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ボストン・サイエンティフィック ジャパン,左心房治療に使用する高周波の経心房中隔穿刺システム「VersaCross™ RF Transseptal Solution」を8月1日より新発売ベイリス・メディカル社のテクノロジーを採用 手技中のカテーテルの交換回数を減らし,手技時間を短縮

2024-8-1

ボストン・サイエンティフィック ジャパン(株)は,8月1日より全国で,左心房治療に使用する高周波の経心房中隔穿刺システム「VersaCross™ RF Transseptal Solution」を発売する。

「VersaCross RF Transseptal Solution」は,心房中隔穿刺法を行う際に使用する製品。心房中隔穿刺法は,心房細動アブレーション治療(1)をはじめ,左心耳閉鎖術(2),経皮的僧帽弁拡張術などの,左心治療の際に,左右の心房の間にある壁(心房中隔)を開孔して,鼠径部の静脈から挿入したカテーテルを右心房から左心房にデリバリーする方法である。近年,カテーテルアブレーション治療に加え,左心耳閉鎖術など,左心治療の選択肢が増えており,経皮的に左心系にカテーテルを挿入するための製品の需要はますます高まっている。

横浜市立みなと赤十字病院 循環器内科不整脈診療科部長 山内 康照氏は,次のように述べている。「近年,左心系の疾患に対する治療・予防の選択肢が増えており,今後ますます普及していくことが予想されます。本製品では,従来よりもスピーディーな手技ができることに加えて,中隔穿刺の簡便性・効率性が向上しています。これは,患者さんの負担軽減につながるだけでなく,執刀する医師側のストレスの緩和も期待されると思います。欧米で確立され標準になっている手技が,日本でも適用され,本製品が標準的な治療ソリューションとして広く利用されることを期待しています。」

【VersaCross RF Transseptal Solutionの製品概要/特長】

本製品は,ガイドワイヤーの役割を果たす独自の「VersaCross RF Transseptal Wire」と「専用シース」で構成されている。VersaCross RF Transseptal Wireを心房中隔に留置し,高周波エネルギーを使って心房中隔の組織を焼いて小さな穴を開ける。VersaCross RF Transseptal Wireには,ベイリス・メディカル社の主力製品「NRG RF トランスセプタルニードル」のテクノロジーを採用している。このテクノロジーは,心房細動のアブレーション治療等で広く使用されている。ベイリス・メディカル社は,2022年2月にBoston Scientific Corporation(米国)に買収された。

また,従来の製品では,ガイドワイヤーとシースを挿入した後に一度ガイドワイヤーを抜き,心房中隔に穴を開けるための中隔穿刺針を挿入し,穿刺後に中隔穿刺針を抜いて再度ガイドワイヤーに交換して治療デバイスを挿入する,というプロセスが必要であった。本製品では,独自の「VersaCross RF Transseptal Wire」と「専用シース」により,シース挿入後にそのまま心房中隔の穿刺に移行することができる。具体的には,穿刺後に中隔穿刺針を抜いてガイドワイヤーに交換する,という従来のプロセスを省き,最初のガイドワイヤー挿入から治療デバイス挿入までを一気通貫で行うことができる。本製品を導入することにより,手技中のカテーテル交換の回数を減らすことができるため,手技全体にかかる時間の短縮が可能となる。

Baylis RFトランスセプタルワイヤ
Baylis RFトランスセプタルワイヤ

 

販売名:Baylis RFトランスセプタルワイヤ
医療機器承認番号: 30300BZX00001000

■標準的な「NRG RFトランスセプタルニードル」による手技より,中隔穿刺に要する時間を17%短縮

グラフ: 標準的な「NRG RFトランスセプタルニードル」と本製品による手技時間の比較(参照文献Figure3より改変)

 

グラフ: 標準的な「NRG RFトランスセプタルニードル」と本製品による手技時間の比較(参照文献Figure3より改変)

Whitler C, McClellan B, Patel H, Rajpurohit D, Kalaba F, Kado H, David S, Shah D. Improved left atrial appendage closure
procedural efficiency using radiofrequency transseptal wire system. Catheterization and Cardiovascular Interventions, 2023 Jan 10.

ボストン・サイエンティフィック ジャパン 代表取締役社長の森川智之氏は「手技時間の短縮は,医師と患者さんの双方にとって極めて重要です。当社は,心房細動治療において,治療成績の向上,手技時間の短縮,そして心原性脳卒中予防につながる意義のあるソリューションを提供するためにポートフォリオを拡充してまいりました。このたび発売するVersaCross RF Transseptal Solution が,心房細動治療の手技に不可欠な中隔穿刺において手技時間の短縮と患者さんの治療に対する負担軽減に寄与することを期待しています。今後もさらなる治療成績の向上を目指し,カテーテルアブレーションの新たな選択肢となるテクノロジーを導入することで,日本の医療に貢献していきます。」と述べている。

なお,本製品は,2022年9月30日付で発表した日本ライフライン(株)との「心房中隔穿刺関連製品の製造販売承認の承継と販売パートナーシップ契約基本合意」(※)に基づき,製造販売承認の承継を行った。

※2022年9月30日発表プレスリリース
・心房中隔穿刺関連製品の製造販売承認の承継と販売パートナーシップ契約基本合意のお知らせ
https://www.bostonscientific.com/jp-JP/news-releases/2022-news-releases/2022-9-30-news-release.html

1)心房細動アブレーションについて
心房細動は,心臓の中の心房が細かく震えることで起こる不整脈の1つ。心房細動によって心房に流れ込んだ血液が淀んで形成された血栓が移動することで,脳卒中を引き起こすリスクがある。特に高齢者で罹患のリスクが高く,高齢化に伴い,患者数は2010年の約80万人から,20年後の2030年には100万人に増加するといわれている(a)。カテーテルアブレーション治療は,心房細動の根治を目指す治療法で,2022年度の治療件数は10万例を超えており(b),心房細動の増加により手技件数の増加も予想されている(c)

2)左心耳閉鎖術について
心房細動により心臓で形成された血栓が原因となる心原性の脳卒中の場合,血栓形成の約9割が心臓の左心房にある「左心耳」に起因するといわれている。本術は,非弁膜症性心房細動による血栓の形成の原因となる左心耳を閉鎖することにより脳卒中を予防する術法で,非弁膜症性心房細動を患い長期間の抗凝固薬の服用ができない患者にとって,心房細動による脳卒中を予防するための治療選択肢のひとつ。開心術を行う必要がなく,鼠径部の静脈からカテーテルを通して心臓に挿入し,中隔穿刺を通じて左心耳にアプローチし,左心耳を閉鎖することで脳卒中のリスクを低減する。また,出血リスクを伴う抗凝固薬の服用を短期間(約45日)で中止できる可能性がある。

a) 国立循環器病研究センターウェブサイト
b) 2022 年循環器疾患診療実態調査報告書(https://www.j-circ.or.jp/jittai_chosa/media/jittai_chosa2021web.pdf ): カテーテルアブレーション件数
c) 心房細動アブレーションの進歩(https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/109/11/109_2400/_pdf/-char/ja

 

●問い合わせ先
ボストン・サイエンティフィック ジャパン(株)
コーポレートコミュニケーション
Email: pressroom@bsci.com
https://www.bostonscientific.jp