2012-4-19
東芝メディカルシステムズブース
新型1.5T MRI「Vantage Titan」などの新製品を発表した東芝メディカルシステムズは,同社のスローガンである「Made for Life」のもとに,患者さんとユーザーのための製品・サービスの提供に取り組む姿勢を示した。ITEM初日に行われたプレスカンファレンスにおいて,代表取締役社長の綱川 智氏は,「患者さんの負担を軽減する技術の開発」「高品質で信頼性の高い医療機器の提供」を進めることを明言。特に今後注力していく事業領域として“がん診療”を挙げ,本社に開設する予定の「放射線治療研修センター(RTTC)」を紹介した。これは,販売を手がけるエレクタ社の放射線治療装置「Elekta Synergy」などの操作技術をユーザーが習得するための施設である。さらに,綱川氏は,被ばく低減技術「AIDR 3D」や非造影MRIなどを紹介した。このほか,会場内では,新しく展開するクラウドサービス「Healthcare@Cloud」の紹介を行った。また,省エネ・省資源対策に取り組んでいる同社らしく,各モダリティごとにエコロジー技術の解説パネルを設置していた。(4月13日取材)
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●MRI:心臓MRIに強い新型1.5T MRIのVantage Titanが登場
初日のプレスカンファレンスで発表された1.5T MRI「Vantage Titan」は,前機種からのフルモデルチェンジとなる。外観を一新し,オプションでガントリにLED照明を施すなど,同社が進めている被検者に優しい装置を意識して開発された。ガントリの開口径は従来機の65cmから6cm拡大して71cmとなっており,独自の静音機構である「Pianissimo」も受け継いでいる。この最新MRIでは,プラットフォームである「M-Power」の機能を強化。「Path Finder, Easy Tech, Pace Maker(迷わない,探さない,失敗しない)」を特長とする機能を盛り込んだほか、安定稼働を維持しながら電源を切ることができる「エコモード」を搭載しており,電力消費量を年間1万5500kW/hも削減することが可能である。
なかでも最大のトピックは,心臓MRIでの位置決めをスピーディに行える世界初の「CardioLine」をオプションで採用したことである。位置決めアシスト機能であるCardioLineは,事例ベースで特徴的な部位を推定する技術により,心臓MRIの基本的な6断面を高精度に決定することを支援する。このため,従来約50分かかっていた検査時間を約40分に短縮することが可能となる。さらに,折り返しアーチファクト回避機能によってスキャンミスをなくし,被検者の息止めの負担を軽減する。この技術は杏林大学付属病院放射線医学教室などとの共同研究により開発されたという。近年,撮像技術の進歩により心臓MRIがニーズが高まり,診療報酬においても「心臓MRI撮影加算」がある。一方で心臓MRIは,検査時間が長く,操作に習熟していないと撮像が難しいといった問題があった。CardioLineはこれらの問題を解決する技術として,普及が期待される。
このほか,MRIに関しては,同社の非造影MRI技術が今年度の「文部科学大臣表彰・科学技術賞」を受賞したことが発表された。
●CT:被ばく低減技術AIDR 3Dの搭載が進む
CTのコーナーでは,320列「Aquilion ONE」,80列「Aquilion PRIME」,16列「Alexion」を展示した。Aquilion PRIMEとAlexionはITEMでの展示は初めてとなる。Aquilion PRIMEは,0.5mm×160スライス,160mm/sの高速ヘリカルスキャン撮影で短時間で高画質を提供する。開口径は78cmとなっており,容易なポジショニングなど被検者の負担を減らすだけでなく,穿刺などの手技も行いやすい。Alexionは,設置面積が10.4m2とコンパクト設計が特長。対話形式で操作を進められるナビゲート機能を搭載している。
今回のITEMに先立って,設置ずみも含め,100台以上の国内すべてのAquilion ONEにAIDR 3Dを搭載したことがアナウンスされた。AIDR 3Dは,逐次近似法を応用した画像再構成技術。再構成時間がほとんど変わらずに,最大でノイズを50%,被ばく量を75%低減する。同社では2011年10月にAIDR 3Dを発表したが,今後「Aquilion」シリーズの新製品にはすべて標準搭載していくとしている。また,2012年に1月に発表した4列マルチスライスCT「Alexion/Access Edition」にも搭載した。
