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富士フイルム,抗菌コート技術「HYDRO AG(ハイドロ エージー)」開発〜塗布膜の内部からも銀イオンが供給され,抗菌効果が持続〜

2014-7-14

富士フイルム(株)は,従来の銀系抗菌剤を使った抗菌コートと比べて,約100倍の抗菌性能を実現する抗菌コート技術「HYDRO AG(ハイドロ エージー)」を開発した。本技術を用いた製品として,医療機関,公共施設,教育機関などで用いられる,タッチパネルを搭載した機器向けの抗菌液晶保護フィルムの発売を予定している。今後,本技術をさまざまな製品に応用展開することを検討していく。なお,同社は,7月16日から18日まで東京ビッグサイトにて開催される「国際モダンホスピタルショウ2014」の同社ブースに,本技術を用いたタッチパネル搭載機器向け抗菌液晶保護フィルムを展示する。

近年,高齢者やがん患者など免疫力が低下し,感染リスクが高くなっている患者の増加や,新たな多剤耐性菌の出現などで,院内感染のリスクは年々高まっており,政府が2010年,2012年の診療報酬改訂で「感染防止対策加算」を増額するなど,その対策が急務になっている。医療現場では,タッチパネルを搭載した医療機器やタブレット端末などのスマートデバイスが多く活用され,年率4割増で普及が進んでいる。しかし,これらのデバイスに関しては,タッチパネルに付着した細菌が繁殖し,院内感染の原因となるリスクが指摘されている。

今回,富士フイルムが開発した抗菌コート技術「HYDRO AG」は,銀系抗菌剤(銀イオンを徐々に放出する機能を持ったセラミック微粒子)を分散した,水となじみやすい超親水性の樹脂(以下,バインダー)を塗布する技術。本技術は,同社が写真フィルムで培った銀に関する知見および精密塗布の技術と,グループ企業である富山化学工業の抗菌性能の評価技術を生かして開発したものである。

一般的に,銀系抗菌剤を使った抗菌コートでは,抗菌剤に空気中の水分などが作用して銀イオンが溶出される。この銀イオンは,細菌の細胞表面にある酵素と結合し,細菌を不活化する。よって,塗布膜表面の銀イオン濃度を高めることで,細菌の増殖を抑制する性能を向上させることができる。

従来の銀系抗菌コートには,水となじみにくい非親水バインダーが用いられており,塗布膜表面に露出した銀系抗菌剤に水分が作用した場合にのみ銀イオンが溶出され,細菌の増殖を抑制していた。しかし,塗布膜表面にある抗菌剤の銀イオンは,抗菌作用を発揮するのに伴い消費される。また,塗布膜表面に何かが接触することで抗菌剤自体が物理的に脱落し,その抗菌効果は次第に失われてしまう。これに対し,「HYDRO AG」は,水と非常になじみやすい超親水性バインダーの中に銀系抗菌剤を分散しているため,塗布膜表面だけでなく,塗布膜内部の抗菌剤にも水分が作用して,塗布膜内部からも銀イオンを供給する。これにより,塗布膜表面の銀イオン濃度が高くなり,従来にない高い抗菌性能を発揮する。また,その効果が長期間持続することが期待できる。【図1】

【図1】従来の抗菌コートと「HYDRO AG」の構造(イメージ図)

【図1】従来の抗菌コートと「HYDRO AG」の構造(イメージ図)

 

●「HYDRO AG」の抗菌性能

同社が,JIS Z 2801に準拠して実施した抗菌性能試験において,菌接触後1時間で,従来の非親水性バインダーを用いた銀系抗菌コートでは細菌が約99%減少するのに対し,「HYDRO AG」は99.99%以上減少することを確認した。【図2】

北里環境科学センターにおいて実施した,実際の室内に近い環境(気温25℃,湿度50%)で菌を付着させた抗菌性能試験においても,従来の非親水性バインダーを用いた銀系抗菌コートに対し,「HYDRO AG」は高い抗菌性能を発揮することを確認した。【図3】

【図2】JIS  Z 2801準拠 抗菌性能試験(35℃ 100%)

【図2】JIS Z 2801準拠 抗菌性能試験
(35℃ 100%)

【図3】北里環境科学センター 抗菌性能試験(25℃ 50%)

【図3】北里環境科学センター 抗菌性能試験
(25℃ 50%)

 

 

●問い合わせ先
富士フイルムメディカル(株)
営業本部 マーケティング部
TEL 03-6419-8033
http://fms.fujifilm.co.jp/