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日本メドトロニック,日本初のハイブリッドクローズドループ(HCL)テクノロジー搭載 インスリンポンプ「ミニメド™770Gシステム」の販売を開始

2022-1-13

インスリンポンプ「ミニメド770Gシステム」

 「ミニメド™770Gシステム」
(販売名:メドトロニック ミニメド  700シリーズ/
承認番号:30300BZX00256000)

日本メドトロニック(株)は,基礎インスリン注入量を自動調整することで,インスリン治療を必要とする患者の生活の質(QOL)向上に寄与することが期待されるテクノロジー「ハイブリッドクローズドループ(HCL)」を搭載したインスリンポンプ「ミニメド™770Gシステム」の製造販売承認を2021年9月17日に取得し,2022年1月20日より販売を開始する。

ミニメド™770Gシステムは,日本初のハイブリッドクローズドループ  (Hybrid Closed Loop:以下,HCL)テクノロジーを搭載したインスリンポンプ。独自技術である「スマートガード™オートモード」 により,患者に合わせ,自動で高血糖と低血糖の両方を予防し,血糖値をコントロールし目標範囲に維持する手助けをするよう設計されている。

日本において,推定100万人以上の糖尿病患者がインスリン治療を行っていて,インスリンを使用している糖尿病患者の中には血糖コントロールに対する身体的・心理的負担1を日常的に強く感じている方が多くいる。患者はその時々の体調や運動量,心理状況,食事の量と質,女性であれば生理周期など様々な要因を考慮の上,インスリンの適切な量を自身で考え,投与し,高・低血糖の両方を防ぎながらコントロールすることを目指す。しかし,それは言葉で表すほど容易なことではない。

このミニメド™770Gシステムに搭載された「スマートガード™オートモード」は,患者の過去のインスリン注入履歴と,リアルタイムCGMから5分ごとに得られるセンサグルコース値に基づき,システムが注入する基礎インスリンを患者に適した量に自動で調整する。食事の際には患者自身による追加インスリン注入が必要になるが,糖質量と血糖値の入力をボタン操作で行うことで,システムが推奨するインスリン量を計算し,表示する。この機能により,血糖値が最適な目標範囲内にある時間(Time in Range:以下,TIR)を最大化するため,日中だけでなく夜間も含め24時間,血糖値を目標範囲内に保つためのサポートをすることが可能となり,その結果として,患者のQOLの向上が期待される。

さらにミニメド™770GシステムはBluetooth®技術を搭載しており,スマートフォン連携も可能となった。患者は「ミニメド™モバイルアプリ」を使用することで,リアルタイムCGMから得られるインスリンポンプデータの一部2を,インスリンポンプを取り出すことなく,アプリ3を利用しスマートフォンで確認できる 。また,「ケアリンク™コネクトアプリ」を介して家族や保護者など任意の相手にリアルタイムでデータを共有したり,センサグルコース値が目標範囲外の場合はアプリより通知を送信したりすることが可能である。さらに,これらのデータは,主治医とリアルタイムに共有することもできるため,診療時間の短縮やオンライン診療への活用が期待される。

東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科教授の西村理明氏は以下のように述べている。
「ミニメド™770Gシステムの登場によって,ついに日本でもHCLテクノロジーの効果を享受できるようになります。インスリン治療において血糖値を適切な範囲に維持することは患者さん・医療者の双方にとっての目標であり,大きな課題でした。
生活,仕事,体調などで必要なインスリン量は常に変化します。従って,医師の指示通りにインスリンを注射・注入していても,高・低血糖は様々な要因によって起こりえます。しかし,
今回のHCLの登場によって,インスリン治療は大きく飛躍するでしょう。機器が自動で基礎インスリン量の調整を行い,血糖値を目標範囲内に維持するサポートをしてくれるのです。」

日本メドトロニック(株)ダイアビーティスシニアダイレクター岡 光代氏は,「待ちに待った日本初のハイブリッドクローズドループを本邦で導入できることを大変喜ばしく思います。どんな人でも,血糖変動は2日と同じ日はなく,多くの患者さんが日々の血糖コントロールに苦労されてきました。このインスリンポンプの登場により ,患者さん が“インスリン治療に合わせた生活”から“生活に合わせたインスリン治療”への転換ができ,学業や仕事,遊びに対してより自由で,負担が少ない生活が送れるよう,弊社は患者さんとその患者さんを大切に想うすべての人のために,サポートを続けてまいります。」と述べている。

