2020-12-17
富士フイルム(株)は,写真の現像プロセスで用いる銀塩増幅反応による高感度検出技術を応用した「銀増幅イムノクロマト法※1」により,迅速かつ簡便に検査が可能な新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗原検査キットについて,体外診断用医薬品として製造販売承認申請を独立行政法人医薬品医療機器総合機構に行った。
また,同社は,本検査キットの生産体制を構築するため,同社診断薬の製造を担う,「FUJIFILM YUWA MEDICAL PRODUCTS VIETNAM COMPANY LIMITED.(本社:ベトナム ビンズオン省,以下FUJIFILM YUWA)」に設備投資を行う。なお,本設備投資は,独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)が公募する「海外サプライチェーン多元化等支援事業(第三回)」に採択された。
抗原検査は,迅速な検査により,その場で結果を確認できるというメリットがあるが,PCR検査に比べて感度が低く,高感度化が求められている。また,迅速・簡便に結果が得られることから,病院のみならず,経済活動の再開に向けて空港やイベント会場などでの利用も国内外で検討が進められており,そのニーズをまかなう抗原検査キットの安定供給が望まれている。
富士フイルムは,今年10月より公立大学法人横浜市立大学(神奈川県横浜市)と共同で,同社独自の高感度検出技術である銀増幅イムノクロマト法を用いた迅速かつ簡便な検査が可能な新型コロナウイルス抗原検査キットの開発を進め,製造販売承認の申請を行った。本検査キットは,同社神奈川工場足柄サイトでの生産を予定しているが,今後グローバルに展開することを踏まえ,ベトナムのFUJIFILM YUWAにて来年度から順次設備を増強し,本検査キットの安定的な生産体制を構築する。
【FUJIFILM YUWAについて】
富士フイルムと(株)ユウワが,今年5月にユウワのベトナム法人であるYUWA VIETNAM Co.,Ltd内に設立した,同社診断薬製造のための合弁会社。今年11月から本格稼働し,富士フイルムの臨床化学分析装置「富士ドライケム」シリーズ用の欧米市場向け試薬の製造を開始している。今回,新たに新型コロナウイルス抗原検査キットの生産体制を整えるため,富士フイルムが設備投資を決定した。
企業名
FUJIFILM YUWA MEDICAL PRODUCTS VIETNAM COMPANY LIMITED
所在地
ベトナム ビンズオン省 トゥーザウモット市
設立
2020年5月(稼働開始は2020年11月)
出資比率
富士フイルム 51%,ユウワ 49%
富士フイルムグループは,これまでPCR検査用試薬や,全自動で簡便・迅速なPCR検査が可能な全自動遺伝子解析装置「ミュータスワコー g1」※2用の検査試薬を供給し,新型コロナウイルス検査の迅速化に貢献してきた。今後も医療現場のニーズに応える幅広い製品・サービスの提供を通じて,新型コロナウイルス検査の効率化と医療および生活の質の向上に貢献していく。
※1 イムノクロマト方式とは,試薬に滴下した検体(鼻腔ぬぐい液など)中に被検物質(ウイルス等)が存在すると,試薬中の標識抗体と結合して抗原抗体複合体が生成され,この複合体があらかじめ検出ライン上に線状に塗布された抗体に捕捉されると,陽性(抗原あり)を示す色付きのラインが表示される検査方式のこと。迅速・簡便に結果を得られることから,処置を急ぐ必要がある感染症の検査に多用されている。
※2 医療機器届出番号 27B3X00024000016 製造販売業者 富士フイルム和光純薬株式会社
【今回開発した抗原検査キットに応用した銀増幅技術】
●問い合わせ先
富士フイルム(株)
メディカルシステム事業部
TEL 03-6271-1375