2016-7-21
※2016年7月12日イスラエル発プレスリリース抄訳
MRガイド下集束超音波治療(MRgFUS)のリーディング企業であるINSIGHTEC Ltd.(以下「インサイテック」)は7月21日,米国食品医薬品局(FDA)が同社の非侵襲的脳神経外科治療機器「Exablate Neuro(エクサブレート・ニューロ)」を,薬物療法で効果が得られない本態性振戦(ほんたいせいしんせん)患者に対する治療法として承認したことを発表した。
Exablate Neuroは,頭部を開頭,または装置を埋め込むことなく,集束超音波を使い脳内の奥深くにある患部組織に正確に標的を定めて焼灼し治療する。治療はMRIガイド下でリアルタイムにモニタリングをしながら行い,治療後すぐに,ふるえに改善がみられる。外来で治療が可能で,感染や出血を始めとした,さまざまな外科手術に伴う合併症のリスクを抑えられる。麻酔は使用せず,一回の治療で効果が得られ,患者はすぐに日常生活に復帰することができる。
本態性振戦は,米国だけでも500万人以上,全世界ではさらに何百万人もが発症している,最も一般的な運動障害。症状としては手の震えが最もよく知られているが,頭や腕,声,足,胴部にふるえが起こる場合もある。本態性振戦に悩む患者は,日常の基本的な動作が困難となり,生活の質(QOL)に影響が生じてしまう。
今回のFDAの承認は,MRgFUSによる非侵襲的視床切除術の安全性および有効性を評価するために行われた二重盲検無作為化多施設共同臨床試験から得た臨床データに基づくもの。この臨床試験には合計76名の患者が参加し,患者は無作為にExablate Neuroによる治療群(56名)と,全く同様の手順で超音波エネルギーを用いないプラセボ治療群(20名)とに割り付けられた。
試験では,Exablate Neuro による治療を受けた患者群は,治療前の振戦度合い及び運動機能の評価スコアが,治療後3カ月時点で50%近い改善が見られた。一方,プラセボ治療群群の患者は全く改善が見られず,また一部の患者は若干症状が悪化する結果であった。さらに,治療後1年間のフォローでは,Exablate Neuroの治療を受けた患者はベースラインと比較してこれらのスコアは40%の改善を維持したことが確認された。
本臨床試験に参加した東京女子医科大学医学部 脳神経外科教授の平孝臣臨床氏は次のようにコメントしている。「この試験結果は,Exablate Neuroが本態性振戦の治療において安全かつ有効であることを示しています。患者さんにとってはふるえの症状を最も効果的に制御できる方法を見つけることが何より重要です。本臨床試験で治療した患者さんは治療後すぐにふるえを抑えられるようになり,普通に食事を取ったり文字を書いたりという日常の基本的な動作を取り戻すことができました。」
なお,エクサブレートは今年初めにカナダ保健省からも本態性振戦への適用が承認された。
トロント大学教授兼トロント・ウェスタン病院の神経外科長で本臨床試験の研究者であるアンドレス・ロザーノ博士は,「今回新たに当治療機器がFDAの承認を得たことによって,本態性振戦の患者さんに対し,外科手術に伴う合併症のない新たな治療の選択肢を提供できるようになります。また今後さらに脳神経外科の幅広い範囲の治療に適用できる可能性も出てきます」と述べている。
インサイテックのCEO兼取締役会長であるモーリス・フェレ氏は,「当社は自信を持って非侵襲的な治療における転換点に到達したと言えます。集束超音波は体内の奥深くにある標的組織を正確に切除することができます。Exablateシリーズを拡張するExablate Neuroは,脳神経外科治療に新たな時代をもたらすものと言えるでしょう」と述べている。
また,Exablate Neuroは本態性振戦,振戦優位のパーキンソン病,神経障害性疼痛の治療機器としてCEマークを取得している。
米国内のExablate治療センターの詳細については,下記参照。
http://www.insightec.com/us/clinical/neurosurgery/#treatmentCenters
●問い合わせ先
広報代理: クレアブ(株)今井・渡辺・寒田
TEL 03-5404-0640
Email: InSightec@kreab.com