2023-5-8
GEヘルスケア・ジャパンブース
GEヘルスケア・ジャパンは,今回のITEMで“Introducing a new era of GE HealthCare“をテーマに掲げた。GEは2021年にヘルスケア,エネルギー,航空の3事業の分社化を発表。昨夏にはヘルスケア事業の新社名を「GE HealthCare(GEヘルスケア)」とすることをアナウンスした。2023年1月には分社化を完了して,新生GE HealthCareとしてスタートを切った。ブースのメインカラーも従来の青から「compassion purple(コンパッション・パープル)」と呼ばれる紫色に変更。日本法人名は,GEヘルスケア・ジャパンのままだが,今回は新時代のGEヘルスケアをアピールする機会となった。
企業として大きな分岐点を迎えたが,エジソンのDNAは,GE HealthCareにも受け継がれている。今回は,MRI,CT,ヘルスケアIT,核医学,血管撮影装置の新製品・ソリューションを発表。技術の革新性や優位性を改めて来場者に印象づけた。MRIでは,新開発のマグネットを採用した3T MRI 「SIGNA Hero」や,既存の装置を資産として生かしてガントリ開口径の拡大などのアップグレードを行う「SIGNA Artist Evo」を発表。また,CTでは,世界最速0.23s/rotのガントリ回転速度を誇る「Revolution Apex Elite」を展示した。Revolution Apex Eliteは,人工知能(AI)技術を用いてポジショニングを自動化する「Deep Learning カメラユニット」を採用している。このDeep Learning カメラユニットは,今回発表した最新PET/CT「Omni Legend」にも用意されている。Omni LegendにはAI技術を用いた画像再構成再構成技術「Precision DL」も搭載されており,ノイズを抑えた高画質画像を取得できる。
一方,ヘルスケアITでは,画像診断支援AIアプリケーションの導入前評価・運用を支援する「Open AI VNA(OAV)」をITEM前の4月3日に発表した。ブース内でプレゼンテーションを行った。また,血管撮影装置では,新製品として,最新のユーザーインターフェイス「MyIQ」を採用した「Allia IGS 5」を紹介した。
このほか,超音波診断装置では,汎用超音波診断装置の最上位機種「LOGIQ E10」シリーズや,ポケットサイズの本体・デュアルプローブ一体型装置「Vscan Air CL」を展示。また,Women's Healthのコーナーを設けて,デジタルマンモグラフィ「Senographe Pristina」や自動乳房超音波診断装置「Invenia ABUS」を設置して,乳がん診療に対する取り組みを来場者にアピールした。
●軽量の新型マグネットを採用し,1.5T装置からの更新需要に応える3T MRI,SIGNA Hero
●世界最速0.23s/rotのガントリ回転速度を実現したRevolution Apex Elite
●画像診断支援AIアプリケーションを効率的に導入・運用できようにしたOpen AI VNA(OAV)
●デジタルBGOなどの採用により高画質化した半導体検出器搭載PET/CTのOmni Legend
●パーソナライズ可能なユーザーインターフェイスを採用したAllia IGS 5
●ハイエンド汎用超音波診断装置のLOGIQ E10シリーズやポケットサイズのVscan Air CLなど幅広いラインアップを披露
●Women's HealthではデジタルマンモグラフィSenographe Pristinaと自動乳房超音波診断装置Invenia ABUSをアピール
●軽量の新型マグネットを採用し,1.5T装置からの更新需要に応える3T MRI,SIGNA Hero
MRIのコーナーでは,新機種1台とガントリ開口径を拡張できるアップグレード機種を中心に展示した。ITEM 2023に合わせて販売を開始したSIGNA Heroは,マグネットをはじめとしたハードウエアを刷新。高画質だけでなく環境や経済性も追求した3T装置である。従来装置よりも30%軽量化し1.5T装置と同等の重量(自社比)を実現したマグネットは,3T装置最高レベルの0.25ppmの静磁場均一性を有するなど,新開発の「インテリジェントマグネットテクノロジー」により進化。広範囲の撮像でも高画質を実現したほか,オフセンターでも安定した画像を得られる。また,マグネットの軽量化によって導入時の工事コストを従来の3T装置よりも抑えることができ,最小設置面積も29m2という省スペースを実現。さらに,稼働ヘリウム量を従来装置の67%に抑えている。これらの技術により,1.5T装置の更新需要にも応える。このほか,最新の着脱式寝台を選択できるようにした。移動可能な左右70cm幅のワイド寝台により,被検者の移動や乗降が容易となり,検査の効率化を図れる。
