2015-1-19
DNA検査装置「Genelyzer™ II」
(株)東芝は,DNAの増幅・検出・判定までを全自動で行うDNA検査装置「Genelyzer™ II(ジェネライザー)」を1月19日より発売する。また,食中毒原因菌14種を2時間以内に同時判定する「衛生管理用検査キット」を4月から販売開始する注1。
同社のDNA検査システムは,「DNA検査装置」と検査用DNAチップカードを含む「検査キット」で構成される。今回は,新型のDNA検査装置と衛生管理用検査キットを製品化した。今後,本検査装置で使用する多種多様なキットを販売していく予定。
同社が今回発売する「Genelyzer™ II」は,検体から抽出した核酸サンプルを検査DNAチップカードに添加し装置にセットするだけで,何のDNAかを判定する検査装置。従来,手作業で行っていた試薬調製や別装置で行っていた増幅操作等を自動化し,検査開始までの手間を極力省略化することにより,2時間以内の判定を可能とする。また4スロットを有し複数の同時検査が可能である。
「衛生管理用検査キット」は,川崎市健康安全研究所との共同研究成果と短時間で多項目同時検査が可能なDNAチップの特性を活かし,2時間以内に食中毒原因菌14種(22遺伝子)の同時判定が可能な製品。検査用DNAチップカード内に必要試薬類をパッケージ化することにより検査ごとの試薬準備・配合等の手間を極力省略化し,操作性が向上するとともにヒューマンエラーや結果のばらつきを抑止する。従来一般的に行われてきた培養法では,菌種ごとに個別の作業や試薬調製が必要で,腸管出血性大腸菌,カンピロバクター,サルモネラ等の食中毒原因菌を検出するためには4~5日程度の時間が必要であった。
同社は,安心・安全・快適な社会「Human Smart Community」の実現への貢献を目指しており,東芝グループの持つ幅広い技術を結集し,ヘルスケア事業を積極的に強化している。DNA検査システム事業においても,今後,核酸抽出法の簡易化,全自動化など使用面での改善を進め,簡単に検査することが可能なシステムを構築していく。食品業界・外食業界などへの普及を通じて,食の安心・安全に貢献,日本の次世代衛生管理の体制づくりに取り組んでいく。
●川崎市健康安全研究所との共同研究経緯
同社は,2011年の東日本大震災の復興支援策の一環として,被災地域の避難所,給食施設等における衛生管理の高度化にDNAチップの活用を検討した際,食中毒原因微生物のモニタリング,迅速検査の必要性に直面し,川崎市衛生研究所(当時)の協力を得て,対象微生物種の選定と評価・監修の他,実用化に向けた数多くの助言を受けた。その中の一つである低価格化が重要との指摘に対し,コストダウンを実現する新技術(流路内増幅)開発に着手した。2013年3月には,京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特別区域に移転・体制強化した川崎市健康安全研究所と共同研究契約を締結注2し,開発を加速させ今回の実用化に至った。今後は,ノロウイルスの判定用検査キット,食品対応の衛生管理用検査キット等の開発に向け共同研究を継続し,公衆衛生の高度化を推進していく。
●DNAチップについて
同社のDNAチップには,用途に応じ,検出対象となるDNAに対応した相補的な配列のプローブDNAが複数種,電極の上に予め固定化されている。DNAチップ上に検出対象となるDNA(検体DNA)を添加することにより,検体DNAと相補的な配列のプローブDNAがハイブリダイゼーションする。その後,DNAチップ上に挿入剤を添加することで,ハイブリダイゼーションにより2本鎖になったDNAにのみ挿入剤が結合する。この状態でDNAチップに電圧をかけることにより挿入剤が酸化することで電極に電流が流れる。この電流を測定することにより,検体DNAを判定する。同社は2009年より子宮頸がん原因ウイルス判別用,実験動物微生物モニタリング用,生物剤検知用などの遺伝子検査システムを実用化してきた。
注1:Genelyzer™ II及び衛生管理用検査キットは,非薬事品の為,診断,治療を目的とした販売,授与はできない。研究・実証実験・評価用としての使用を想定している。
注2:2013年4月より川崎市健康安全研究所と「電流検出型DNAチップを用いた食中毒原因菌の簡易自動検査技術の開発」の共同研究契約を締結。旧川崎市衛生研究所と連携し進めていた研究を更に発展させることとした。
●定価
DNA検査装置「Genelyzer™ II」
800万円(税別)
衛生管理用検査キット
9,500円(税別)
●問い合わせ先
(株)東芝 ヘルスケア社
ヘルスケア医療推進部
DNA検査システム事業開発部
TEL 03-3457-3324
http://www.toshiba.co.jp