2018-4-27
千代田テクノルブース
フィルムバッジによる放射線作業者の被ばく線量測定サービスから始まり,現在では放射線防護・計測から診断・治療に至るまで,放射線に関連するあらゆる製品・サービスを提供する千代田テクノルは,今回,白を基調とした明るいブースを横に広く展開し,同社の製品ラインナップの幅広さをアピールした。既存製品に加えて,エレクタ社製の密封小線源治療装置「フレキシトロンHDR」など,新製品も多数登場。来場者の注目を集めた。
●より複雑・広範囲な治療に対応する40チャンネル搭載の密封小線源治療装置「フレキシトロンHDR」
今年4月にリリースされたばかりの密封小線源治療装置フレキシトロンHDRは,同社が従来販売していた「マイクロセレクトロンHDR」の後継機種。直径0.86mmのIr-192線源を使用しており,腫瘍近傍に線源を移送することで局所的な治療が可能である。
最大の特長は治療チャンネル数で,マイクロセレクトロンHDRの最大30チャンネルから最大40チャンネルへと増加した。また,線源が溶接されているステンレスケーブルは柔軟性があり,あらゆる部位への照射が可能となっている。これらにより,以前よりも複雑かつ広範囲への治療が一度で可能となり,治療時間が短縮され患者の負担が軽減されるなど,大きなメリットが得られる。
さらに,マイクロセレクトロンHDRでは,患者の体内を移動する線源のステップ数が最小で2.5mm,線源停止位置精度が±1mmだったが,フレキシトロンHDRではステップ数は1mm,線源停止位置精度も±0.5mmとなり,より高精度な治療が可能となった。室温などの温度変化の影響も以前より受けづらくなっており,40℃の温度変化で線源停止位置のズレが0.2mmとわずかなため,保管時の温度条件が緩和されている。
デザインも一新されており,以前は装置上部にあった線源格納位置が下部になったため重心が安定し,装置を移動させる際の転倒リスクが大幅に低減した。
また,近年のCTやMRIを用いた治療計画の増加に伴い,アプリケータもCT/MRIに対応した新製品が登場した。「バジナルCT/MRマルチチャンネルアプリケータセット」は,シリンダー型のアプリケータであるが,従来は中央にしか通せなかった線源を複数通せるようになり,かつチャンネルごとに線量を変化させることで,不均等な線量分布を作ることが可能となった。従来は円柱状の均等な線量分布となっていたため,例えば直腸方向の線量を下げるといった対応が難しかったが,バジナルCT/MRマルチチャンネルアプリケータセットでは,リスク臓器の線量を低減し,腫瘍により強い線量を投与することが可能となる。また,子宮頸がん用アプリケータの新製品も紹介された(薬機法未承認)。既存製品に比べてタンデムが細く,オボイドが小さくなっており,よりアジア人の体格に適した製品となっている。
●繰り返し使用できコストパフォーマンスに優れた熱蛍光イメージングデバイス「Ceramic Dosimetry System」
Ceramic Dosimetry Systemは,セラミックの熱蛍光特性を応用して開発された放射線イメージングデバイスである。通常,放射線治療においては,患者の治療前にファントムにフィルムを挟んで実際に照射し,線量分布が計画と一致するかどうかを確認してから治療を行うが,高額なガフクロミックフィルムを使用するためランニングコストが課題となっていた。そこで,何度も繰り返し使えてガフクロミックフィルムと同等の精度で結果が得られる品質管理用デバイスとして,首都大学東京と千葉セラミック工業社の共同研究により開発されたのがCeramic Dosimetry Systemである。
