2017-2-6
(株)日立システムズとPST(株)は,未病音声分析技術を用いたクラウド型のヘルスケアサービスの提供に向けて協業した。本協業に基づき,日立システムズは,声から心の状態の変化を捉え,病気の予防や未病の早期発見に寄与する「音声こころ分析サービス」を開発した。
サービスの提供開始に先立ち,神奈川県が2017年2月下旬から試行的に導入する。日立システムズは,本結果を踏まえて,2017年6月にサービス提供を開始する予定。
近年,生活習慣病やメンタル疾患の増加,高齢化などにより,医療・健康を取り巻く環境は大きく変化し,健康管理は社会的な課題となっている。中でもうつ病などの気分障害(感情障害)の総患者数は約112万人*1に達するなど,15年前と比較して2.5倍と著しく増加しており,休職などによる経済的損失も生み出している。
企業や団体においては,健康診断やストレスチェックなどを通じて,メンタル疾患の可能性がある従業員の早期発見に努めている。しかし,自記式によるストレスチェックや問診・面談だけでは曖昧な回答や実態と異なる回答をすることも可能であることから,本人の意図に左右されずに手軽に心の状態をチェックでき,メンタル疾患の予防や早期発見に寄与する仕組みが求められている。
*1 2015年12月厚生労働省発表
こうした背景から,日立システムズは「音声こころ分析サービス」を開発した。本サービスは,スマートフォンや固定電話,携帯電話などから録音した音声データを分析して心の状態を見える化し,利用者にメンタル疾患の自覚と予防を促す。さらに,管理者向けの充実した機能によって,メンタル疾患者およびその予兆が見られる利用者の早期発見を支援し,社会課題となっているメンタルヘルス対策に寄与することが期待される。
なお,本サービスの分析にはPSTが開発した未病音声分析技術MIMOSYS(ミモシス:Mind Monitoring System)を利用。MIMOSYSは声帯の変化(不随意反応)を分析して心の状態を「見える化」する技術で,東京大学大学院医学系研究科 音声病態分析学 特任准教授の徳野先生によって医学的に検証されており,日常の声から客観的かつ手軽に心の状態をチェックすることができる。
●「音声こころ分析サービス」の利用環境イメージ
●スマートフォン画面イメージ(利用者向け)
●分析結果画面イメージ(利用者向け)
●神奈川県での試行導入について
期間:2017年2月27日~3月24日(予定)
対象:神奈川県職員100名(希望者)
目的:MIMOSYS(「ME-BYO BRAND*2」認定)を用いたサービスの提供開始に先立ち試行的に導入する。その結果に基づき,次年度以降,職員への導入を検討するほか,県内のCHO企業*3へ試行結果等を展開することにより本サービスの導入を推進し,健康経営につなげる。
内容:対象職員がスマートフォンのアプリケーションを使用して音声を登録し,クラウド側で分析を実施。分析結果から日々の心の状態の変化を認識することにより,ストレスの自己管理につなげる。また,終了後のアンケートにより,本サービスの使いやすさなどを検証する。
*2 ME-BYO BRAND:神奈川県の未病産業関連の優れた商品・サービスを認定する制度。未病産業の魅力を広め,産業化の牽引を図ることを目的としている。神奈川県では,超高齢社会の到来に備え,「未病の改善」と「最先端医療・最新技術の追求」という2つのアプローチを融合する「ヘルスケア・ニューフロンティア」の取り組みを進めることにより,誰もが健康で長生きできる社会をめざしている。
*3 CHO企業:組織内にCHO(Chief Health Officer)などの責任者や担当部署を定めている企業や団体。神奈川県では企業や団体が,組織内にCHOなどの責任者や担当部署を定めて,従業員やその家族の健康づくりを企業経営の一部として位置づけ,いわゆる「健康経営」を進める取り組み「CHO構想」を進めている。
●「音声こころ分析サービス」のWebサイト
http://www.hitachi-systems.com/sp/mimosys/
●MIMOSYSとは
PSTが開発した,声帯の変化(不随意反応)を解析して心の状態を「見える化」する未病音声分析技術。言葉,国籍,性別,年齢,個人差の影響を受けることなく,音声から情動,ストレス,抑うつ状態をリアルタイムに認識することができる。日立システムズは,未病音声分析技術の社会実装をめざす東大COIとPSTとの産学連携により,クラウドでのサービス化を進めている。
MIMOSYSの原理
(1)音声の変化から心の状態が分かる
感情をつかさどる脳の大脳辺縁系(へんえんけい)は,神経で声帯と直接つながっているため,脳がストレスを感じると,声帯にシグナルが送られる。例えば,リラックスした状態では声帯は緩み声の周波数は低く,また緊張した状態では声帯は固くなり周波数が高くなる。このように心の状態は自分ではコントロールできない声帯の変化(不随意反応)として表れるため,その変化を解析して,心の状態を「見える化」する。
(2)分析に必要な音声
必要発話数:6発話*4以上(概ね20秒程度/回)
話す内容:どのような内容でも可(自然発話,定型文の読み上げなど)
音質の前提:11.025kHz, 16bit, mono(8kHz, 8bit, monoでも解析実績あり)
*4 発話:「1発話」は一呼吸の中で発声される,息継ぎと息継ぎの間の声。
●東大COIについて
文部科学省が「10年後の日本がめざすべき姿」の実現に向けて支援する,東京大学「自分で守る健康社会:Self-Managing Healthy Society」COI拠点(「センター・オブ・イノベーションプログラム(The Center of Innovation Program)」)。重点テーマのひとつとして「音声感情・病態分析による予防・未病ノベーション」を掲げ,産学連携で研究開発から社会実装し,国民一人ひとりが健康維持を“自分ごと化”していくことをめざしている。
詳細:http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/slcas-coi/
●問い合わせ先
(株)日立システムズ
商品問い合わせ窓口
TEL 0120-346-401(受付時間:9時~17時/土・日・祝日は除く)
問い合わせWebフォーム:
https://www.hitachi-systems.com/d-inquiry/contact.cgi