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NECとNEC Bio,がん免疫療法に重要なT細胞受容体を予測する生成AIモデルを開発し,基礎的検証において良好な成果を確認~「米国がん免疫療法学会2024」において研究成果を発表~

2024-11-7

・両社は独自の生成AI技術を活用し,がん細胞由来抗原に対して反応性が高いT細胞受容体(TCR,注1)を予測した。
・予測したTCRをT細胞株に発現させ,より強いT細胞活性を誘導できることを確認した。
・TCRを活用したがん免疫療法の今後の開発に革新をもたらす可能性がある。

日本電気(株)(以下 NEC,注2)と,NECの創薬事業においてAIを活用した最先端の研究と臨床開発を担うNEC Bio B.V. (以下 NEC Bio,注3)は,独自の生成AI技術を活用してがん細胞由来抗原(注4)に対して高い反応性を示すTCR配列を予測する生成AIモデルを開発した。また,予測したTCRが活性化することを,セルベースアッセイ(注5)により実証した。本成果は,TCRに基づくがん免疫療法開発において,開発期間の短縮やTCR候補の選別などに貢献できる可能性がある。
両社は本成果を,米国がん免疫療法学会の年次総会(Society for Immunotherapy of Cancer (SITC) 2024 Annual Meeting)で11月7日にポスター発表する。

TCRを用いたがん免疫療法の課題

TCRは免疫細胞の一種であるT細胞上に発現する受容体であり,がん細胞由来抗原を認識しT細胞によるがん細胞への攻撃を誘導する。そのため,がん免疫療法の有望なターゲットの一つとされている。しかし,がん免疫療法に有用なTCRを同定する従来の手法では,ヒト末梢血サンプルからのTCR遺伝子クローニングなどの複雑な実験手順が必要であるため,がん細胞由来抗原を認識するTCRの選別を行うことは容易ではなく,TCRを用いたがん免疫療法開発の課題の一つとなっている。

独自の生成AI技術を用いたTCRの改変および有効性の確認

今回TCR解析用に開発した独自の生成AIモデルでは,がん細胞由来抗原に高い反応性を示す新規TCRの遺伝子配列を予測する。ターゲットとなるがん細胞由来抗原と,物理化学的なデータに基づくTCR相互作用情報を学習させた機械学習アルゴリズムを用いて,目的の抗原に対して反応性の高いTCR配列を予測し,がん細胞由来抗原との反応性の高さを示すスコアとともに提示する。本生成AIモデルは,これまでのTCR配列の改変を実行するAIモデルとの比較において,確度と精度の面で高い性能を示した。また,本生成AIモデルによって設計されたTCRは,セルベースアッセイにおいて反応性を示すことを,愛知県がんセンターとの共同研究によって確認している。

NEC 執行役 Corporate EVP 兼 CTO 西原基夫 氏のコメント

独自の生成AI技術を活用したTCRの改変に関する研究成果をSITCの年次総会で発表できたことを大変うれしく思います。今回の結果は,私たちの技術の革新的な可能性を示しており,今後のがん免疫療法開発において,本技術が大きな貢献をもたらすことを期待しています。NECグループは今後も,AIを活用した革新的な医療を世界中の患者さんに届けるという私たちのミッションの実現に取り組んでまいります。

なお本内容は,SITC2024のポスター発表時に閲覧できるほか,NEC Bioのウェブサイトでもアクセスできる。
・SITC 2024:https://www.sitcancer.org/2024/home
・NEC Bio:https://www.nec-bio.com/

ポスター詳細
・アブストラクト番号:1230
・タイトル:Design of Enhanced TCRs Against Cancer Antigens Using an AI System
・発表者:Martin Renqiang Min – NEC Labs America
・発表日:11月7日

(注1)T細胞受容体(T cell receptor,TCR):T細胞は免疫系の一部を担う白血球の一種で,細菌・ウイルスやがんなどの異物(抗原)に対する免疫応答の中心的な役割を果たす。T細胞受容体は,T細胞の細胞膜上に発現しているタンパクで,抗原を認識しT細胞を活性化する役割がある。
(注2)本社:東京都港区,取締役 代表執行役社長 兼 CEO:森田隆之
(注3)本社:オランダ・ヒルバーサム,CEO:北村哲
NEC Bio社について:https://www.nec-bio.com/
 (注4)がん細胞由来抗原:がん細胞特異的に発現する抗原で免疫細胞ががん細胞を認識し,攻撃するための標的となる。
 (注5)セルベースアッセイ:がん細胞由来抗原:特定の物質に対する生体の反応を検出し評価する,細胞を用いた実験方法。今回の検証では,TCRが誘導するT細胞活性化を評価できるセルベースアッセイを使用している。

NECの創薬事業について
URL:https://jpn.nec.com/solution/ai-drug/

 

●問い合わせ先
NEC AI創薬統括部
E-Mail:contact@aidd.jp.nec.com