2016-6-29
SMP55の造形物(右:元形状)
(左:軟化・変形させた形状)
キョーラク(株)と(株)SMPテクノロジーズは,共同開発した人体に優しく医療・教育分野で使用可能な形状記憶フィラメント『SMP55』(6,600円 税込/送料・手数料込)を,2016年6月29日(水)にキョーラクの3Dプリンターマテリアルブランド「フィラメント工房®」より発売する。
形状記憶フィラメント『SMP55』
https://www.krk.co.jp/filament/product/smp.html
動画URL
https://youtu.be/yrgYoqFqOpc
■SMP開発の経緯と特徴
3Dプリンターブームのなか,特にFDM(熱溶解積層)方式※は本体価格が最も安く,操作や造形物の後処理が簡単なことから,教育現場や医療現場への導入に向けて注目されている。しかし,使用できる材料は硬い樹脂がほとんどで肌に触れる造形物には適さず,また造形後に形を変えることができないために3Dデータを精度良く作成するスキルが求められるなど,使用にあたってのハードルもあった。
フィラメント工房®の「SMP55」は,温めることで軟化して容易に形状を変形できると共に,変形後に再び温めることで元形状に回帰する性質を持つ特殊フィラメント。
SMPには形状記憶特性だけではなく生態適合性があり人体に優しい素材である。
「メガネ」「ギプス」「注射針」「下着」など直接肌に触れる製品に多く採用されている。
※FDM(Fused Deposition Modeling/熱溶解積層)方式とは,熱でプラスチックを溶かし一筆書きのように積層して立体を作る方式。
SMPフィラメントを3Dプリンターで使用することで下記の性質を発揮する。
(1)3Dプリンターで造形された形状を記憶する【元形状】
(2)お湯などでガラス転移点以上に温めると,やわらかくなって形を変えることができる(冷やすとそのまま固定)【変形】
(3)もう一度お湯で温めることで,造形された元の形状に戻る【変形】→【元形状】
今回発売するSMP55はガラス転移点55℃で,お湯またはドライヤーによる加熱で軟化と共に形状記憶特性を発現する。
■SMPによる3Dプリンター用途の広がり:造形後に形状のカスタマイズが可能に
SMPフィラメントを用いれば,3Dプリント後の形状をカスタマイズして個人個人にフィットさせることや,3Dデータが作れなくても1つのデータから複数の形状を作り出すことが可能になる。この特徴によって将来的に病院・介護施設や学校などの教育現場などに3Dプリンターの導入が進んだ際,3Dデータ作成技術のない担当者や生徒が3Dプリンターを扱うハードルを下げ,3Dプリント文化の普及にも繋がると期待している。これまで3Dスキャンなどからオーダーメイド品を作っていた義手・義足などへの活用をはじめ,医療分野での使用にも期待が集まっている。慶應義塾大学では,すでに医療・看護・介護の現場での実用化に向けた検討が始まっている。
<シートギプス>
個々人に合わせ,その場で調節し,身体にフィットさせることができるギプス。
シート形状での出力後,再形成できるSMPの利点を活かしたコンセプトモデル。
協力:「FAB×看護」 http://www.fabnurse.org/
慶應義塾大学環境情報学部 田中 浩也研究室
慶應義塾大学看護医療学部 宮川 祥子研究室
<材料紹介>
http://www2.smptechno.com/tech/pdf/%5B2016%5DSMP%20Tech%20E-Catalogue%20Japanese.pdf
■形状記憶フィラメント『SMP55』詳細
製品名:SMP55
素材:形状記憶ポリウレタン
サイズ:100m(約300g)
価格:6,600円(税込/送料・手数料込)
販売ルート:各3DプリンターメーカーHP,SMPテクノロジーズHP,キョーラクHP
Amazon.co.jp: https://www.amazon.co.jp/gp/product/B01G4OQXII
造形条件:SMPは3Dプリンターでの使用に最適な特徴を持っており,一般的なFDMタイプの3Dプリンターで使用可能。
・造形温度はPLAと同程度の約200℃
・層の融着が非常に強力
・収縮はほとんどない(PLA同等)
・造形時に臭いが発生しない
・造形面のヒートベッドは不必要。ガラス,マスキングテープ,ビルドタックに良好に定着
・射出成形や押出成型可能な材料なので,3Dプリントで性能を確認してから,本格的な量産にスムーズに進むことが可能
【フィラメント工房®】とは URL: https://www.krk.co.jp/attention_info/filament.html
プラスチック成型の総合企業キョーラク(株)が立ち上げた3Dプリンター材料専門ブランド。「3Dプリントの未来は材料開発にかかっている!」と考え,日本製の高品質な材料や,今までにない材料のフィラメント開発を通じて3Dプリントの可能性を拡張していく。また,3Dプリントの魅力をより多くの方に伝え,もっと親しみやすい技術として浸透するように3Dプリンターメーカーや教育機関と協調して活動している。2016年6月現在,全てのラインナップで日本製材料のみを用いている。
※写真の造形物は撮影用に彩色。製品は無色透明。
●問い合わせ先
キョーラク(株)
販売担当: 柏木
Mail:kashiwagi@krk.co.jp
http://www.krk.co.jp/