2019-5-31
エレクタ(株)は,1.5テスラMRIと7MVのリニアックを組み合わせるという,これまでにない構造の放射線治療システムであるElekta Unity MRリニアックシステム(以下,Elekta Unity)の製造販売承認を取得した。Elekta Unityによって,これまで以上に高精度で患者さんにやさしい放射線治療の可能性がひろがる。
放射線治療は近年飛躍的に進化したが,さらなる進化のためには解決すべき課題が残っている。より高精度な治療を実現するために,腫瘍や周辺の重要臓器の位置・形状・動きをより正確に把握することや,治療ビームの照射中に患部の状況をリアルタイムに把握することが,治療システムに求められていた。
画像診断や放射線治療計画に使われているMRI画像であれば,CT画像ではコントラストがつきにくい軟組織についても,正確な位置や形状の情報を得ることができる。さらに,毎回の治療直前および照射中の重要臓器の位置も把握して,それを避けながら腫瘍にのみ照射することができる。
しかし,磁場を発生するMRIと放射線を照射するリニアックの一体化は,技術的に大変困難であった。エレクタはそのハードルを乗り越えるべく,オランダのユトレヒト大学医療センターの長年にわたる研究成果に基づき,MRIとリニアックが一体化された次世代の放射線治療ソリューションであるElekta Unityを開発した。現在,世界中の9つの医療施設で既に臨床に適用されている。
エレクタ(株)の代表取締役であるチャールズ・シャーネン氏は,次のように述べている。
「Elekta Unityの導入により,日本の医療施設は先進の高精度放射線治療を提供できるようになります。何よりもまず,百万人を超える日本のがん患者に,この革新的な技術がより良い治療結果をもたらすことを期待しています。」
●Elekta Unity開発の背景
20年近く前に,オランダのユトレヒト大学医療センターのLagendijk教授によってMRIとリニアックを一体化する放射線治療装置の研究開発が始まり,エレクタとフィリップスが参画した。開発にあたっては,フィリップスの1.5テスラMRIとエレクタの先進のリニアックが採用された。それまでの常識ではMRIとリニアックを隣接して使用することは不可能で,実現のためには数多くの課題があった。MRIから発生する静磁場はリニアックの加速管への電子の入射を妨げ,一方で,リニアック内部の磁性体はMRIの静磁場均一度を劣化させてしまう。また,X線ビームを人体に照射する際に発生する2次電子は静磁場により回転力を受けるため,計画通りの照射を行うにはその影響を考慮する必要もあった。そうした物理的な課題に加え,MRI画像ベースで治療計画を作成するためのシステム開発にも非常に長い時間と大きな労力が必要であった。
2012年にはコンソーシアムが組織されて,世界を代表する7つの医療施設による臓器ごとの臨床研究が始まり,以後,年2回のコンソーシアム会議において精力的な議論が続けられている。MRI画像ベースの放射線治療には,従来不可能であった治療を実現できるという臨床的に大きな意義・有用性が期待できるため,開発への意欲と熱意が長年にわたって保たれたと言える。
●Elekta Unityによる(MRI画像を利用した)放射線治療のメリット
Elekta Unityは,画像診断で広く使用されている高画質な1.5テスラMRIと,このプロジェクトのために一から作り上げられた高精度リニアックを,高度なソフトウェアが一元管理する放射線治療ソリューション。
現在,MRI画像は治療前の計画作成時や治療後の患部のフォローアップにCT画像とともに使用されているが,治療直前および照射中に取得できるのはCT画像のみである。MRI画像を治療直前および照射中にも確認できることのメリットとして,下記のような点が挙げられる。
- リアルタイムで腫瘍の位置や輪郭をより正確に把握して,その状態に適応させた照射を行うことで,腫瘍を最大限制御しつつ近接する健常組織や重要臓器への影響を極力抑えることができる
- 照射中の腫瘍や重要臓器の移動・変形を確認して,必要に応じて照射を中断できる
- 呼吸性移動をともなう軟部組織も確認できるため,照射時に息を止めたり腫瘍位置がわかるようにマーカーを埋め込んだりする必要がなくなり,患者さんの負担を軽減できる
- 治療時の画像取得のための追加被ばくを避けることができる
- 照射中の画像を蓄積することにより,治療効果を検証することができる
●問い合わせ先
エレクタ(株)オンコロジー事業部
TEL 03-6722-3808
E-Mail oncology-japan@elekta.com
http://www.elekta.co.jp/