2023-4-5
AMULET SOPHINITY
富士フイルム(株)は,低線量・高画質とAI技術によるワークフロー向上を実現したデジタルマンモグラフィシステム「AMULET SOPHINITY(アミュレット ソフィニティ)」を,富士フイルムメディカル(株)を通じて6月1日より発売する。「AMULET SOPHINITY」は,乳房の断層画像を生成し内部構造の3次元的な観察を可能にするトモシンセシス機能を搭載した,同社デジタルマンモグラフィシステム「AMULET(アミュレット)」シリーズ※1の最上位機種。
同社は,4月14日~16日にパシフィコ横浜(神奈川県横浜市)で開催される「2023国際医用画像総合展(ITEM2023)」に「AMULET SOPHINITY」を出展する。
乳がんは,日本人女性が罹患するがんとして最も多く,9人に1人が罹患している※2。また,近年,若い世代においても乳がんの罹患者数が増加傾向にある。乳がんは早期に発見し治療すれば治癒する確率が高い疾患であることから,定期的な検診受診が推奨されている。
乳がんの対策型検診では,医師がマンモグラフィを用いて乳房のX線撮影を行い,撮影した2次元の画像から病変の有無などを確認する。画像では乳腺も病変も白く写り,それらが重なると病変の識別が難しいため,医師の高い読影技術と高画質な画像が要求される。また,過去に撮影した画像との比較や左右の乳房での比較を行うため,適切なポジショニングで撮影することが求められる※3。
今回発売する「AMULET SOPHINITY」は,低線量・高画質とAI技術によるワークフロー向上を実現したデジタルマンモグラフィシステム。「AMULET SOPHINITY」は,同社が開発した「HCP(Hexagonal Close Pattern)構造」TFTパネル※4を採用した直接変換型FPDを搭載。低線量でも画素サイズ50μmの高精細な画像を提供する。また,異なる角度から乳房の画像を複数回撮影し,それらの画像を再構成して乳房の断層画像を生成するトモシンセシス機能を装備しているため,乳腺の重なりを軽減した,厚み方向の複数の断層画像で3次元的に観察することが可能。現行機※5よりトモシンセシスでの撮影枚数を増やし,画像の再構成に使用する情報量を増加させることで,再構成時に発生するアーチファクト※6を低減し,より鮮明な画像での観察を実現する。なお,撮影枚数を増やしても,一度の撮影における総線量は,同社の画像処理技術により現行機と同等。
さらに「AMULET SOPHINITY」は,AI技術※7を活用して新たに開発した「プロジェクション機能"Positioning MAP"」を搭載。過去に撮影したマンモグラフィ画像と同じポジショニングで撮影する目安として,同画像から抽出したスキンライン※8と乳頭位置を撮影台面上に投影する。これにより,撮影者が投影されたスキンラインと乳頭位置を参考に乳房をポジショニングできるため,過去と比較しやすい画像の撮影が可能。また,初めての検査で過去の画像が存在しない場合には,左右の乳房を比較するため,左右反対側の画像を反転し撮影台面上に投影することもできる。「プロジェクション機能"Positioning MAP"」により,画像の位置合わせなど読影時の手間も削減でき,ポジショニングと読影の両方でワークフローを向上する。
この他,受診者への優しさにもこだわったデザインと機能を採用。撮影台下部に体の形状に合ったカーブ(Fit Curve)を設け検査時の窮屈さを和らげたり,乳房圧迫時の痛み軽減を目指した圧迫自動減圧制御機能「Comfort Comp“なごむね”※9」を標準搭載することで,受診者に優しい検査をサポートする。
富士フイルムグループは,乳がん検査などのブレストイメージング領域向けに,デジタルX線撮影装置・医療IT・超音波診断装置・MRIなど幅広い製品ラインアップを組み合わせ,医療現場のニーズにあったソリューション提案を強化している。また,より付加価値の高いソリューションの提供を目指し,グループが持つ技術を結集した製品開発を加速させている。今後は,これらの取り組みをブレストイメージング領域から産科・婦人科での検査,骨密度検査などの女性向け医療(Women‘s Health)領域に拡大。Women’s Health向けソリューションを「INNOMUSE(イノミューズ)」のブランド名で広く展開して,女性の健康維持増進に貢献していく。
※1 富士フイルムのデジタルマンモグラフィシステムのシリーズ。
※2 公益財団法人 がん研究振興財団「がんの統計 2022」より。
※3 がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(令和3年10月1日)
