ。SCORE OperaのAIフィルタなども,今後より学習を進めたモデルが更新されていくことを考えると,購入後も装置の価値が上がっていくと言えるだろう。なお,導入後1年はすべてのソフトウエアを使用できるため,ユーザーは必要なソフトウエア構成を見極めることができる。
さらに,治療効果判定を支援するアプリケーションも用意されている。「SCORE Stream」は,DSA画像から造影剤濃度の経時変化曲線(time density curve)を作成してカラーマップ表示する血流解析のアプリケーションで,Triniasのコンソール上で解析することが可能だ。
新しく発売されたバイプレーンモデルは映像展示が行われた。簡単・直感的な操作をめざして設計されており,Cアームの操作レバーは正面・側面アームで独立させることで,自動ポジショニング後の微調整も行いやすくなっている。一般的に,バイプレーンはシングルプレーンに比べて操作が難しいが,Triniasではダイレクトメモリーにより最適なポジショニングを簡単に行うことができ,被ばくや造影剤使用を抑えた手技を施行できることをアピールした。
●外科用Cアーム:X線テレビシステム上位機種の画像処理技術を導入した外科用X線テレビシステム「OPESCOPE ACTENO FD type」
8インチFPDを搭載した新製品の外科用X線テレビシステム「OPESCOPE ACTENO FD type」は,X線テレビシステム「SONIALVISION G4」などで開発された画像処理技術を導入したことで,大幅な画質向上と低線量化を実現した。実装されたリアルタイム画像処理技術「SCORE PRO Advance」では,透視線量を低減しながら,エッジ強調とモーショントラッキング(動き追跡)型のノイズ低減処理により残像を抑制した視認性の高い画像を表示することができる。
コンパクトなCアームは,電磁ロックを搭載したカウンターバランス方式による完全マニュアル操作とすることで,スピーディなポジショニングを可能にした。術者側からもCアームロックの解除が可能で,術者自ら視野の調整を行うことができる。
また,オプションとして無線ソリューション(フットスイッチ,ハンドスイッチ,DICOM接続)が用意されている。フットスイッチはケーブルレスで任意の位置に簡単に配置できると,来場者から好評を得ていた。無線ソリューションに加え,Cアーム周りのケーブルもアーム内に内蔵されていることから,清掃が容易な点もメリットだ。
●クリニック向け:新製品のクラウド型電子カルテとX線撮影装置を,連携機能とともにアピール
クリニック向けのコーナーでは,新製品のX線撮影装置「X'sy Anesis」と無床診療所向け統合型電子カルテシステム「SimCLINIC T4 Cloud」を中心に展示を行った。
X'sy Anesisは,診療放射線技師がいないクリニックでも簡単に操作できることをめざして開発され,ITEM直前の4月13日に発売された。X線管球のロック機構を電磁ロック式にすることで,位置の微調整や固定,臥位撮影と立位撮影の切り替えなどをスムーズに行えるようにした。X線管の長手移動に合わせてカセッテトレイが動く連動機能も搭載されており,カセッテ移動の手間や患者の移動を省略することができる。
また,コンソールカラーを従来の白から黒へと変更し,ランプやデジタル表示の視認性を向上させた。検査では,わかりやすいアイコンボタンで撮影部位,術式,撮影方向,体厚補正を選択すると最適な撮影条件が設定される。また,撮影サイズ,グリッドの有無,撮影距離を表示する「ワンタッチガイド機能」も搭載され,慣れない部位でも簡単に検査を行える。
2022年10月に発売されたSimCLINIC T4 Cloudは,電子カルテとPACS機能を一組のPC・マウス・キーボードで操作できる「SimCLINIC」シリーズ初のクラウドアプリケーション型システムである。一体型の利点はそのままに,カルテをクラウドに保存することで災害時やPC破損などのトラブル時にも,データを復旧することができる(画像データは院内NASに保管)。医薬品データについても拡充を図っており,添付文書と同等の情報を確認できるほか,タブ切り替えで同薬効・同成分の医薬品を表示することができ,薬剤変更の際にもスムーズに探すことができる。
ブースでは,診療ワークフローを向上させる機能として,電子カルテシステム・DR・X線装置をオンラインでつなぎ,オーダや検査に必要な情報を連携させる「RAD-Link」をアピールした。DRやX線装置での条件設定が不要になり,スムーズなワークフローを実現する。展示では,SimCLINIC T4 Cloudから発行したオーダをDRおよびX'sy Anesisに連携するデモンストレーションが行われた。X'sy Anesisのコンソールに送られた条件が自動で設定されるため,患者ポジショニング後すぐに撮影を行うことができる。
●AI:骨粗鬆症診断をサポートする椎体計測ソフトウエア「Smart QM」を展示
