2012-4-19
フィリップスエレクトロニクスジャパンブース
フィリップスエレクトロニクスジャパンは,2年ぶりのITEMの展示を「Imaging 2.0(イメージング・ツー・ドット・オー)」をテーマに構成した。Imaging 2.0は,インターネットの世界に新たな価値をもたらした“Web2.0”になぞらえ,「Clinical Colaboration & Integration(臨床面での協調・融合)」,「Patient Focus(患者中心)」,「Improved Economic Value(経済的価値の向上)」の3つを基本にして画像診断領域に新しい価値を提供する。Imaging 2.0は,2010年のRSNAで初めて発表されたが,日本では今回が初めてのお披露目となる。
初日に行われたブース説明会で会見したダニー・リスバーグ代表取締役社長は,「Imaging 2.0の1つの柱である“Colaboration & Integration”とは,モダリティ間の連携という意味だけでなく,ユーザーとの密接な協力関係を築くことで,常に製品や技術の向上を図っていくことである。今回の展示においても,日本のユーザーによるMRIの最新の臨床画像など,製品にフィードバックされた数多くの成果を展示している。今後は放射線科領域だけでなく,病院内や患者さんとのコラボレーションに発展させていくことがImaging 2.0のねらいだ」と述べた。展示では,フルデジタル技術を搭載したMRI「Ingenia 3.0T」,新しいラインナップが加わったCT「Ingenuity CT」のほか,新製品としてPETとMRIを一体化した「Ingenuity TF PET/MR」,血管撮影での大幅な線量低減を実現した新製品「Allura Clarity」などをアピールした。また,サーバ型マルチモダリティ解析ワークステーション「IntelliSpace Portal」,ワイヤレスFPDを複数の部屋でシェアできる第3世代の「DigitalDiagnost」など,注目の製品を多数展示した。(4月13日取材)
●CT:iDose4やO-MARなどにより低線量かつ高画質を提供する「Ingenuity CT」
CTでは,2011年に発売した「Ingenuity CT」の実機(ガントリーモックアップ)展示を行った。Ingenuity CTは,64と128スライスのラインナップをそろえている。また,フラッグシップのBrilliance iCTシリーズにiDose4などの最新の技術を利用できるTVI Editionが登場した。
CTコーナーでは,画像診断の基本となる高画質のコンセプトとして“Superb IQ(Image quality)”を紹介した。その中心となるのが,第4世代の逐次近似画像再構成法であるiDose4である。iDose4では,自然で違和感のない再構成画像が得られ,De Noiseによってアーチファクトの除去が可能になり,画質の向上に貢献する。従来からの高分解能撮影であるUltra High Resolutionにおいても,iDose4を適用することで,微細構造の描出が可能になることをパネルで紹介した。また,Superb IQのメリットの1つとして,O-MAR(Orthopedic Metal Artifact Reduction)を紹介した。O-MARは,整形インプラントでの金属アーチファクトを除去する画像処理法で,人工骨頭などのアーチファクトを補正して読影を可能にする技術である。金属アーチファクトの除去は,Dual Energy法で処理する方法があるが,O-MARでは特殊な撮影をすることなく,新しい再構成法によって簡単に画像が得られることをアピールした。
|
|
◆サーバ型マルチモダリティ解析ワークステーション「IntelliSpace Portal」
IntelliSpace Portalは,CT/MRI/NMのマルチモダリティの画像をサーバで一元管理し,NM ViewerやCT virtual Colonoscopy,MR Diffusionなど豊富なクリニカルアプリケーションを利用できる。最大の特長は,クライアントライセンスフリーで利用できることで,端末の増設はアプリケーションソフトをインストールするだけで追加の費用は発生せず,用途や運用に応じてシステム構成を拡張できる。IntelliSpace Portalのアプリケーションである「Tumor Tracking」は,腫瘍を経時的にマルチモダリティでトラッキングして経時変化を観察でき,より精度の高い経過観察を支援する。