更新需要に応えるもう1つの提案として,SIGNA Artist Evoも紹介した。ガントリ開口径60cmの従来装置をアップグレードし,70cmに拡大する。ガントリが36%広がることで空間に余裕が生まれ,被検者の精神的な不安な解消することも可能。さらに,ブランケットのような「AIR Coils」に対応するほか,ディープラーニング画像再構成技術「AIR Recon DL」により,ノイズとトランケーションアーチファクトを抑えて,高画質かつ撮像時間の短縮が図れる。アプリケーションも最新バージョン「MR 30」を使用できる。ガントリをアップグレードするだけで,最新ハードウエアとソフトウエアを手に入れられ,工事によるダウンタイムを減らすこともできるなど,経営面でも医療機関に恩恵をもたらす。
このほか,定評のあるAIR Coilsのラインアップの拡充もアピールした。従来の30chに加えて,サイズの異なる20chと21chの「AIR Multi-Purpose Coil」も展示。サイズ別にコイルのカラーリングを異なるものとして見分けがつきやすくした。この3コイルを組み合わせることで,広範囲の撮像を一度に行える。また,AIR Recon DLも適応が拡大し,PROPELLERと3D撮像で使えるという朗報をアナウンスした。
●世界最速0.23s/rotのガントリ回転速度を実現したRevolution Apex Elite
CTのコーナーでは,0.23s/rotという世界最速のガントリ回転速度を誇るRevolution Apex Eliteがお目見えした。Revolution Apex Eliteは,Revolutionファミリーの最上位機種に位置づけられ,GEヘルスケアがCTに求められる要素として定義する「高分解能(画質)」「高速化(スピード)」「カバレッジ(撮影範囲)」「物質弁別(機能評価)」「生産性(検査効率)」をハイレベルで実現している。高分解能画像の得るためのカギとなる検出器には,光応答特性が優れる「Gemstone Clarity Detector」を採用。秒間8914viewのデータサンプリングにより,高い空間分解能を実現するHigh-Resolutionモードでの撮影が可能である。また,撮影範囲はRevolutionファミリーのCTが誇る160mmとなっている。これに加えて,0.23s/rotの高速化が図られたことで,心臓など循環器領域での検査に威力を発揮する。心臓CTでは,モーションアーチファクトを抑制する「SnapShot Freeze2.0(SSF2.0)」を適応することで,冠動脈だけでなく,弁や心腔,心筋の明瞭な画像を得られる。PCIなどのインターベンションはもとより,経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)など構造的心疾患(SHD)に対する治療にも有用な画像を提供できるようになった。
機能評価のためのdual energy CTにおいても,Revolution Apex Eliteはアドバンテージを有する。1300mAの高出力X線管「Quantix 160 Tube」を採用し,管電圧のスイッチングに合わせて管電流を変調させる「Synchronized kV/mA switching GSI」による低keV画像やヨード密度画像の高コントラスト画像を取得できる。さらに,検査効率を上げるために,検査前から撮影後の画像解析までを自動化する「Effortless Workflow」の技術を搭載している。その一つDeep Learning カメラユニットは,寝台上の被検者を撮影して,そのデータを基に高精度のポジショニングを自動で行うことが可能。スカウト画像から最適なパラメータを推奨する。さらに,撮影前に画像解析を設定することで,速やかに自動処理を行う。
このほか,Revolution Apex Eliteは,AIを用いた技術として,ディープラーニングを用いて開発した画像再構成技術「TrueFidelity」を搭載。ノイズを抑えて低KeV画像における病変部の視認性などが向上する。
なお,Revolution Apex Eliteは,ITEM終了後の4月17日に「Revolution Apex Core」とともに販売を開始したことが発表された。
●画像診断支援AIアプリケーションを効率的に導入・運用できようにしたOpen AI VNA(OAV)
ヘルスケアITのコーナーでは,3月末に発売を開始したOpen AI VNA(OAV)を紹介した。OAVは,GEヘルスケアが提供する医用画像をはじめとしたデータの統合管理の基盤であるvendor neutral archive(VNA)を用いて,画像診断支援AIアプリケーションを効率的に導入・運用できるようにする。特定の部位・疾患を対象にしたAIアプリケーションを,検査ごとに活用できるよう事前評価と運用のための仕組みを提供する。
OAVはマルチベンダーのAIアプリケーションに対応する。ユーザーは,VNA上の「AI Dock」で期間を設けてAIアプリケーションを試験運用し,その効果や課題などを評価することが可能だ。ベンダーに依存せずVNAで試用できるため,接続費用などのコストが生じず,導入の判断を行える。また,さまざまなビューワとの高速接続を可能とする公開データベース「OCDB(Open Connect Database)」を介することで,日常使用している画像ビューワでもAIアプリケーションの解析結果を参照できる。
