2018-3-30
東芝エネルギーシステムズ(株)は韓国の大手医療企業DKメディカルソリューションとコンソーシアムを組み,3月29日,大韓民国(以下,韓国)の延世(ヨンセイ)大学校医療院(Yonsei University Health System)から重粒子線がん治療装置を受注した。同社として,海外で初めての受注となる。
今回受注した装置は,固定ポート式の治療室が1室と回転ガントリー式の治療室が2室で構成される重粒子線がん治療装置。先進的な高速スキャニング照射技術と超伝導技術を取り入れた回転ガントリー式の治療室を2室備えた世界初の装置となる。2022年に治療の開始が予定されている。
重粒子線がん治療は,炭素イオンを光の速さの70%まで加速して炭素イオン線(=重粒子線)とし,「がん病巣」に対して体の外から照射する放射線治療である。がん病巣の位置,大きさ,形状に合わせて重粒子線をピンポイントで集中させることができるため,周囲の正常な細胞を傷つけにくく,他の放射線治療と比べて「がん病巣」を殺傷する能力が高いという特長がある。患者の身体的負担が少なく早期の社会復帰を可能とする治療方法。
また,「回転ガントリー」は,回転体を回すことでどの角度からでも重粒子線をピンポイントに照射できるので,治療台を傾ける必要がない。また,脊髄や神経などの重要器官を避けて細かく角度を調節し,多方向から照射することで,がん病巣への線量をさらに集中することが可能。治療時の患者の負担を軽減するだけでなく,治療後の障害や副作用のさらなる低減が期待できる。今回,回転ガントリー2室の治療装置を導入することにより,効率的に治療が行えるようになり,患者の待ち時間の短縮が可能となる。
延世大学校医療院は,1885年に韓国最初の近代化病院として設立された。韓国内でも有数の規模を誇り,今日まで最先端の医療技術を取り入れ続けている。付設する延世がん病院は,1日9,000人を超える外来患者,放射線腫瘍科は350人以上の患者を治療している。
同社は,重粒子線がん治療装置を国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構/放射線医学総合研究所(以下,放医研)とともに開発し,2016年に放医研向けにて世界で初めて回転ガントリーに超伝導電磁石を採用することで小型化・軽量化を実現した。これらの国内での実績や同社の最先端の技術力が評価され,今回の受注に至った。
同社は,今後も重粒子線がん治療装置の普及を目指し,国内だけでなく海外でも積極的に受注活動を展開し,質の高いがん治療の実現に貢献していく。
●問い合わせ先
東芝エネルギーシステムズ(株)
https://www.toshiba-energy.com/contact/index_j.htm