IntelliSpace Portalは,Imaging 2.0のClinical Colaboration & Integrationを実現する製品の1つであり,MR,NM(PET/MR)などの各コーナーで,IntelliSpace Portalによる画像やアプリケーションの紹介が展開されていた。
●MRI:フルデジタルテクノロジーdStreamを搭載した「Ingenia 3.0T」
MRIでは,フルデジタルテクノロジーdStreamを搭載し,最大40%のSNRの向上とチャンネルフリーによるワークフローの改善を実現した「Ingenia 3.0T」を展示した。Ingeniaでは,アナログデジタル変換器をワンチップ化してコイルに内蔵し,アナログケーブルによる信号ロスをなくしてSNRの向上を図ったほか,チャンネルの概念がなくなったことで,デジタルコイルのバリエーションが増え,高画質の検査が可能になった。ITEMでは今回初めての展示となるが,すでに日本では20施設以上に導入されており,MRIコーナーでは日本の医療機関で撮影された臨床画像をフィルムに出力して展示,ユーザーが見慣れた条件でIngeniaの高画質を実感できるように工夫されていた。通常は横断像で撮像するDWIを矢状断で撮像することで,短時間で高画質の画像が得られるDirect Coronal DWIの画像などに注目が集まっていた。さらに,MultiTransmit4Dによる3Tの心臓MRI検査,非造影Perfusion ASL,非造影MRAなどの新しいアプリケーションをアピールした。
また,MRIコーナーのIntelliSpace Portalでは,Tumor Trackingのほか,膝の軟骨解析などのアプリケーションを紹介した。
|
|
●血管撮影装置:73%の線量削減を可能にした「Allura Clarity」を発表
血管撮影装置では,デジタル画像処理系を一新し,X線管からモニタでの画像表示までデジタル画像に最適化した処理を行う“ClarityIQ technology”によって高画質と低被ばくを両立させた新製品「Allura Clarity」を発表。特別ブースを設けて,製品の概要と低線量で撮影された実際の画像を紹介した。Allura Clarityでは,FPDで取得されるデジタルデータを最大限に生かし,頭部や心臓などの領域や使用するアプリケーションに最適化したデジタル画像処理を瞬時に行うことで,被ばく線量を抑えつつ,従来以上の高画質画像の描出を可能にする。
ClarityIQ technologyは,“Pixel Shift”,“Motion Compensation”,“Noise Reduction”,“Image Enhancement”のパラメータを画像にあわせて調整するパワフルイメージプロセッシング,すべてのアプリケーションごとに最適化するフレキシブルデジタルイメージパイプラインなどの技術で画像処理を行う。これらの技術は,従来のAllura Xperにも搭載でき,アップグレードが可能になる。そのほか,血管撮影装置のコーナーでは,インターベンションを支援するツールとして,FlexMoveを特長とするハイブリッド手術室(ミニチュア模型で展示),造影剤の流れを可視化する2D Perfusionなどを紹介した。また,FPD搭載した外科用Cアーム「Veradius」を展示,コンパクトで取り回しがしやすく,FPDによる歪みのない鮮明な画像を提供できることをアピールした。
●X線撮影装置:ワイヤレスFPDをシェアして利用できる新しいDigitalDiagnost
発売から10年以上の実績のあるFPD搭載一般撮影装置「DigitalDiagnost」が,ライナップを一新し第3世代として登場した。新しいDigitalDiagnostは,1枚のワイヤレスFPDを共有して使用できるディテクタシェアリングを実現し,臨床現場のニーズに応じて5つの構成を提供できる。今回の展示では,立位と臥位の撮影装置にワイヤレストレイを装備し,1枚のワイヤレスFPDを入れ替えて使用できる“Value Room”が実機展示された。Value Roomでは,撮影装置にセットしたワイヤレスFPDの挿入方向がインジケータで一目でわかるようになっているほか,セットした状態で充電が行われるため,バッテリーの心配をすることなく検査が行える。新しいDigitalDiagnostは今年3月から福井大学に導入され,胸部X線画像診断の権威である伊藤春海教授からも評価を受けているという。コーナーの一角には福井大学で撮影された胸部画像も掲示されていた。
