2017-11-6
MitraClip®NTシステム
アボットは,心臓の僧帽弁が完全に閉じないために心臓の血液が逆流する進行性の心臓病である僧帽弁閉鎖不全症(MR)の治療を目的としたMitraClip®NTシステム(販売名:MitraClip NTシステム,医療機器承認番号:22900BZX00358000)が,厚生労働省より製造販売承認されたことを発表した。
MRは高齢者に多い疾患で,高齢化に伴い増加する傾向があり[i],状態が悪化すると心不全等を引き起こし,命に関わる危険性がある[ii], [iii], [iv]。
「MitraClip®NTシステムは,これまで標準的治療である外科的手術が出来なかった多くの重度のMR患者さんに,新たな治療選択肢を提供することとなります。また,本システムの日本導入により,限られた治療しか受けることができなかった多くの患者さんの症状が緩和され,より良い生活を送れるようなることを期待しています」と,慶應義塾大学病院の循環器内科講師で,日本で実施された臨床試験(AVJ-514治験)の治験調整医師を務めた林田健太郎医師は述べている。
これまで,日本におけるMR治療は,開胸手術による外科的手術や薬物療法が標準的治療であったが,外科的手術は高齢や併存疾患などが原因で困難であったり,また薬物療法は,対症的治療として症状をコントロールするためのものであった。
アボットのストラクチュラルハート部門バイスプレジデントのマイケル・デール氏は「私たちは,革新的な技術を提供することにより,構造的心疾患に苦しむ患者さんの健康を取り戻し,生活の質を向上させることを使命に掲げています。革新的なMitraClip®NTシステムが承認されたことで,多くの日本の患者さんに,治療の選択肢を提供し,そしてより良い生活の実現に貢献できると考えています」と述べている。
MitraClip®NTシステムは,カテーテルベースの低侵襲なデバイスで,脚の付け根にある大腿静脈血管から挿入され,心臓へ送達される。カテーテル先端にあるクリップで僧帽弁の弁尖を留め,逆流を軽減することにより重度のMR症状を改善し,患者の生活の質(QOL)の改善が期待される[v]。
MitraClip®システムは,2008年に欧州でCEマークを取得後,2013年に米国でFDA承認を取得している。これまでに,50カ国以上で5 万人以上の患者がMitraClip®システムを用いた治療を受けている。日本においては,重度の器質性僧帽弁閉鎖不全症(DMR)および機能性僧帽弁閉鎖不全症(FMR)が適応となる。
AVJ-514治験について
AVJ-514治験では,国内6施設で重度のDMRまたはFMRを有し,外科的手術が困難と判断された30名の患者が登録された。今年3月に開催された第81回日本循環器学会学術集会のLate Breakingで,本治験の手技後30日経過観察の結果が報告された。86.7%の患者のMR重症度が2+以下,96.7%の患者の心不全重症度NYHAはI/IIであり,主要有害事象(死亡,脳卒中,心筋梗塞,腎不全,非待機的心血管外科手術)は発生しなかった。
器質性僧帽弁閉鎖不全症および機能性僧帽弁閉鎖不全症について
器質性僧帽弁閉鎖不全症(DMR)は,弁尖や弁輪,腱索等の弁構造異常によりもたらされ,機能性僧帽弁閉鎖不全症(FMR)は,左心室が拡張し,僧帽弁の接合が不完全になることにより逆流が生じる。
[i] Nkomo VT, Gardin JM, Skelton TN, Gottdiener JS, Scott CG, Enriquez-Sarano M. Burden of valvular heart diseases: a population-based study. Lancet. 2006 Sep 16;368(9540):1005-11. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16980116
[ii] Healthline.com. Mitral Valve Disease. 2016. Accessed September 7, 2017 at: http://www.healthline.com/health/mitral-valve-disease .
[iii] Patient Info. Mitral Regurgitation. 2017. Accessed September 7, 2017 at: https://patient.info/health/mitral-regurgitation-leaflet .
[iv] National Heart, Lung and Blood Institute. What is Heart Valve Disease? 2015. Accessed September 7, 2017 at: https://www.nhlbi.nih.gov/health/health-topics/topics/hvd .
[v] http://www.abbottvascular.com/docs/ifu/structural_heart/eIFU_MitraClip.pdf
●問い合わせ先
アボット ジャパン(株)
http://www.abbott.co.jp/