さらに,OAVでは,AIアプリケーションのアクセス権限を設定できるほか,実運用と試験運用の環境を分けることも可能。運用に当たっては,検査種別に解析を行うAIアプリケーションを設定できるので,ワークフローの効率化を図れる。現在,エルピクセル社の「EIRL Chest Nodule」をはじめとしたEIRLシリーズ,東陽テクニカ社(開発:米国Riverain Technologies社)の「ClearRead」シリーズといったAIアプリケーションがAI Dockに対応している。今後,クレアボ・テクノロジーズ社のAIアプリケーションも加わる予定だ。
ヘルスケアITでは,「コマンドセンター」も紹介した。米国では,ジョンズ・ホプキンズ病院をはじめ有力な施設が採用しており,病床稼働率の改善といった成果を上げている。国内では,2021年4月に滋賀県の草津総合病院(現・淡海医療センター)で運用を開始し,東京医科歯科大学病院や慶應義塾大学病院といった大学病院,倉敷中央病院などの地域中核病院が導入している。
コマンドセンターは,電子カルテやオーダリングシステム,部門システムから医療情報をリアルタイムで取得し,統合分析サーバでデータを処理して,その結果を「Tile」と呼ばれるアプリケーションで表示。ユーザーはこのデータを基に,刻一刻と変化する病床稼働状況や看護師などのスタッフの勤務状況を把握できる。これにより,空港の管制塔のように,病床管理や入退院調整,スタッフの配置などの集中管理が可能だ。Tileには,リアルタイムに病床の稼働状況を可視化する「Capacity Snapshot」,看護師などのスタッフの勤務状況を病棟ごとに可視化して調整を行える「Staffing Forecast」,ICUの患者マネジメントを効率化する「News Scoring」,患者ごとに行うべきケアの内容の優先度をつけて表示し在院日数の短縮化を図れる「Discharge Tasks」などがある。
コマンドセンターは地域医療にも活用されている。淡海医療センターが参加する湖南メディカルコンソーシアムでは,コマンドセンターを利用し,病床の稼働状況などのデータを基に,シームレスな連携につなげている。
このほか,ヘルスケアITのコーナーでは,リモート保守サービスとして提供している「OriGEn」で利用可能となった2つのアプリケーションも紹介した。新たに使えるようになった「こえとら」は,情報通信研究機構(NICT)が開発。音声入力による文字表示などにより,聴覚障害者と健聴者のコミュニケーションを円滑にする。検査時の注意説明などに有用なアプリケーションである。また,「DeepL」はドイツDeepL社が開発した翻訳サービス。25以上の言語に対応しており,外国人などの検査時のコミュニケーションを容易にする。
●デジタルBGOなどの採用により高画質化した半導体検出器搭載PET/CTのOmni Legend
核医学関連では,4月14日から販売を開始した最新の半導体検出器搭載PET/CTのOmni Legendを展示した。新開発の検出器はシンチレータにデジタルBGO(dBGO)を採用。さらに,シンチレータのカッティングデザインを変更した。これにより,従来装置の2倍以上のシステム感度と空間分解能を両立。撮像時間の短縮化と被ばく低減を実現するとともに,高画質画像を取得できる。さらに,画像再構成技術には,ディープラーニングを用いた「Precision DL」を採用した。低コントラストでの病変の描出能が上がっている。AI技術については,ほかにもCTにも採用しているDeep Learning カメラユニットを搭載。ポジショニングの自動化が可能となり,検査効率が向上し,検査時間の短縮化が図れる。このほか,定量精度を高める画像再構成技術「Q.Clear」や呼吸同期システム「Advanced MotionFree」を搭載しており,セラノスティクスにおける画質・スループットの向上,被ばく低減のニーズに応える装置に仕上がっている。
また,SPECT/CTでは2022年に発表した「StarGuide」を紹介した。リング状に検出器を12個配置。目的とした部位にフォーカスするために各検出器が独立して稼働し,高分解能画像を取得できるようにした。検出器は270keVまでのエネルギーに対応し,99mTcと123Iの2核種同時検査も可能だ。こちらの装置もセラノスティクスのニーズに応える装置となっている。ITEM 2023に合わせてプレスリリースを出して,国内第1号機が2023年2月から聖マリアンナ医科大学病院で稼働したことを発表した。
●パーソナライズ可能なユーザーインターフェイスを採用したAllia IGS 5