島津製作所は近年,X線画像を対象にしたAIアプリケーションの開発・提供に注力しており,今回は超高齢社会において大きな課題の一つである骨粗鬆症の診断をサポートする椎体計測ソフトウエア「Smart QM」を紹介した。骨粗鬆症の診断においては,骨密度だけでなく椎体骨折も評価基準となっており,椎体骨折の定量的評価には側面X線画像を用いたquantitative measurement(QM)法が用いられている。QM法は,椎体の前縁高,中央高,後縁高を計測してそれぞれの比を算出するが,胸椎・腰椎合わせて17の椎骨について51か所の計測が必要となるため,診療の中で対応することが難しいことが課題となっている。
Smart QMでは,AI技術を用いて画像から椎体を一つ一つ認識して計測,QM法のスコアを自動で算出し,レポートとして出力することができる。医師は,設定された計測部位を確認,必要に応じて微調整するだけで,あとは自動かつ高速に計測が完了するため,計測作業に要していた時間を大幅に削減することが可能となっている。レポートには椎体骨折部位の拡大画像を貼付でき,コメントを入力してPACSに送信するというシンプルなステップで,効率的に椎体骨折診断を行える。
●回診用X線撮影装置:対応するDRシステムを拡充した「DR “NEUTRAL” 3.0」をアナウンス
回診用X線撮影装置については,FPD搭載タイプの回診用X線撮影装置「MobileDaRt Evolution MX8 Version」の実機を展示した。パワーアシスト機能「GLIDE VIEW」による滑らかで小回りの利く操作性を来場者に体験してもらうとともに,ニーズに合わせたDRシステムとの組み合わせが可能な「DR “NEUTRAL”」が「DR “NEUTRAL” 3.0」へと進化し,3社(コニカミノルタ,富士フイルム,キヤノン)の最新パネルに対応したことをアピールした。富士フイルムDRと組み合わせるS-typeでは,全脊椎や小児全身などの広範囲をワンショットで撮影可能な中尺サイズ(17インチ×32インチ)パネル「CALNEO Flow G80」にも対応。脊椎手術などオペ室での活用を想定している。
さらに,コニカミノルタDRと組み合わせるK-typeでは,X線動画撮影が可能なDRと組み合わせたモデルが参考展示された(薬機法未承認)。フレームレート15fps,最大20秒間の連続撮影で画像を取得し,撮影後1分以内に動画像としてモニタに表示することができる。簡便・低被ばくに肺などの動きを観察でき,呼吸状態の評価や機能診断に活用することができる。なお,X線動画解析ワークステーション「KINOSIS」(コニカミノルタ)にデータを送信することで,さまざまな動態解析を行うことも可能だ。
●受付システム:院内DXを推進する放射線科専用受付システムの最新モデルを参考展示
院内業務の効率化や患者の利便性向上に役立つソリューションとして,放射線科受付システムの最新モデル「MERSYS-Ⅹ(ラジエーションパッケージ)」(W.I.P.,島津トラステック社製)を展示した。RISと連携し,患者の診察券やリストバンドのバーコードを読み取ることで,自動的に受付登録と受付票出力を行う。従来モデルから筐体デザインを一新し,横型19インチのタッチパネルディスプレイを搭載するほか,筐体の一部をスケルトンにしてロール紙の残量確認ができるようにした。受付票のサーマルプリンタにはプレゼンタ(自動用紙排出)機構が搭載されており,紙詰まりのリスクを低減している。
展示では,検査待ち・呼び出し状況の案内システムを併せて提案した。患者のプライバシーに配慮し,案内表示や呼び出しのアナウンスは受付票に記された番号で行われる。案内表示では呼び出し状況や待ち時間の目安を確認でき,院内各所に設置することで検査待ちの患者を分散できるとともに,患者側も時間を有効利用できるといったメリットを得られる。
●体験コーナー:自院への装置導入をシミュレーションできる「おためしレイアウト」を紹介
島津製作所では,Webサイト内の医療従事者向け会員制サイト「SHIMADZU MEMBERS CLUB」で情報提供を行っており,そのコンテンツの一つである「おためしレイアウト」を体験できるコーナーを設けた。おためしレイアウトは,一般撮影システム,X線テレビシステム,血管撮影システムに対応しており,自院の検査室へのシステム導入をシミュレーションできる。3Dイメージで自院の検査室を作成して装置を配置すると,3D上で装置を動作させて想定している運用が可能かを確認できることに加え,ウォークスルー機能では検査室内で人物モデルを歩き回らせることができ,スタッフ動線も含めたシミュレーションが可能だ。おためしレイアウトは常時提供されているコンテンツであり,サイトに登録すれば無料で利用できる。
●お問い合わせ先
社名:株式会社島津製作所
URL:https://www.med.shimadzu.co.jp/