Ceramic Dosimetry Systemは薄型セラミックプレートとセラミック専用リーダーで構成されており,セラミックプレートはさまざまなサイズが用意されている。セラミックプレートをファントム内に設置して放射線治療装置で照射し,専用リーダーで読み込むと,従来のフィルムと同様のイメージをTIFFファイルとしてデジタルで容易に得ることができる。専用リーダーでは,熱蛍光の読み出しに必要な450℃でセラミックプレートを均一に加熱し,一眼レフカメラが熱蛍光をとらえて画像化するが,蛍光の発生が終了したセラミックプレートは全エネルギーを放出して元の状態に戻るため,何度も繰り返し使用可能でコストパフォーマンスに優れている。ただし,セラミックプレートは大きな衝撃を与えると割れることもあるため,取り扱いに注意が必要である。なお,セラミックプレートのサイズは大小さまざまあるが,小さいサイズの場合,厚みはフィルムと同等で,15cm程度の大きさになるとフィルムよりも若干厚くなるものの,厚みによる検証上の影響はない。
●放射線治療時のより高精度な固定を可能にする「Double Shell Positioning System(DSPS)」
DSPSは,前後2つのシェルで頭部の固定が可能な放射線治療用の固定具。放射線治療では一般的に顔にマスクを当てるシングルタイプを使用し,頭部の治療台側は枕で固定することが多いが,枕は数種類あるものの患者の頭部形状と必ずしも一致するとは限らず,隙間ができて複数回の治療の間に若干の位置ズレが生じることがある。しかし,DSPSでは,顔面と頭部の両方を包み込むことで,複数回の治療における固定精度が向上する。ロングヘア用の製品も用意されており,頭頂部のところから束ねて外に出すこともできる。
●眼の水晶体の被ばく線量をより正確に計測する線量計「DOSIRIS」
眼の水晶体の被ばく線量をより高精度に計測するための線量計として,ヘッドバンドで線量計を目尻に装着するタイプのDOSIRISが新製品として紹介された。通常,眼の水晶体の被ばく線量はガラスバッジを用いて計測するが,近年,国際放射線防護委員会(ICRP)のソウル声明において眼の水晶体の等価線量限度の引き下げが勧告されたことを受け,より正確な線量計測が求められている。DOSIRISは,検出部にTLD素子を採用し,3mm線量当量を測定できるほか,関節式アームを採用したことで検出部を頭部の形状に合わせて目尻の近くに装着しやすく,また防護メガネの内側に装着することもできる。重さは12gと軽量で,ストレスなく使用可能である。
●振動容量型コンデンサを採用し高精度な計測が可能な国産の放射線治療装置用電位計「sakuraProof」
放射線治療装置用電位計sakuraProofも,同じく今年4月にリリースされた。国内で使用されている電位計は海外製品が多いが,sakuraProofは国産で,川口電機製作所が開発・製造している。産業技術総合研究所で放射線測定の国家標準開発に採用された高精度微小電流測定技術を利用しており,安定した結果が得られる高性能な装置となっている。また,最大の特長として,振動容量型コンデンサを搭載していることが挙げられる。近年,放射線治療は非常に高精度となり,小照射野の線量測定が非常に厳格に行われるようになっているが,既存の電位計ではノイズの発生などにより真値を得るのが困難だった。しかし,電荷収集能力と精度に優れた振動容量型コンデンサを搭載したことで,微小電荷の測定が高精度に可能となり,正確な測定値が安定して得られるようになった。
なお,従来の電位計は,電位計本体の表示部に計測した値が表示されるが,sakuraProofでは電位計そのものは制御パネルと表示部を持たず,操作や表示はPC上で行う。電位計とPCはBluetooth接続されており,PCのモニタに測定値が表示され,ユーザーの使用するワークシート(Excelシート)にその値が自動的に転記される。このため,計測データを手入力する手間が省け,転記ミスも防止できる。さらに,従来は電位計をデシケータ内に保管する必要があったが,sakuraProofはデシケータ保管が不要で,Bluetooth接続が可能な範囲内であれば,治療室の一角などに常時設置しておくことができる。
●お問い合わせ先
社名:株式会社千代田テクノル 営業企画本部
住所:〒1138681 東京都文京区湯島1-7-12 千代田御茶ノ水ビル
TEL:03-3816-1163
Email:ctc-master@c-technol.co.jp
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