2014-11-11
GEヘルスケアと武田薬品工業(株)は,肝疾患の診断・治療において重要な要素である肝線維化の診断技術に関するアライアンス契約を締結したことを発表した。
本契約の締結については,米国時間11月7日〜11日に米国マサチューセッツ州ボストンで開催される第65回米国肝臓学会議(AASLD)の時期に合わせての発表となる。
本契約に基づき,GEヘルスケアは武田薬品が進める肝疾患に関する研究・開発において,線維化測定のためのイメージング診断技術を武田薬品へ提供する。両社協力のもと,各々の強みを活かすことによって,治療薬のより早期の開発および新たな肝疾患診断技術の開発を目指す。
初期の肝疾患は自覚症状がほとんどなく,正常肝から肝炎,肝硬変へと症状が悪化するのに伴い,組織が硬くなる線維化が進むのが特徴。近年世界的に,高齢化や生活習慣の変化などから,メタボリックシンドロームの肝臓における表現型とされる非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が問題となっている*1。過去20〜30年の間で,NAFLDおよびNASHが先進国における肝疾患の原因第一位となっている。また過去20年間で,中東,極東,アフリカ,カリブ海諸国,南米などの新興国において,他の肝疾患の罹患率が維持,減少している一方で,NAFLDの罹患率は倍に増えている。肝臓の線維化の早期診断とともに肝疾患の進展を抑制する薬剤の開発が課題となっている。
現在,肝線維化の診断において針を皮膚から肝臓へと突き刺し,肝臓の一部を採取して測定する肝生検(バイオプシー)が主な検査方法とされているが,患者さんの負担を軽減する非侵襲的な診断方法の開発が強く求められている。GEヘルスケアが開発し,2009年より米国で(日本国内は2012年から)使用が開始されたMRエラストグラフィー*2では,肝臓組織の相対的な硬さをMRIによる非侵襲的な方法で鑑別することができるようになった。このようなGEヘルスケアの診断技術は,武田薬品が取り組む革新的な薬剤の開発に寄与することが期待される。
武田薬品の取締役 チーフ メディカル&サイエンティフィック オフィサーの山田忠孝氏は「このたび,GEヘルスケアと肝疾患の治療薬開発に向けたパートナーシップを構築できたことを大変嬉しく思います。今回の提携は,創薬において,肝疾患を有する患者さんにとって治療における選択肢を広げる,より負担の少ない新たな医薬品開発に向けた取り組みとなります。今後も,患者さんを第一に考え,様々なイノベーションを取り入れてまいります」と述べている。
GEヘルスケア・ジャパン会長であり肝臓疾患プログラム統括責任者の熊谷昭彦氏は「本パートナーシップを通じて,アジアのみならず世界的に重要となってきている肝疾患の治療薬開発に,当社の技術を役立てられることを大変光栄に思います。GEは重点領域として肝疾患ソリューション開発に注力しており,超高齢社会に対するソリューションを提供することを戦略に掲げる日本は,グローバルにおけるその研究開発拠点の一つとして,活動をけん引してきました。GEのイノベーションが,一日も早く,世界中の人々の健康に寄与できることを祈っています」と述べている。
*1 出典: 「THE MERCK MANUAL PROFESSIONAL EDITION」サイト内のJesse M. Civan, MDの記事から引用
http://www.merckmanuals.com/professional/hepatic_and_biliary_disorders/fibrosis_and_cirrhosis/hepatic_fibrosis.html
World Gastroenterology Organisation Global Guidelines「Nonalcoholic Fatty Liver Disease and Nonalcoholic Steatohepatitis」から引用
http://www.worldgastroenterology.org/assets/export/userfiles/2012_NASH%20and%20NAFLD_Final_long.pdf
*2 MRエラストグラフィーとは,外部から与えられた振動をもとに,MRIで体内組織の弾性(elasticity)を画像化する技術。組織の相対的な硬さを色分け表記できるのが最大の特長で,得られた画像に設定したROI(関心領域)の測定値は肝臓の相対的な硬さ(弾性)を反映しており,臨床的には世界の高齢化に伴い罹患数が増加傾向にある肝疾患の進行度診断に高い有用性が期待されている。詳しくはこちら から。
●問い合わせ先
GEヘルスケア・ジャパン(株)
コミュニケーション本部
ブランチャード/松井
TEL 0120-202-021
www.gehealthcare.co.jp
武田薬品工業(株)
コーポレート・コミュニケーション部(広報)
TEL 03-3278-2037
http://www.takeda.co.jp/