2024-7-10
ポイント
- 5施設から収集した14万枚超の胸部X線画像を,AIモデルの訓練・検証に使用。
- AIモデルの推定値と肺機能検査の測定値で,非常に高い一致率を実現。
- 肺機能検査が実施困難な場合での活用や,検査の効率化へも期待。
大阪公立大学大学院医学研究科人工知能学准教授の植田 大樹氏,放射線診断学・IVR学教授の三木 幸雄氏らの研究グループは,胸部X線写真から肺機能を高精度で推定可能な人工知能(AI)モデルを開発した。
本研究では,国内の5施設から収集した14万枚を超える胸部X線写真を用いて,ディープラーニングによるAIモデルを開発。AIモデルの訓練・検証には3施設のデータを,外部テストには2施設のデータを使用した。性能評価には,肺機能検査の代表的な指標である努力性肺活量※1と1秒量※2を用い,AIモデルの推定値と実際の肺機能検査の測定値を比較した。その結果,いずれの指標においてもAIモデルは非常に高い推定精度を示した。 本研究成果は,検査が困難な場合(認知症患者や小児など)や,COVID-19などの感染症流行により検査が実施できない場合の代替検査法として活用が期待される。また,胸部X線の撮影だけで肺機能も推定できるため,検査の効率化にもつながると考えられる。
本研究成果は,2024年7月9日(火)に,国際学術誌「The Lancet Digital Health」のオンライン速報版に掲載された。
植田 大樹氏コメント
胸部X線写真から肺機能を高精度に推定できるAIモデルの開発に成功しました。多施設の医療従事者,研究者,技術者,患者さんなどたくさんの方々のお陰で作成できたAIで,感謝しかありません。今後は,本モデルの臨床応用に向けて,さらなる検証を進めていきたいと考えています。
掲載誌情報
【発表雑誌】The Lancet Digital Health
【論文名】A deep learning-based model to estimate pulmonary function from chest x-rays: multi-institutional model development and validation study in Japan
【著者】Daiju Ueda, Toshimasa Matsumoto, Akira Yamamoto, Shannon L Walston, Yasuhito Mitsuyama, Hirotaka Takita, Kazuhisa Asai, Tetsuya Watanabe, Koji Abo, Tatsuo Kimura, Shinya Fukumoto, Toshio Watanabe, Tohru Takeshita, Yukio Miki
【掲載URL】https://doi.org/10.1016/52589-7500(24)00113-4
用語解説
※1 努力性肺活量…最大限息を吸い込み,その後思い切り息を吐き出したときの空気量のこと。肺の大きさや弾性を反映する指標。
※2 1秒量…最大限息を吸い込んだ後,1秒間に吐き出すことのできる空気量のこと。気道の広さや呼気の勢いを反映する指標。
●研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院医学研究科
准教授 植田 大樹(うえだ だいじゅ)
TEL:06-6645-3831
E-mail:ai.labo.ocu[at]gmail.com
※[at]を@に変更。