2024-7-30
クラウド型電子カルテからPHRのプラットフォームまで
幅広い展示を行った富士通ブース
富士通(富士通Japan)は,「富士通と創る安心安全持続可能な医療の未来」をテーマに,医療機関のデジタルトランスフォーメーション(医療DX)を推進するための幅広いソリューションをデモ展示,プレゼンテーション,出展社セミナーなどで紹介した。デモ展示では,中小病院向けやクリニック向けの電子カルテシステム,外来や通院をサポートする患者向けのソリューション,ヘルスケアITのプラットフォーム,セキュリティの相談コーナーなど多彩なシステムをアピールした。
クラウド型電子カルテサービス「HOPE LifeMark-TX Simple type」(LifeMark-TX)は,2024年7月1日に発売が開始されたクリニック向けの電子カルテの新製品。オンライン資格確認や電子処方箋,医療情報標準規格のHL7 FHIRに対応し,電子カルテシステムと医事会計システムを統合したクラウド型のサービスとして新たに開発された。特徴としては,製品名の通り“シンプル”なシステムをめざし,初めてでもマニュアルを見ることなく操作できる直感的な画面デザインやユーザーインターフェイス(UI)となっていることだ。また,受付から診察,そして会計までを電子カルテだけで行うことができる。これによって事務スタッフなどの負担を軽減することができる。受付では,オンライン資格確認システムと連携して自動で患者受付や情報が登録されるほか,保険情報の確認なども電子カルテの画面上で行える。また,患者向け総合ソリューション「HOPE LifeMark-コンシェルジュ」と連携して,受付から会計までをスマートフォン上ですべて完結することも可能で,患者の満足度向上にも貢献できる。
「HOPE Cloud Chart II」は,2021年にリリースされ450以上のユーザーに導入されている中小規模病院向けクラウド型電子カルテシステムだ。クラウド化することで,院内にサーバを設置する必要がなく,また,診療報酬改定やシステムのレベルアップの適用作業などもセンター側で容易に可能になり,施設側の管理や運用の負担が軽減できる。また,昨年改定された「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」の第6.0版では医療機関でのセキュリティ対応への要求が厳しくなったが,クラウド化でセキュリティを担保した医療情報システムの運用ができるのもポイントだ。さらに,データセンターに蓄積されたデータを利用して,収益や病床稼働率などの経営指標を可視化する「経営ダッシュボード」を搭載しており,厚生労働省のデータを利用した全国平均とのベンチマークや,外来・入院や診療科ごとの分析によって病院経営をサポートする。
病院介護“一体運営・DX化”ソリューションは,病院と同一建屋内や隣接して運用されることが多い介護医療院に向けたもので,病院側の電子カルテ「HOPE Cloud Chart II」と介護システムの「HOPE LifeMark-WINCARE Cloud II」および医事システムの統一運用を可能にして,患者情報の共有,医療院と病棟の統合運用,オーダや記録作成・入力・参照などが一つのシステムのように運用できる。リハビリ病棟から介護医療院への転棟など医療と介護をまたぐようなケースにも電子カルテをメインとしてカルテからレセプト作成まで一気通貫での運用が可能になる。展示では,HOPE Cloud Chart IIでの介護情報の参照ビューワなど今後ますますニーズが高まる医療と介護のシームレスな運用に対応するソリューションも合わせて紹介した。
患者向け総合ソリューション「HOPE LifeMark-コンシェルジュ」は,患者が持つスマートフォンを利用して診療予約や確認,予約のリマインド,スマート診察券,会計などの機能を提供し,通院における患者の利便性の向上,職員の業務負荷の軽減などを可能にする。これらの機能は,電子カルテと連携してスマートフォン用のアプリとして提供される。患者は自身のスマートフォンにダウンロードすることで,病院が提供するサービスを受けることができる。基本機能として,アラートリマインド(予約の前日に自動通知),スマート診察券,コンテンツ表示(バスの時刻表など便利な情報を表示),メッセージ配信(休診日やイベントなどの情報を発信),予約表示,家族登録。病院のニーズに合わせて,スマートチェックイン(スマホだけで受付),らくらく会計(後払い設定で会計待ちを不要に)などさまざまなオプションを用意している。
スマートデバイスを活用したソリューションとして,「HOPE LifeMark-Voice」を新製品として紹介した。HOPE LifeMark-Voiceは,スマートフォンを利用して,看護師のラウンド業務や医師の回診,移動中などに音声でメモを取ることができる。音声認識エンジンにはAmiVoiceが採用されている。スマートフォンで音声で入力したテキストを確認して,電子カルテに転送するといった運用が可能になる。
そのほか,ヘルスケア分野に新たな価値を生み出すデータ利活用基盤「Healthy Living Platform」,病院経営の可視化,分析から評価までをトータルにサポートする経営支援ソリューションを展示,病院における医療情報の安全な管理,運用に関する相談を受け付ける「セキュリティ相談コーナー」などが設けられた。