2023-5-10
キヤノンメディカルシステムズブース
キヤノンメディカルシステムズは,例年通り展示ホールAの最も学会場に近い入口を入った場所に広大なブースを構えた。今年の展示テーマは,「Meaningful innovation. Made possible.」。このテーマには「キヤノンが可能にする,臨床に意味ある真のイノベーション」のメッセージが込められており,キヤノンメディカルシステムズが掲げる人工知能(AI)ソリューションブランド「Altivity」のもと,CT,MRIからヘルスケアITまでAI技術を活用しながら臨床,運用,経営の側面をサポートする製品,ソリューションをアピールした。CT,MRIでは,画像再構成にAI技術を取り入れノイズ除去を行うことで高画質化と被ばく低減,検査時間の短縮を図る「Advanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)」をいち早く製品に搭載して提供してきた。今回のITEM2023では,CTで先行して搭載された超解像技術「Precise IQ Engine(PIQE)」がMRIにも適用されたことを発表した。また,ヘルスケアITでは,読影支援ソリューション「Abierto Reading Support Solution(Abierto RSS)」に「Temporal Subtraction For Bone」などが追加され,読影や検査業務を支援する機能が充実し,AI技術がさまざまな製品,ソリューションに広がっていることを印象づけた。新製品としては,FPDのCXDIシリーズにハイエンドモデル「CXDI-Elite」が登場,また,核医学ではAiCEを搭載したデジタルPET-CTにデバイスレスPET呼吸同期機能を搭載した「Cartesion Prime / Luminous Edition」が出展され来場者の注目を集めていた。
●Altivity:将来的なプレシジョンメディシンの実現をめざすロードマップを提示
●ヘルスケアIT:AIを用いた画像解析機能を統合して読影業務を支援するソリューションを展示
●CT:新たなワークフロー“INSTINX”を搭載したAquilion Serveなどを紹介
●MRI:DLR-MRIに新たに加わった超解像技術「PIQE」について臨床画像を交えてアピール
●核医学:デバイスレスPET呼吸同期機能を搭載したデジタルPET-CT「Cartesion Prime / Luminous Edition」を出展
●X線:新たに登場したデジタルラジオグラフィ「CXDI-Elite」シリーズを展示
●超音波:穿刺などインターベンションを支援する最新アプリケーションを紹介
●放射線治療:SGRTシステムの「Catalyst+」を利用した定位照射を可能にする「Versa HD Signature」を紹介
●Altivity:将来的なプレシジョンメディシンの実現をめざすロードマップを提示
キヤノンメディカルシステムズでは,CTでのディープラーニングを用いて設計した画像再構成技術「Advanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)」の搭載を嚆矢として,画像診断領域へのAI技術の適用に先駆的に取り組んできた。2021年に同社のAI技術のブランド名として「Altivity」を掲げ,AI技術で取り組む方向性やロードマップを明らかにして今後の道筋を示した。今年の展示においても,昨年のITEM2022と同様にAltivityを紹介するコーナーを設けて,AI技術がより広範な領域に展開されプレシジョンメディシンの実現に向けて着実なステップを踏んでいることを来場者にアピールした。
●ヘルスケアIT:AIを用いた画像解析機能を統合して読影業務を支援するソリューションを展示
AIをはじめとして日々進化するIT技術を反映しつつ,オープンなシステムで使いやすく業務の効率化を図るさまざまなソリューションを提供しているのが,キヤノンメディカルシステムズのヘルスケアITだ。展示では,AI技術を画像診断業務に活用するための読影支援ソリューション「Abierto Reading Support Solution(Abierto RSS)」や,医療情報統合ビューワ「AbiertoCockpit」を中心に画像解析ワークステーションや線量管理システムまで多彩なソリューションを来場者に紹介した。