このほか,2012年1月からCTコロノグラフィ(CTC)が保険適用されたことを受けて,エーディア社のCTC用炭酸ガス送気装置「プロトCO2L」をCTCパッケージとして販売することがITEM前に発表された。また,昨2011年に買収した米国バイタル・イメージ社の画像解析ソリューションも参考出品された。
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●血管撮影装置:「スポット透視機能」によりさらなる被ばく低減を実現
血管撮影装置では,「Infinix Celeve-i INFX-8000H」が出品された。インターベンションと外科手術で併用することができるハイブリッドシステム。天井走行式のCアームと手術用の寝台を組み合わせたもので,Cアームの長手・横手方向への自在な動きにより,術者のスペースを確保する。
「Infinix Celeve-i」シリーズは,高画質と被ばく低減を実現する画像処理コンセプト「PureBrain」に基づいて開発されており,1画素ごとに必要な信号とノイズを計算して画像処理を行う「SNRF(Super Noise Reduction Filter)」が搭載されてきた。それに加え,今回新たな被ばく低減技術である「スポット透視機能」が搭載されること発表された。この機能は,モニタ上で関心領域を指定することで,その領域だけにX線が照射されるようにする技術。最大で被検者の照射線量を90%,術者線量を70%削減することが可能になる。この「スポット透視機能」は,「Infinix Celeve-i INFX-8000V」の12×12インチモデルに採用され,今後搭載機種を増やしていくことにしている。
●超音波診断装置:高精度かつ安全な穿刺を支援する「Smart Fusion」を発表
新プラットフォームを採用した装置として2011年に発表された「Aplio 500」「Aplio 300」などを中心に展示を構成した。ハイエンド装置のAplio 500は,画像処理エンジンの「High-density beam forming」により高画質化を図っている。また,優れた操作性を実現するインターフェイスであるiStyle+を採用している。
同装置には,ITEMに先立って,穿刺用のアプリケーションであるSmart Fusionが搭載されたことがアナウンスされた。この機能は,本体サイドに設置した磁場発生ユニットとプローブに取り付けた磁気センサーにより,CTやMRIの画像を超音波画像と連動させて,リアルタイムに表示するもの。Aplio 500の液晶モニタの左側にCTやMR画像,右側に超音波画像を表示し,それを確認しながら穿刺が行える。これにより,高い精度で安全な手技が可能となる。
Aplio 500には,このほかにも管腔内を3D画像表示する「Fly thru」機能も採用されており,ハイエンド装置にふさわしい高性能を実現している。
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●ヘルスケアIT:クラウドサービスのHealthcare@Cloudを開始
東日本大震災以降,医療分野でもクラウドに注目が集まっているが,同社も本格的に医療クラウドに参入することを発表した。新サービスであるHealthcare@Cloudは,PACS「RapideyeCore」の導入施設などを対象に,データセンターでの画像保存と運用管理を行う。
サービスの提供にあたっては,Amazon.com社の関連会社であるAmazon Web Services社が提供する「Amazon Web サービス」を用いる。
このサービスを利用することで,医療機関はストレージの導入・運用費用を抑えることできるほか,施設内の省スペース化,エネルギー消費量の削減,職員の省力化が図れる。また,施設の規模を問わずサービスを提供できるようなデータの保存方式を採用しているほか,RapideyeCoreの「スマート・プリフェッチ」機能により,データセンターにある画像もスピーディに展開できる。データセンターは3か所にあり,バックアップやセキュリティ対策も万全となっている。
同社は2015年における医用画像外部保管サービスの国内市場規模を50億円と推測しており,そのうちのシェア50%を獲得することをめざしている。
●がん診療:PET/CTの開発,研修センターの設立などを来場者にPR
ブース内では,プレスカンファレンスで綱川氏が述べたように,がん診療向けのソリューションを強化していく姿勢が随所に見られた。放射線治療研修センターの紹介がパネルを使って行われたほか,開発中のPET/CTもスケールモデルが展示された。
お問い合わせ先:
東芝メディカルシステムズ株式会社
〒324-8550 栃木県大田原市下石上1385番地
TEL 0287-26-5100
http://www.toshiba-medical.co.jp/