マンモグラフィのコーナーでは,「MammoDiagnost DR」の新しいユニットとしてステレオバイオプシー対応ガイダンスツール「StereoGuide」を展示した。StereoGuideは,検診用マンモ装置に簡単に取り付けられるステレオバイオプシー用のユニットで,精検にも対応できることで,MammoDiagnost DRの用途を広げるユニットである。
|
|
●PET/MR:TOF PETと3T MRIを組み合わせて新しい臨床的価値を提供
「Ingenuity TF PET/MR」は,フィリップスが2010年のRSNAで初めて発表したPET装置とMRIを組み合わせた複合機である。2011年にCE,FDAを取得し全世界での臨床稼働が始まっていたが,日本でもこのほど薬事承認を受け販売を開始した。今回はミニチュアモックアップによる展示だったが,Time of Flight(TOF)が可能なPETと3T MRI(Achieva)の間のベッドが回転して,PETとMRIの画像が収集できることを再現していた。装置の特長としては,TOFによる高精度のPET画像が得られること,MRIではMultiTransmit技術の高画質と豊富な受信コイルをそのまま使用できることが挙げられる。PET側ではMRIの磁場の影響を防ぐため,シールドなどの対応を行っている。展示では,IntelliSpace Portalによる全身のがんのスクリーニングや前立腺がんのフュージョン画像などが紹介されていたが,臨床的な有用性としては小児領域や脳神経領域のパーキンソン病やアルツハイマーの診断への適応が期待されるとのことだ。
●超音波診断装置:9000素子を配列したxMATRIXプローブでボリュームデータの収集が可能なiU22 xMATRIX
超音波診断装置では,最上位機種である「iU22 xMATRIX」の展示を行った。大きな特長は,縦横にマトリックス状に9000素子を配列した2次元アレイトランスデューサ「X6-1:xMATRIX transducer」で,素子間の干渉や発生する熱の問題を解消して実現したフィリップス独自のプローブである。これによって,超音波でボリュームデータの収集が可能になり,従来の超音波にはない体表と並行した断面の高精細画像や,同時2断面表示などを可能にした。リアルタイムだけでなく,収集したデータを後から確認するなど,超音波検査のワークフローを変える技術と言える。そのほか,組織性状の定量評価を可能にした“Shear Wave Elastography”,血管エコーの調整をワンボタンで可能にする“Auto Doppler”などの機能を紹介した。
|
|
●ヘルスケアIT:読影業務の効率化とオープンな接続環境を提供する「IDS7 PACS」を紹介
PACSでは,2010年からスウェーデンのSectra社と日本向けに共同開発を行ってきた「IDS7 PACS」などを展示した。IDS7 PACSは,迅速でわかりやすい診断レポートが作成できることが1つの特長で,画像診断医と共同開発した「iReport」との組み合わせや,PSC社のポータルシステム「Claio」との連携によってワークフローを改善できる。今年の診療報酬改定で3Tや64列CTによる検査に施設基準が設けられ,画像管理加算2の取得が必要となったが,読影業務を迅速に行うための機能を搭載している。また,PACSではマルチモダリティへの対応が求められているが,Sectraがベースになっていることでニュートラルなシステムとなっていること,日本でのローカライズやIHE-Jへの準拠などオープンな対応が可能になっている。そのほか,展示では整形外科向けに開発された,大腿骨置換術でのインプラントのマッチングをモニタ上でシミュレーションできるソフトウエア「Ortho Pkg」などのデモを行った。
|
|
お問い合わせ先:
株式会社フィリップスエレクトロニクスジャパン
〒108-8507 東京都港区港南2-13-37
TEL 0120-556-494
www.philips.co.jp/healthcare