2019-10-17
順天堂大学とパラマウントベッド(株)は,2019年5月より3か年の計画で,共同研究講座「循環器遠隔管理学講座」を開設し,睡眠計測センサー「眠り SCAN」(※1)を用いた在宅医療における遠隔モニタリングについて,臨床的有用性の検証を開始した。本講座では,病院入院中から在宅医療における「眠り SCAN」による生体情報の取得および適時に適切な在宅医療を提供する遠隔モニタリングシステムの構築を進めていく。
●背景
超高齢社会となった日本では,地方やへき地のみならず,都市部においても外来通院が困難な虚弱高齢者や,高度医療を要するものの頻回な外来通院が困難な高齢者が急増すると予測され,急性期治療の進歩と長期予後の改善で,特に患者の高齢化が進む循環器疾患(心不全)においては大きな問題になりつつある。そのような状況の中,厚生労働省が構築を進めている地域包括ケアシステムの柱として「在宅医療」が注目されている。在宅における遠隔モニタリングシステムを用いた日々の体調確認と予後の悪化・増悪の早期検出により,適時に適切な在宅医療を提供するシステムの構築が望まれている。
●内容
本講座では,循環器疾患を有する虚弱高齢者,高度医療を要する高齢者に対し,入院中および退院後の在宅療養における「眠り SCAN」を用いた生体情報のモニタリングにより,総合病院と在宅医療を担うクリニックとの連携システムを構築していく。
「眠り SCAN」はマットレスの下に設置することで睡眠・覚醒判定,呼吸数,心拍数等を連続的に測定できる非侵襲・非装着なシート型体振動計(一般医療機器)。入院中・在宅療養中ともに使用可能であり,介護施設を中心とした多数の導入実績がある。通信端末を使用することで,遠隔モニタリングデバイスとして利用することが可能である。「眠り SCAN」の,入院中から在宅医療までシームレスに生体情報をモニタリングできるデバイスとしての臨床的有用性について検証を行う。
●今後の展開
循環器疾患を有する高齢者は増加傾向にあり,医療費増加の大きな原因となっている。なかでも心不全は増悪により再入院を繰り返すほど予後が悪化するため,増悪・再入院の悪循環を未然に防ぐことができれば医療費の削減だけでなく,QOL(Quality of Life:生活の質)や予後の改善が期待できる。
睡眠研究を背景とし,低コストの単一機器で複数の生体情報をモニターできるシステムを開発する臨床研究を行っている研究グループは全国でも非常に少なく,本講座を通してより良い在宅医療の実現を目指す。
<循環器遠隔管理学講座からのコメント>
本講座では,循環器疾患,特に心不全の予防における「早期発見・診断・治療」「悪化防止」などに対して,遠隔モニタリングが有用であるか否かを検証し,在宅医療を含めた地域医療において利活用できるような研究を目指していきます。
共同研究で得られた成果は,パラマウントベッドとともに実用化を目指し,社会に還元していく。
左)循環器遠隔管理学講座 代表者,順天堂大学大学院医学研究科 循環器内科学 特任教授 代田 浩之
右)循環器遠隔管理学講座 代表者,順天堂大学大学院医学研究科 循環器内科学 准教授 葛西 隆敏
※1 「眠り SCAN」について
「眠り SCAN」は,睡眠研究や医療介護施設の臨床で使用されている。マットレスや布団の下に設置することで,睡眠,覚醒,起上り,離床,呼吸数・心拍数などの情報を遠隔でもリアルタイムで確認でき,蓄積されたデータを睡眠日誌,呼吸日誌,心拍日誌等の形式で確認・分析することが可能。
●問い合わせ先
学校法人 順天堂
http://www.juntendo.ac.jp/