2014-4-7
GEヘルスケア・ジャパン(株)は,GEヘルスケア製MRI(磁気共鳴画像装置)に対応した新技術「SILENT SCAN(サイレントスキャン)」を2013年9月10日に発表し,「SILENT SCAN」を搭載した2つのMRI新製品の発売を同年9月18日より開始した。その後,「SILENT SCAN」の適用範囲を拡大しながら,4月1日現在約30施設で稼働を開始している。特に小児領域においては既に多くの施設で臨床応用が始まっており,その臨床有用性に関する声も出てきている。
「SILENT SCAN」は,GEヘルスケアの技術力を結集し,従来のMRI検査時に発生する騒音の一部を「発生させない」ことに成功した,世界初*1の音のしない*2 MRI技術。これまでのMRI装置では,工事現場のような激しい騒音の中で患者さんは検査を受けなければならず,特に小児や高齢者には負担が大きいものであった。また,騒音の中じっとしているのが難しい小児のMRI検査では,安静を保つために鎮静剤が使用される事も少なくないが,一方で鎮静剤には呼吸停止や心停止のリスクがあるとも言われている。2010 年に日本小児科学会医療安全委員会が小児科専門医研修施設に対して行った調査で,回答を寄せた施設の35%にあたる147 施設で鎮静の合併症を経験していることが明らかになっている*3。
2013年5月26日,日本小児科学会,日本小児麻酔学会,日本小児放射線学会は共同で「MRI検査時の鎮静に関する共同提言」を発表し,小児患者のMRI検査のための鎮静をより安全にするための基準を示した*3。
こうした背景の中,MRI検査において検査時の安静を脅かす要因のひとつであった騒音を発生させないことを可能にする「SILENT SCAN」技術は,より快適で安全な検査環境を提供し,MRI検査の常識を変える大きな一歩になると期待されている。
2014年1月よりGE社製3テスラMR装置Discovery 750w上で「SILENT SCAN」が稼働している大阪大学医学部附属病院では,小児の検査に「SILENT SCAN」を用いており,放射線医学講座講師の渡邉嘉之氏は,小児のMRI検査における「SILENT SCAN」の優位性を高く評価している。
GEヘルスケアは,1986年に世界で初めてヒトに適応するMRI装置「SIGNA」を発表以来,数多くの新製品を世に送り出してきた。近年「やさしさと快適さ」をキーワードとした技術開発のコンセプト“Humanazing MR”のもと,四肢専用のMRI「Optima MR430s」やNeedle Free*4 の技術などを発表。2013年9月,世界に先駆けMRIの無音化を実現した「SILENT SCAN」の発売に至った。
●MRI検査時の騒音を「発生させない」世界初の技術
従来のMR装置は検査時に,ドンドンカンカンという工事現場のような騒音が起こる。これは,装置の中にあるコイルが検査中に振動するために発生する音で,検査の種類にもよるが,大きいときには100dB以上の激しい騒音を発していた*5。これまで,発生する騒音をいかに小さく抑えられるかという「静音化」への試みを実施したMR装置の開発はあったが,「音そのものを発生させない」技術はなかった。2013年9月にGEヘルスケア・ジャパンが発売開始した「SILENT SCAN」では,専用の撮像ソフトウェア「Silenz(サイレンツ)」を用いることで,傾斜磁場コイル(Gradient Coil)をほとんど振動させずに,結果として撮像をしていない環境音に対してわずか3dB以下という音量のMRI検査を実現している。
このSilenzに用いられる特殊な傾斜磁場波形と,特殊なRF波形を印加する上で必要となるハードウェアが,極めて追従性の高い電源システムと超高速に送受信を切り替えるRFスイッチを搭載したコイルであり,「SILENT SCAN」は,これらハードウェア,ソフトウェアが融合した技術と言える。*5
*1 2013年9月調査
*2 検査査環境音+3dB以下
*3 「MRI 検査時の鎮静に関する共同提言」 日本小児科学会・日本小児麻酔学会・日本小児放射線学会
2013年5月26日 https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/saisin_130704.pdf
*4 バイオプシー(穿刺)や造影剤・鎮静剤の使用をできる限り抑えることを目指して,低侵襲・非侵襲な検査を実現するGEの先進アプリケーション
*5 「SILENT SCAN」を構成するソフトウェア技術とハードウェア技術
●問い合わせ先
GEヘルスケア・ジャパン(株)
コミュニケーション本部
松井/ブランチャード
TEL 0120-202-021
www.gehealthcare.co.jp