X線撮影装置では,血管撮影装置の新製品として,Allia IGS 5シリーズを紹介した。GEヘルスケアの血管撮影装置は,ハイブリッド手術をターゲットにした「Allia IGS 7」,カテーテル室向けの「Innova IGS 6」の各シリーズをラインアップしているが,Allia IGS 5はカテーテル室向けの装置として,領域・目的に応じて20cm,30cm,40cmの3サイズのFPDを用意し,高度なインターベンションに対応する。「進化するカテーテル治療に,パーソナライズ可能な血管撮影装置」をコンセプトに開発され,新しいユーザーインターフェイスのMyIQを採用。手技や目的に応じて,タッチパネルモニタの画面レイアウトの設定を登録・変更できるようにした。このタッチパネルモニタは,手技中に必要な操作を行うことが可能で,オートポジションコントロール,透視・撮影のプロトコール変更,画質・線量調整などを容易できる。また,コントロールパネルは,操作しやすい形状となっているほか,最新の安全機構を採用。センサでオペレータの手の動きを感知して,接触による誤操作を防ぐ。さらに,AIを用いて開発された「AutoRight」を搭載。kVpやmAなどの7つのパラメータを患者の体厚・解剖学的情報に基づいて自動調整して,リアルタイムに線量と画質の最適化を図れる。
このほか,X線撮影装置の関連では外科用CアームX線撮影装置「OEC」シリーズの「OEC 3D」と「OEC One CFD」を展示した。OEC 3Dは,31cmのCMOS FPDを搭載したハイエンドモデルで,19cm×19cm×19cmのコーンビームCTが可能。32インチの4Kモニタで3D画像の観察することが可能である。一方,OEC One CFDは27インチの4Kモニタを採用。FPDは31cmと21cmの2サイズから選択できる。ケーブル類は電源ケーブルだけとなっており,手技の妨げにならない安全,かつ衛生的な運用が可能である。
●ハイエンド汎用超音波診断装置のLOGIQシリーズやポケットサイズのVscan Air CLなど幅広いラインアップを披露
目的・領域に応じてブランドを設け,幅広いラインアップを展開する超音波診断装置では,汎用型のLOGIQシリーズやポケットサイズのVscan Air CLなどを紹介した。最上位シリーズのLOGIQ E10シリーズは,高性能GPUを採用し,高度な画像処理が可能。画像処理技術「cSound 2.0」を搭載し,全視野・全深度フルフォーカスの画像を取得する。また,プローブは,単結晶をはじめとする3つの先進技術を用いてSNRと分解能,ペネトレーションを向上する「XDclear プローブ」で,本プローブは最上位シリーズのLOGIQ E10シリーズ,コンパクトシリーズ「LOGIQ P10シリーズ」に搭載されている。アプリケーションも充実しており,「Shear Wave Elastography(SWE)」や減衰イメージング「Ultrasound-Guided Attenuation Parameter(UGAP)」を搭載。非アルコール性脂肪肝炎(NASHI)など肝疾患の検査・診断において有用な情報を提供する。2022年には,LOGIQ E10シリーズの技術を継承した軽量・コンパクトな筐体ながら高機能な「LOGIQ Fortis」を発表している。
Vscan Air CLは,プローブと一体型の本体,スマートフォンやタブレットを組み合わせた装置。BluetoothまたはWi-Fiにより本体とスマートフォンやタブレットはをワイヤレスで接続する。本体は,両端にコンベックスとリニアのプローブを配置したデュアルプローブで,重量はわずか205g。50分間連続使用が可能なバッテリーを内蔵している。施設内だけでなく,救急・災害医療,在宅医療など医療機関外でも有用な装置である。
●Women's HealthではデジタルマンモグラフィSenographe Pristinaと自動乳房超音波診断装置Invenia ABUSをアピール
Women's Healthでは,デジタルマンモグラフィSenographe Pristinaと自動乳房超音波診断装置Invenia ABUSを展示した。Senographe Pristinaは2016年に発表して以降,導入実績を積み重ねている。被検者,診療放射線技師,読影医といった検査にかかわるすべての人に優しい装置として開発。ブッキーの角に丸みを持たせたほか,LEDライトなどにより,被検者の痛みや不安,不快感を軽減する。また,検査を担当する診療放射線技師のワーキングスペース確保など,工夫が施されている。トモシンセシスにも対応しており,逐次近似法の「ASiRDBT」により被ばくを抑えつつ,3D画像を得ることが可能だ。ブースでは,Senographe Pristinaと組み合わせる造影マンモフラフィバイオプシー機能「Serena Bright」も紹介していた。
一方,Invenia ABUSは,乳房を自動走査することで,検査者の能力によらず,再現性の高い画像を取得できる。こちらも被検者に優しい設計を採用しており,プローブは丸みを持たせた形状にしている。「C-Plane」と呼ばれる冠状断画像によって,広い領域で乳腺組織の構造を観察可能だ。
●お問い合わせ先
社名:GEヘルスケア・ジャパン株式会社
住所:東京都日野市旭が丘4-7-127
TEL:0120-202-021
URL:https://www.gehealthcare.co.jp/