AbiertoCockpitは,個々の患者の検査や治療の情報を時間軸で統合して,診療科や検査や処置といったシーンに応じて最適な情報を提供する医療情報統合ビューワだ。今回の展示では,救急の初療室やICUなど急性期医療の現場での使用を想定したシステムとして「AbiertoCockpit for ER」(W.I.P.)を参考展示した。AbiertoCockpit for ERでは,心電図や生体情報モニタの情報を統合的にグラフやタイムラインとして表示できる。直近のデータだけでなく,初療室入室後からのデータを継続的にすべて表示することができ,数値の変化を長いスパンで把握できるのが特徴だ。また,読影支援としてPACSの「RapideyeCore」の読影ビューワとAbierto RSSの「Worklist」,「Findings Workflow」を組み合わせた読影環境を提案。「Automation Platform」のAIアプリケーションの解析で検知があった検査についてWorklist上にマークが表示され,リストをクリックすることで,ビューワ上に画像,Findings Workflow上にAIの解析結果が表示され,参照しながらレポート作成が可能になる。また,Findings Workflowでは,胸部CTの肺結節アプリ(EIRL Chest CT)で過去の結節と自動でペアリングされ,スライスの位置を合わせて画像を表示すると同時に結節の大きさの変化がトレンド表示(矢印)される。さらに計測結果を含めて所見候補文が表示され,レポートの作成を支援できる(W.I.P.)。そのほか,新たに追加された「Temporal Subtraction For Bone」などのAutomation Platformのアプリケーションを紹介した。
●CT:新たなワークフロー“INSTINX”を搭載したAquilion Serveなどを紹介
CTでは,80列マルチスライスCT「Aquilion Serve」と高精細CT「Aquilion Precision」を実機展示し,高精細とAIを用いた自動化技術を軸に展示を行った。Aquilion Serveでは,ガントリ内のカメラを利用したポジショニングサポート機能の「Automatic Camera Positioning」,低線量で撮影された三次元データを利用して撮影範囲の自動設定を行う「Automatic Scan Planning」,表示させるレイアウトをプリセットできる「Automatic Hanging Layout」など検査をサポートする機能を搭載しているが,これらの機能を新たに「INSTINX」のブランド名で統合した。INSTINXは,世界中の医療機関で行われた臨床テストを元にワークフローの細部にまで改良を加えて,直感的な操作性を実現し効率性と一貫性を追求する新たなワークフローである。また,Aquilion Precisionでは,AiCEのパラメータに脳血管用(Brain CTA),中内耳用(Inner Ear),骨・軟部用(Bone)が加わり,AiCEが全身領域に適応可能になったことを紹介した。さらにADCT「Aquilion ONE / PRISM Edition」に搭載された超解像技術「Precise IQ Engine(PIQE)」については,微小石灰化プラークや冠動脈ステントの描出など心臓CT領域で高精細画像が得られることを多くの臨床データでアピールした。
●MRI:DLR-MRIに新たに加わった超解像技術「PIQE」について臨床画像を交えてアピール
MRIでは,3Tの「Vantage Galan 3T」,1.5Tの「Vantage Fortian」を実機展示し,DLR(Deep Learning Reconstruction)-MRIのラインアップが5機種に広がったことをアピールした。Vantage Galan 3Tではボア内に映像を投影して患者の不安を和らげる「MRシアター」と,Vantage Fortianではシーリングカメラによるポジショニングサポート機能と合わせて展示を構成した。
同社では,2019年からMRIへのディープラーニングを用いて設計したSNR向上技術のAiCEの搭載を開始し,2021年には5機種に搭載されフルラインアップとなった。さらに,今回のITEM 2023では,Area Detector CT(ADCT)で先行して搭載された超解像画像再構成技術「Precise IQ Engine(PIQE)」がMRIにも搭載されたことを発表した。CTのPIQEはAquilion Precisionの高精細画像データをベースにしてADCTの高精細化を図るものだが,MRIのPIQEではdenoisingとup-samplingの2つのDLRによって低い空間分解能の画像から高分解能画像を生成する。up-samplingの工程では,zero-filling処理(zip)というk空間の周辺をゼロで埋めることで擬似的に解像度を上げる技術が採用されている。zipは1990年代から使われている古い手法だが,ボケが残ることやリンギングアーチファクトが発生することが課題だった。このボケやアーチファクトを除去するためにDLR処理を行うことで,処理の精度を向上すると同時に汎用性を高めているのが特徴だ。PIQEでは,分解能を落として撮像することでコントラストを担保でき撮像時間の短縮も期待できることを臨床画像を含めてアピールした。
●核医学:デバイスレスPET呼吸同期機能を搭載したデジタルPET-CT「Cartesion Prime / Luminous Edition」を出展