ミニメド™770Gシステムは米国をはじめ諸外国ではすでに販売され,インスリンポンプによる治療を必要とする多くの糖尿病患者に使用されている。

1 血糖に対しインスリンが不足し高血糖になると,口渇感,多尿,強い倦怠感などの症状をはじめ,急激に悪化すると呼吸困難や吐き気,嘔吐,腹痛,意識障害,昏睡といった糖尿病ケトアシドーシスと呼ばれる糖尿病急性合併症が起こる可能性がある。一方インスリン過多によって低血糖になると,冷や汗や動悸,強い空腹感,めまい,手指のふるえといった症状をはじめ,意識レベルが低下し昏睡にいたる場合もある。どちらも実際に起こった場合に身体的負担を感じるだけでなく,「起こるかもしれない」という不安感は患者にとって精神的に大きな負担となり,QOLを大きく低下させる要因になることがある。こうした負担感を軽減するためにも,インスリンを使用する糖尿病患者にとって血糖を適切な範囲に維持することは極めて重要である。
2 CGMデータ,インスリン注入状況,アラート・アラーム通知,24時間TIRをアプリで閲覧可能となる。対応機種・対応OSについては同社ホームページを参照
3 ミニメド™モバイルアプリ,ケアリンク™コネクトアプリ

【スマートガード™・スマートガード™オートモードとは】
ミニメド™770Gシステムに搭載された,基礎インスリンの自動調整・追加インスリンの注入量決定サポートを行うことで,高・低血糖を防ぎながらセンサグルコース値を目標範囲内に維持するためのHCLテクノロジーの機能名称。

【HCL(ハイブリッドクローズドループ)とは】
インスリンポンプと連動したCGMより5分ごとに得られるセンサグルコース値に基づき,システムが基礎インスリン量を自動調整し,高・低血糖を軽減,血糖値を目標範囲に維持するためのするテクノロジーで,ミニメド™770Gシステムでは「スマートガード™オートモード」として搭載されている。例えばセンサグルコース値が高値になることを予測すると基礎インスリンの注入量を増量,センサグルコース値が低値になることを予測するとインスリンの注入量を減量するなど,日中だけでなく夜間帯も含めた24時間,血糖値を目標範囲内に保つ(センサグルコース値を70 . 180 mg/dLに保つ)ためのサポートをする。
一方,食事を摂取した際に必要となる追加インスリンは,手動で血糖値と見積もった糖質量を手動入力し,患者自身が推奨インスリン量を注入する必要があるため,「人工すい臓」とも呼ばれる「クローズドループ」に対し,「ハイブリッドクローズドループ」と呼称される。

糖尿病治療におけるHCLの有用性,安全性 に関してはすでに海外で多くの研究がなされている。例えば思春期・成人・小児の1型糖尿病患者を対象にした二つの臨床試験4では,在宅でHCLを使用した結果,センサグルコース値が目標範囲である70mg/dl.180mg/dlにとどまる時間(Time in Range:TIR)は増加(改善)し,目標範囲を下回る時間(Time Below Range: TBR)や目標範囲を上回る時間(Time Above Rang: TAR)は減少(改善)したことが示された。両試験とも試験期間中にインスリン治療に伴う大きなリスクである重症低血糖および糖尿病性ケトアシドーシスの発生はなく,これによりHCLはセンサグルコース値をより長い時間目標範囲に維持し,HbA1cを低下させることが示されている。

4 Garg. et al. DIABETES TECHNOLOGY & THERAPEUTICS;19(3)155-163.2017.及びForlenza. et al. DIABETES TECHNOLOGY & THERAPEUTICS;21(1)11-19.2019.

【基礎インスリン・追加インスリンとは】    
生命活動を維持するために必要なホルモンの多くは血糖値を上昇させる作用があるため,血糖値を直接的に下げることができる唯一のホルモンであるインスリンは24時間絶えず分泌されている。このインスリンを「基礎インスリン」と呼ぶ。また,食事などによって血糖値が急激に上昇した時もインスリンは急峻に分泌され,このインスリンを「追加インスリン」と呼ぶ。

【TIR(Time in Range)とは】
CGMによる測定期間中, センサグルコース値がどの程度目標範囲内に入っているかを示す指標で,CGMの普及に伴い重視されるようになった。2019年ADA(American Diabetes Association)より,「CGM使用時の1型および2型糖尿病の治療目標としてTIRを70mg/dLから180mg/dLとし,HbA1c 7%の患者さんの場合は全体の70% の時間(CGMの測定地点)がこの域内に収まること」というガイドラインが出されたことで一層注目されるようになった。TIRが高いほど低血糖時間・高血糖時間・血糖変動が短小であり,TIRが1%改善すると,24時間のうちの1%,つまり14.4分,この目標範囲から逸脱する(下回るまたは上回る)時間が減少し,目標範囲に収まる時間が延びたことを意味する。なお,スマートガード™オートモードを用い,14歳から75歳を対象にした臨床試験ではTime in Range達成率は72.2%であった。5

従来広く用いられてきた糖尿病の指標であるHbA1cは有用だが,HbA1cのみでは日々の血糖コントロールには不十分6であるため,HbA1cやそのほかの指標と共に糖尿病治療に用いられる。なお,この目標範囲を下回った時間をTime Below Range,上回った場合をTime Above Rangeと呼ぶ。

5 Bergenstal RM, et al. JAMA. 2016;316(13):1407-1408.及びGarg SK, et al. Diabetes Technol Ther. 2017;19(3):155-163.
6 Battelino, et al . Diabetes Care 2019 Aug; 42(8): 1593-1603.

 

●問い合わせ先
日本メドトロニック(株)
https://www.medtronic.com