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2020-3-5

（株）JMDCの子会社で，遠隔画像診断支援サービスを提供している（株）ドクターネット（以下「同社」）は，Infervision （Beijing）Co., Ltd.（以下「Infervision」）及び同社アジア太平洋支社である（株）Infervision.Japan（以下「Infervision.Japan」）と，新型コロナウイルス感染症（以下「新型肺炎」）に係る画像診断の品質向上を目的とした検討を開始し，2020年3月4日にInfervision.Japanと同社との間で共同プロジェクト（以下「本共同プロジェクト」）に関わる契約を締結した。

●本共同プロジェクトについて

○背景

中華人民共和国湖北省武漢市において，2019年12月に新型肺炎の発生が複数報告されて以来，世界各地で患者発生報告が続いている。日本国内においても，2月中旬以降，各地で感染経路が特定できない感染事例が報告され，感染者数の大幅な増加が懸念されている。
同社の遠隔画像診断支援サービス（以下「同社サービス」）は，全国約900の医療機関に利用されており，症例数は1日6,000症例に及ぶ。昨今の状況を受け，一部の契約医療機関から，2月中旬以降，新型肺炎疑いの症例に係る同社サービスの依頼を受けている。さらに，2月25日に政府が発表した「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」では，今後，患者数が大幅に増加した場合は一般医療機関でも患者を受け入れることが盛り込まれており，同様の依頼をする医療機関数の大幅な増加が見込まれている。
そのような状況に対応するべく，同社は，中国の医用画像AIエンジン開発会社であるInfervision及び同社のアジア太平洋支社であるInfervision.Japanと共同で，新型肺炎に係る画像診断の品質向上を目的とした取組みを開始した。Infervisionは，中国において，2019年12月から武漢同済医院など複数の医療機関と連携し，新型肺炎に係る画像診断において，AIエンジンの実験的な活用に取り組んでいる。

○取組概要（1）

新型肺炎画像の診断支援エンジン実用化に向けた取組み
新型肺炎の確定診断にはPCR検査が必要だが，検査には現時点では最短でも6時間ほどかかることや検査機器数に限りがあることから，検査可能数が限定的であるという課題がある。そのため，新型肺炎の患者数が急増する武漢市では，胸部CT画像診断によるスクリーニングが行われている。その際に，武漢同済医院など複数の医療機関において，放射線科医の画像診断を効率化するソフトウェアとして実験的に利用されているのが，InfervisionのAIエンジン（以下「本AIエンジン」）である。
本AIエンジンは，Infervisionがもともと開発していた胸部CT画像診断支援エンジンが基となっている。このAIエンジンに，2019年12月以降，武漢同済病院など複数の医療機関の，数千症例の新型肺炎症例を学習させ，すりガラス状陰影や湿潤影などの肺炎の画像診断機能が試験的に追加された。そして，武漢同済病院でテスト導入をした後，新しいAIエンジンとしてバージョンアップされている。
ただし，現時点では開発されてから日が浅いAIエンジンであり，中国における医療機器の行政管理を行う国家薬品監督管理局からの正式な承認を受けるためには，まだ時間がかかる見込み。また，日本における実用化に向けても検証・薬事申請が必要。そこで，同社は，Infervision.Japanと協力し，本AIエンジンの実用化に向けた検証スピードを加速するため，本AIエンジンの検証を同社サービスに関連して行うことを決定した。
具体的には，医療機関より同社に依頼される症例のうち，新型肺炎疑いのものについては，放射線診断専門医が画像診断レポートを作成した後，同社査読センターによる本AIエンジンのテスト検証を行う。仮に，放射線診断専門医の診断と，本AIエンジンによる結果に差異があった場合は，同社品質保証室の常勤放射線診断専門医により検証を行い，診断を行った放射線診断専門医にもフィードバックを行うこととする。

○取組概要（2）

日本における新型肺炎の画像診断知見向上に向けた取組み
同社サービスには約700名の放射線診断専門医が登録しているところ，この人数は日本の放射線診断専門医約6000名のうちの10%強に相当する。一方で，日本国内では新型肺炎の症例数が現時点では限定的であるため，新型肺炎の画像診断経験のある放射線診断専門医の数はまだ多くないのが現状。
このような状況に対応するため，同社は，同社の契約放射線診断専門医専用サイトにおいて，Infervisionが作成した中国における新型肺炎症例集を，Infervisionから特別に公開許可を得たうえで公開することを決定した。
同社としては，中国における新型肺炎の画像診断知見を，同社契約放射線診断専門医に共有することで，今後同社で増加が想定される新型肺炎疑い画像の画像診断精度向上に寄与できればと考えている。また，同社契約放射線診断専門医の多くは，同社サービス以外でも画像診断を行っているので，同社サービス以外での新型肺炎画像診断に関しても，その精度向上の一助になることを期待している。

■遠隔画像診断支援サービスについて
日本は他の先進国と比較して，対人口比での医用画像撮影装置数は突出して多い状況だが，対人口比での放射線診断専門医数は最低水準である。そのため，大半の医療機関では常勤の放射線診断専門医の確保が困難な状況にある一方，放射線診断専門医の過剰労働という問題が存在している。この点，医用画像のデジタル化が普及したことに伴い，希少な放射線診断専門医と医療機関を遠隔でつなぐマッチングサービスとして誕生したのが遠隔画像診断支援サービスであり，約20年前から普及・浸透しているもの。遠隔画像診断サービスは，放射線診断専門医の人手不足・過剰労働という上述の問題解決，ひいては画像診断の質と安全の担保に寄与しており，その結果，現在では10年前の2倍以上にあたる年間約550万症例が遠隔診断されている状況である。