核医学では,4月10日から発売されたデジタルPET-CT「Cartesion Prime / Luminous Edition」を実機展示した。Cartesion Primeは,大視野半導体PET検出器と80列CTを組み合わせたPET-CT装置で,ディープラーニングを用いた画像再構成技術であるAiCE-iをCTとPET画像の両方に適用可能で低ノイズで高画質の画像の提供し,低被ばく検査を可能にして高い評価を受けている。新たに発売されたCartesion Prime / Luminous Editionでは,デバイスレスPET呼吸同期機能が搭載可能となった(オプション)。PET撮像では,呼吸による画質の劣化を防ぐため,ベルトタイプの呼吸同期モニタ装置などが用いられてきた。同装置のデバイスレスPET呼吸同期機能では,収集されたデータから体動情報を自動で抽出して呼吸同期を行う。これによってベルトの装着が不要になることでセッティングの手間を省くと同時に,医療スタッフの患者との接触や被ばくなどのリスクを低減できる。
●X線:新たに登場したデジタルラジオグラフィ「CXDI-Elite」シリーズを展示
X線コーナーでは,FPDの新しいラインアップとして「CXDI-Elite」シリーズを展示した。CXDI-Eliteは,2月に半切サイズの「CXDI-720C Wireless」を発売,ITEM 2023直前の4月7日にフルサイズの「CXDI-420C Wireless」と「CXDI-420C Fixed」,大四サイズの「CXDI-820C Wireless」が追加されフルラインアップがそろった。CXDI-Eliteでは,シンチレータのCsIの結晶構造を改良することで画質性能を向上しているが,最大の特長はフォトタイマが内蔵されたことだ。これによってBuilt-in AEC Assistance(BiAA)機能と組み合わせて,部位や患者の体型に合わせた最適な撮影が可能になる。また,本体の軽量化と同時に堅牢性も向上させたほか,裏面にパネルを把持するための凹みを設けて撮影時の取り回しをしやすくするなどさまざまな改良が加えられている。ブースではCXDI-720C Wirelessを組み合わせた回診用X線撮影装置「Mobirex i9」も出展。Mobirex i9はコンパクトな設計でパワーアシストテクノロジーによる軽快な走行性などどが特長だが,CXDI-Eliteと組み合わせることでBiAA機能を使ったよりスムーズな撮影が可能になる。
X線では,多目的デジタルX線TVシステム「Ultimax-i」を展示した。X線透視では内視鏡検査など多目的な用途が拡大しており,Cアームを搭載しながら省スペース設計でコンパクトに設置できることを展示でアピールした。内視鏡を併用した手技では,患者や術者に対する被ばくを低減することが求められるが,Ultimax-iではCアームをアンダーチューブにして防護垂れによって天板下の散乱線を防護することでオーバーチューブでの手技に比べて被ばく線量をほぼゼロにすることができる。また,画質の向上も図られており,「octave SP」によって線量を65%低減しながら従来と同等以上の画質が得られることや,造影剤や病変とともにステントなど観察したい部分を強調する「Accent」などの機能を紹介した。
●超音波:穿刺などインターベンションを支援する最新アプリケーションを紹介
超音波コーナーでは,プレミアムクラスの「Aplio i800 / Prism Edition」,コンパクトなボディと生活習慣病の管理を行うアプリケーションなどを搭載した「Aplio flex」,タブレット型で救急や在宅医療などさまざまな場所で活用できる「Viamo sv7」を展示した。Aplio i800 / Prism Editionは,Smart Fusion機能や肝疾患の進行をトータルにフォローできる「Liver Package」など腹部領域のアプリケーションを中心に紹介した。Smart Fusionで,設計段階でAI技術を用いて開発した門脈位置を自動検出する「PV detection」,単結晶素材とマトリクス構造で高精度の画像が得られる穿刺用プローブ(PVI-450BXP)にディスポーザブルの穿刺針ガイド器具「Integrated ニードルガイド」の組み合わせをアピールした。
●放射線治療:SGRTシステムの「Catalyst+」を利用した定位照射を可能にする「Versa HD Signature」を紹介
放射線治療のコーナーでは,陽子線治療装置「PROTEUS ONE」(IBA社製),「Elekta Harmony」(エレクタ社製)と,新製品としてエレクタ社の「Versa HD Signature」についてディスプレイを使ってプレゼンテーションした。Versa HD Signatureは,光学式体表面トラッキングシステム「Catalyst+ HD」を使って高精度の脳定位照射が可能になっている。従来の方法で高精度な治療計画に基づき位置決めを行った後,治療中の患者体表面をCatalyst+ HDで1mm単位でモニタリングし,動きがあった場合にはビームを自動で停止する。寝台を振って照射を行うノンコプラナー照射にも対応する。
●お問い合わせ先
社名:キヤノンメディカルシステムズ株式会社
住所:栃木県大田原市下石上1385番地
TEL:0287-26-5100
URL:https://jp.medical.canon