2014-1-14
Viva® XT CRT-D / Viva® Quad XT CRT-D
日本メドトロニック(株)は,日本初となる次世代の心臓再同期療法(CRT)用両室ペーシング機能付き植込み型除細動器*「Viva®(ビバ) XT(エックスティー) CRT-D」「Viva® Quad(クァッド) XT CRT-D」(以下Viva XT CRT-Dシリーズ)を,1月14日に発売した。本製品に搭載された新しいアルゴリズム「AdaptivCRT®」により,日常生活の中で変化する患者さんの心臓の状態に合わせた,より生理的な両室ペーシングを実現している。これにより,これまでCRT普及の課題とされてきた治療レスポンス率をさらに向上させる可能性がある。本製品は機能に対する臨床的な価値が認められ,新機能(C1)区分での保険適用となった。
* 両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)は,心臓の心室全体の同期を目的とする「両室ペースメーカ(CRT-P)」の 機能に除細動機能が加わった医療機器。
慢性心不全の中でも特に心室内同期不全に有効とされている治療法であるCRT(心臓再同期療法) では,これまで,両心室の収縮タイミングを合わせるために右心室および左心室でのペーシングを行うことが原則であったが,日常の生活の中で変化する心臓の状態に関わらず,決められた設定の両室ペーシングを行っていたため,必ずしも生理的とはいえなかった。
新製品Viva XT CRT-Dシリーズに搭載されたアルゴリズムAdaptivCRTは,生活の中で常に変化する心臓の状態に合わせたペーシングを行うことで,より心臓に負荷の少ない生理的なペーシングを目指した,全く新しいコンセプトの機能。具体的には,AdaptivCRTが,変化する心臓の状態を1分毎にモニターし,心臓の収縮タイミングを最適なものとするとともに,心房から心室への刺激伝導が正常な場合には,自動的に右室の動きに合わせ左室ペーシングのみを行う「右室同期左室ペーシング」を実現する。AdaptivCRTに対する臨床試験「Adaptive CRT試験」(以下,同試験)では,心エコ-で心臓の収縮タイミングを最適化した同社従来製品と比較し,右室ペーシング率を44%減少させることが示されている。
CRTの課題として治療を受けても約3分の1の患者さんが効果(レスポンス)を十分に得られないことがあり,この治療法を選択する上での障壁の一つとなっている。レスポンスが得られない原因は様々だが,中でも心臓の収縮タイミングを最適なものとすることが最も重要といわれている。
同試験では過去のCRT試験と比較し症状改善効果が12%増加することが示唆された。本製品の市場導入により,より多くの慢性心不全患者さんに効果的にCRTを提供できる可能性が期待されている。
一方で,慢性心不全の患者さんは心房細動を合併しやすく,それが生命予後に悪影響を与えることが明らかになっている1。同試験では本製品を植込んだ患者さんの心房細動のリスクが,心エコーを用いて最適化した患者群に比較してAdaptivCRT群では46%低かったことが示された。
新たなアルゴリズムAdaptivCRTについて,国立循環器病研究センター 心臓血管内科 心不全科 神﨑 秀明氏は次のように述べていいる。「CRT治療において重要な心臓の収縮タイミングの最適化は,通常,外来時にエコーで行いますが,専門医の不足もあり,すべての患者さんに適切な頻度で行うことは難しいのが現状です。AdaptivCRTを使用すれば,手間をかけずに最適化することができます。またエコーで最適化を行う際は,患者さんは横になって休息している状態ですが,心臓の状態は日常生活の中では変化しますので,心臓の動きに合わせて随時自動的に最適化を行えるのはエコーにはないメリットです。結果として,エコー医はより重症の患者さんに対して重点的に時間をかけられるようになるでしょう」
Viva XT CRT-Dシリーズは,日本初のテクノロジーであるAdaptivCRTの搭載のほかに,植込み部位が受ける圧力を低減する独自の形状(PhysioCurve®デザイン)や,致死性不整脈の治療が不必要な場合にショック治療を行う不適切作動を低減することが臨床で実証された2アルゴリズム(SmartShock® テクノロジー)も備えている。
本邦でCRTが保険適用となってから約9年間で累積25,000例以上の植込みが行われている3。
一方で近年の新規植込み数は横ばいまたは減少しており,欧米諸国に比べCRT普及率はまだ低いのが現状。日本メドトロニックは,本製品を通じて,医療現場ならびに患者さんの高いニーズに 応えるテクノロジーを提供することによりCRTのさらなる普及に貢献していきたいと考えている。
【慢性心不全について】
心不全とは心臓がポンプとしての役割をはたせなくなった状態をいう。国内での心不全患者数は,定義にもよるが推定100-250万人4と言われている。高齢化や食生活の欧米化により患者数は増加しつづけている。心不全は放置すれば生命の危険を伴うが,最近では薬物治療に加え,心臓再同期療法(CRT)や人工呼吸器を使った治療法などが登場し,生命予後の改善(寿命を延ばす)と生活の質(クオリティ・オブ・ライフ:QOL)の向上が望めるようになってきている。
【CRTとは】
CRTは,慢性心不全のなかでも心臓の電気信号の伝導異常により心室の収縮がうまくいかない心室同期障害に対する治療法で,ペースメーカで電気刺激を送り左右の心室のズレを補正することにより心臓のポンプ機能の回復を図る。この治療に用いられる両室ペースメーカ(CRT-P)は2004年に,さらに除細動機能を併せ持つ両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)が2006年に保険適用となっている。
【Adaptive CRT試験】
Adaptive CRT試験は,AdaptivCRTテクノロジーによる右室同期左心室ペーシングの臨床的有用性を評価するためにおこなわれた多施設共同臨床試験。522人のCRT植込み患者さんを対象とし,AdaptivCRTアルゴリズムと心エコーでペーシングを最適化した従来のCRT,いずれかを2:1の比率で無作為に割り当てた。全員の患者さんにおいて6ヶ月目と12ヶ月目,その後,研究終了まで半年ごとに追跡調査を行った。全体として,AdaptivCRT群は心エコー群に対して非劣性であると示された。
1 Wang TJ, Larson MG, Levy D, et al. Temporal relations of atrial fibrillation and congestive heart failure and their joint influence on mortality: the Framingham Heart Study. Circulation. 2003;107:2920-5.
2 E.J. Schloss et al. HRS 2013
3 日本不整脈デバイス工業会調べ
4 Vascular Health and Risk Management 2008:4(1) 103–113,心不全診療の最前線[I]心不全の疫学と病態生理 第122 回日本医学会シンポジウム6-11
●問い合わせ先
日本メドトロニック(株)
http://www.medtronic.co.jp/