※4 X線を電荷に変換し,その電荷を収集してX線情報を検出する電極の形状を六角形にしたTFTパネル。電極の角で起こる電界強度の乱れは,一般的に角が鋭角になるほど大きくなる。同社の「HCP構造」TFTパネルでは,電極の形状を,一般的なパネルで採用している正方形ではなく,より鈍角な六角形にしたことで,電界強度の乱れを緩和。電荷収集効率が向上し,電極が正方形であるパネルと比べてX線検出感度が約2割向上する(電極が正方形のパネルを搭載した同社装置との比較)。
※5 同社の乳がん検査用デジタルマンモグラフィシステム「AMULET Innovality」。
販売名:デジタル式乳房用X線診断装置 FDR MS-3500
認証番号:224ABBZX00182000
※6 マンモグラフィのトモシンセシス撮影において,画像の再構成時に発生する,本来存在しない像。
※7 乳頭位置の検出アルゴリズムを,AI技術の一つであるディープラーニングを用いて設計。導入後に自動的にシステムの性能や精度が変化することはありません。
※8 乳房の皮膚の輪郭。
※9 受診者の痛みを軽減する目的で,通常の乳房圧迫完了後に,乳房の厚みが変化しない範囲(±3mm)で圧迫力を減圧する機能。ヒステリシス現象(物質の状態が過去に加わった力の経過に依存する現象)を利用し,通常の圧迫方法よりも,最大圧迫力となる時間を低減する。
(参考:乳房のヒステリシス現象に関する論文)
L. Han, M. Burcher, and J.A. Novle. Non-invasive Measurement of Biomechanical Properties of in vivo Soft Tissues. MICCAI 2002, LNCS 2488, pp. 208-215, 2002.
1. 製品名
AMULET SOPHINITY
販売名:デジタル式乳房用X線診断装置 FDR MS-4000(AMULET SOPHINITY型)
認証番号:第 304ABBZX00020000号
2. 発売日
2023年6月1日
●主な特長
(1)低線量で高画質を実現
自社開発の「HCP(Hexagonal Close Pattern)構造」TFTパネルを採用した直接変換型FPDを搭載。低線量でも画素サイズ50μmの高精細な画像を提供する。加えてトモシンセシス機能では,撮影枚数を増やし,アーチファクトを低減することに成功。同社の画像処理技術により,撮影枚数を増やしても,一度の撮影における総線量は現行機と同等である。さらに,画像処理機能ISR※10と組合せることで,トモシンセシス画像のさらなる高画質化を実現する。
※10 ISR (Iterative Super-Resolution reconstruction)は,アーチファクトの低減,高解像度化,粒状抑制を同時に行う画像処理機能。
(2)AI技術を活用して適切なポジショニングをサポート
マンモグラフィ画像の読影では,小さな変化を見逃さないように,左右の乳房画像の比較読影や,過去の画像との比較読影を行う。厚生労働省の指針でも,過去の画像との比較読影が望ましいと明記されており,その重要性が示されているが,比較読影がしやすい画像は乳房のポジショニングに左右され,撮影者の高い技術を必要とする。
今回,AI技術を活用して新たに開発した「プロジェクション機能"Positioning MAP"」は,過去に撮影した,同一受診者の画像のスキンラインと乳頭位置をポジショニングの目安として撮影台面上に投影。過去の画像と比較しやすい撮影をサポートする。初めての検査で過去の画像が存在しない場合には,左右の乳房を比較するため,左右反対側の画像を反転して撮影台面上に投影することも可能。
また,AI技術※11を用いた「ポジショニング解析機能」も搭載。撮影画像からポジショニング状態を解析した結果を提示するため,ポジショニング技術の向上に役立つことが期待できる。
※11 ポジショニングにおいて重要な大胸筋と乳頭の基準点の抽出アルゴリズムを,AI技術の一つであるディープラーニングを用いて設計。導入後に自動的にシステムの性能や精度が変化することはない。
(3)受診者に優しいデザインと機能
撮影台下部に体の形状に合ったカーブ(Fit Curve)を設け,受診者の腹部の圧迫感を減らすことで,検査時の窮屈さを和らげる。
さらに,乳房の圧迫固定を行った後,乳房の状態や画質に影響しない範囲で圧迫力を自動で減圧することで,検査時の痛み軽減を目指す圧迫自動減圧制御機能「Comfort Comp“なごむね”」を標準搭載している。
●問い合わせ先
富士フイルムメディカル(株)
マーケティング部
TEL 03-6419-8033