2013-7-4
カナダ・オンタリオ州,ピーターボロの研究者アダム・ノーブル(Adam Noble)氏※1 は,トレント大学(Trent University)※2 で汚水処理工場から銀ナノ粒子を回収する方法を懸命に研究してきた。この銀ナノ粒子は生態系全体にわたって毒性を引き起こす一方で,高価な物質でもある。
ノーブル氏は,この研究で,彼の実家の地下にあるサウナで培養した単細胞生物の一種,ユーグレナ(和名:ミドリムシ)を使用して廃水から銀ナノ粒子を抽出できることを突き止めた。そして,ノーブル氏は,廃水から高価な物質を適切にろ過して,回収し,再販することのできるプロトタイプを開発した。
ノーブル氏は「私は,ユーグレナという藻類を巧みに利用して銀を取り込むことができることを発見しました。これにより,藻類をろ過システムから取り出して,破棄し,銀ナノ粒子を回収することができます。我々の実験では,420万カナダドル(約3億9,480万円) に相当する銀ナノ粒子を回収しました。この処理の規模を拡大できるかどうか確認するため,我々は現在,市場評価を行っています」と話している。
バイオレメディエーション(bioremediation:微生物を利用した環境修復・改善・浄化の技術)の研究で,ノーブル氏は,レイクトラウト(淡水性のイワナの一種)のえらから採取された銀ナノ粒子が悪性腫瘍の原因である可能性に気づいた。氏は銀ナノ粒子と悪性腫瘍の関係を検討し始め,悪性腫瘍を引き起こすのではなく,破壊する銀ナノ粒子を作成できないかどうかの確認に重点を置くようになった。
「これらの粒子はその毒性についてはっきりと限定はされていません。環境に悪いのはそのためです。ただし,粒子の形状,サイズやその他の要素を変えることによって,その標的をさらに絞り込むことができます。私はがん細胞だけに取り込まれるようにナノ粒子を設計することができました。この粒子を血液に注入して,腫瘍に蓄積されるようにすることもできます」とノーブル氏は述べる。
ノーブル氏は,研究室において肺,頸部,皮膚やその他の形状のがんでも正確に実施することができた。
この銀粒子の重要な要素の一つは「キャッピング剤」であること。これは基本的に,粒子をコーティングしたもので,キャッピング剤が壊れるまで,何も標的にしないようにしている。この結果,腫瘍細胞は脆弱であることが分かる。
「腫瘍には漏れやすい血管系があるため,ナノ粒子の入り口ができます。腫瘍細胞が粒子を取り込むと,キャッピング剤が壊れて,腫瘍を死滅させるイオンが放出されるのです」と,ノーブル氏は説明する。
為替レートは1カナダドル=94円で計算
※1 アダム・ノーブル(Adam Noble)氏について
現在19歳のアダム・ノーブル氏は,藻類によって銀ナノ粒子を回収する研究によって,2013Wetson Youth Innovation Award (http://www.ontariosciencecentre.ca/innovationaward/
)他,複数の賞を受賞した,カナダ・オンタリオ州期待の若手研究者。
※2 トレント大学(Trent University)について
トレント大学は,カナダ・オンタリオ州ピーターボロに本部を置く,1964 年創立のカナダの公立大学。
ウェブサイト: http://www.trentu.ca/
●問い合わせ先
カナダ・オンタリオ州政府経済開発省 日本広報窓口
(株)トークス 森田,松本,工藤
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