2015-3-16
全自動LC/MS前処理装置「SCLAM-2000」(研究用)
※LCMS-8040付きシステム
島津製作所は,血液や尿などの生体試料の前処理からLC/MS(液体クロマトグラフ質量分析計)による分析の開始までを自動で行うことができる全自動LC/MS前処理装置「SCLAM-2000」(研究用)を発売した。
生体試料をLC/MSで分析するためには前処理が必要である。血液の場合は,採血管を遠心処理し,試薬や除タンパク液と混合した上で濾過して回収するといった前処理を行う。従来,前処理した試料は手動でLC/MSへセットされており,全自動で前処理・LC/MSへの導入・分析の実行が可能なシステムはなかった。本製品は,遠心処理した採血管などのチューブと試薬,前処理専用容器を装置へセットするという簡単な作業のみで,全自動で前処理を行ってLC/MS分析を実行できる世界初※1の装置。作業の自動化によって前処理の時間を短縮し,ミスやばらつき,感染性試料を処理する際のリスクなどを低減することができる。優れた管理機能も備えており,臨床研究における安全性やデータの再現性を向上させ,革新的なワークフローを実現する。
※1 2015年3月16日時点の同社調査結果に基づく
●開発の背景
近年,先制医療や個別化医療,疾患の早期診断などを始めとする臨床研究が進んでいる。このような研究の現場では,高感度かつハイスループットなLC/MSを利用し,血液中の薬物濃度のモニタリングやバイオマーカーの探索,代謝の評価などが行われている。血液試料の分析には前処理が必要であり,分析によっては病原体を含んだ感染性試料の処理も行う。こうした背景の下,多試料を安全かつ簡便に前処理でき,LC/MS分析まで自動で行えるシステムが求められていた。
全自動LC/MS前処理装置「SCLAM-2000」(研究用)は,遠心処理を行った採血管などのチューブと試薬,2種類の前処理専用容器をセットし,PCまたは装置本体のタッチパネル(オプション)から簡単な操作をするだけで,全自動で生体試料の前処理とLC/MSによる分析が実行できる世界初の装置。1検体からでも処理を行うことができ,試料ごとに異なる前処理条件の設定や,同じ試料で複数の前処理条件の設定なども可能である。校正や保守管理といった精度管理機能も備えており,臨床研究を行う顧客のワークフローを支援し,データの信頼性を向上させる。
本製品は,同社製オートサンプラー「SIL-30AC」を構成に含む超高速トリプル四重極型液体クロマトグラフ質量分析計「LCMS-8040」および「LCMS-8050」への接続が可能。LC/MSは,ドーピング検査の分野や,危険ドラッグの分析といった法医学分野への導入も増えてきており,本製品もこうした応用分野へも展開を図る。今後も,人々の健康に寄与できる製品およびアプリケーションの研究開発を推進していく。
●新製品の特長
1.全自動で最大60検体の生体試料の前処理とLC/MSでの分析を実行可能
手間のかかる前処理の作業を必要とせず,遠心処理した採血管などのチューブと試薬,2種類の前処理専用容器を装置にセットし,制御用ソフトウェアから簡単な操作を行うだけで,最大60検体のLC/MS分析を自動で実行できる。本製品はオンラインでLC/MSに接続されているため,従来のように,前処理後に試料を手動でLC/MSにセットし直す必要はない。1時間あたり約20検体を処理でき,臨床研究で血液などを分析している顧客のワークフローの効率化を支援する。
2.データの正確さ・再現性を向上,精度管理機能により信頼性も向上
本製品は,1検体ごとに逐次処理を行う方式を採用しており,前処理時間を一定に制御できる。検体ごとの前処理反応時間の差など,個体間のばらつきをなくし,日内差,日間差を含めた再現性は≦10%と優れた分析精度を実現する(同社評価による)。また,バーコードリーダ(オプション)による検体のID管理や分析結果の校正機能,試薬の残量や使用期限などの管理機能,装置保守履歴の記録機能といった多彩な精度管理機能により,常に最適な状態で装置を維持でき,信頼性の高いデータが取得できる。
3.手技の操作ミスや感染リスクを低減
キャップを外した採血管や試薬などをセットした後は,検体および試薬を入力する2ステップの簡単な操作で前処理を開始できるため,手技の操作ミスを低減することができる。安全性の面でも,満杯検知センサー付きの前処理容器の廃棄ボックスや廃液タンクを装置内に備えており,感染性試料を処理する際の感染リスク低減にも貢献できる。
●価格
1,750万円~(ソフトウェア込み,税別)
●問い合わせ先
(株)島津製作所 広報室
TEL 075-823-1110 FAX 075-823-1348
http://www.shimadzu.co.jp/