2013-4-8
Discovery IGS 730
(ディスカバリー・アイジーエス730)
ハイブリッド手術室内を自在に動く高性能治療支援装置,ついに日本上陸
患者さんに優しい高度な低侵襲インターベンションを清潔な環境できめ細かに支援
医療課題の解決に取り組むヘルスケアカンパニー,GEヘルスケア・ジャパン(株)は4月8日(月),GEヘルスケア製多目的X線撮影装置(血管X線撮影装置:アンギオグラフィーシステム*1)の最上位機種 「Discovery IGS 730(ディスカバリー・アイジーエス730)」を,先進の血管内治療と外科手術を施行するハイブリッド手術室を設置予定の施設を主対象に発売する。
Discovery IGS 730は,先進のレーザーガイド技術をもとに自動で任意の位置に自走可能な,高性能アンギオ装置。従来の床置き式と天吊り式のアンギオ装置の利点を統合し,高度化する低侵襲のインターベンション(IVR)*2と低侵襲外科治療の両手技を,安全性を考慮し,かつ患者に優しい清潔な環境でサポートできるDiscovery IGS 730は,ハイブリッド手術室での使用に最適化された装置。
同社は4月12日(金)~14日(日)にパシフィコ横浜(神奈川県横浜市)で開催される2013国際医用画像総合展(ITEM 2013)においてDiscovery IGS 730の実機を展示,自動走行を実演します。
●インターベンションの普及・進化で拡大する「患者に優しい」大動脈弁・大動脈瘤治療
高齢化の進展や患者のQOL(Quality of life)に対する意識の高まりなどを背景に,X線透視画像を見ながら血管や腫瘍などを治療するIVRは,外科手術に比べて侵襲の少ない患者さんに優しい治療法として,近年加速度的に普及が進んでいる*3。なかでも特に海外においてIVRの役割が拡大しているのが,大動脈弁狭窄症向けの経皮的大動脈弁植込み術(TAVI:Transcatheter aortic valve implantation)と胸部大動脈瘤(TAA)及び腹部大動脈瘤(AAA)に対するステントグラフト術。
発症後数年で死に至ることもある大動脈弁狭窄症の治療は従来,開胸する外科手術が一般的で,年齢や合併症などのリスクから手術を断念するケースも数多くあった。ただ近年,大腿動脈,または麻酔下で小さく開いた左胸から直接カテーテル弁を入れるTAVIが可能になり,すでに全世界で5万人以上の患者さんがこの手技を受ける*4など,加速度的に普及が進んでいる。
また,胸部・腹部の大動脈瘤(TAA/AAA)の治療はこれまで開胸・開腹術を必要としたが,経皮的にX線透視下でカテーテル操作によってステントグラフトを留置する手技が可能になるなど,より複雑高度な手技が身体への負担が少ない低侵襲のインターベンションで可能となってきている。
●IVRの高度化で役割が高まるハイブリッド手術室と現在の課題
このようにIVRが複雑高度化するにつれ,手技の長時間化が進むとともに,リスクも高まる傾向にある。そのため,より安全で的確なIVR支援が可能な高機能アンギオ装置をベースに,万一の際の外科治療にも対応できる環境がこれまで以上に求められるようになってきた。このニーズに応えるのが,外科治療を行う従来の手術室の機能とIVRの機能を組み合わせて低侵襲治療を実現するハイブリッド手術室で,国内でも急速な発展を遂げている。
ただ,現在ハイブリッド手術室に主に設置されている天吊り式のアンギオ装置は,設置時に大掛かりな工事が必要で,天井工事などでコストがかさむだけでなく,天井走行の際に著しく清潔度を劣化させるなどの課題が残されていた。また床置き式装置は,手術室内で高い柔軟性を持って設置するのが困難な場合もあった。加えて,欧州ではハイブリッド手術室での手技はIVRが6割を占めるが*5,日本では稼働率をあげるべく一般外科手技も考慮した装備となっており,多額の投資を費やしたハイブリッド手術室が有効活用されていないという経営課題も浮き彫りになっている。
●ハイブリッド手術室に最適化され,IVRと外科治療を的確にサポートするDiscovery IGS 730
このような中,床置き式の安定性と天吊り式の可動性の両装置の利点を兼ね備え,より高度なIVRにも対応できるハイブリッド手術室用アンギオ装置として開発されたのがDiscovery IGS 730。天吊り式ではないため,空調コントロールも可能で,術中に室内にほこりが舞うこともなく,また床置き式ではないため,外科手術中には装置を室内の壁際など任意の場所に退避できる。
Discovery IGS 730の自動走行を支えるのが,Cアームに取り付けられたモーター駆動の高精度搬送体(AGV)。AGV上部で回転する位置ガイドレーザー照射部と室内に張り巡らされたセンサーで位置を認識し,自走してプリセットされた場所まで移動する。患者さんがテーブルに乗り降りしたり,IVRの際に全身麻酔をかけたりする際は,Cアームをテーブルから退避させることができ,患者さんの圧迫感や負担を軽減する。外科手術の際は,麻酔器や超音波診断装置をはじめ様々な装置を室内に入れ,関わるスタッフも多くなるため,室内が混雑するケースが多々あるが,Discovery IGS 730ならIVRを実施していない時は装置を部屋の隅に退避させられるため,スペースを有効活用できる。
操作はテーブルサイドまたは背面のタッチスクリーンで行い,停電など緊急時には手動操作も可能。
●高度化するインターベンションを3D画像と専用アプリできめ細かに支援
動脈弁狭窄症向けの経皮的大動脈弁植込み術(TAVI)などの高度なIVRには,実際の手技のみならず,その前の治療計画から手技中のガイドやデバイスの位置確認までの幅広い支援が極めて重要である。
Discovery IGS 730には,TAVIの術前計画用の「Valve Planning」ツールを搭載。数回のマウスクリックで必要な大血管を簡単に描出・計測し,CT(コンピューター断層撮影装置)画像やアンギオ装置で撮影された3D画像上に,実施予定の治療プランを描き,治療に必要な角度を自動で割り出すことができる。
また,心拍の影響を抑えた重ね合わせ画像でより安全な心臓治療をサポートする「Heart Vision(ハート・ビジョン)」を搭載。CTなどで撮影した心房や心室,大血管の3D画像からロードマップ(血管地図)を再構成してDiscovery IGS 730の透視画像上にリアルタイムで重ね合わせる。3D画像と透視画像の心周期をあわせることで心拍による画像のずれを最小限に抑えることができる上,呼吸性による体動も補正でき,より安全で迅速な治療を支援する。
これら先進アプリケーションによる治療時の解剖学的情報の提供や高DQE(量子検出効率)による高精細画像をもとに,Discovery IGS 730は一段と複雑高度化する治療を的確に支援する。
●その他のDiscovery IGS 730の特長
- 広口径のCアーム 「Wide Bore 3D」を搭載。X線管球とフラットパネル(FPD,サイズは30cm x 30cm)との距離が大きくなるため,今まで以上に広いスペースを確保でき,中心から外れた撮影対象の3D撮影にもより柔軟に対応できるようになる。従来に比べて柔軟な撮影ポジショニングが可能となるほか,麻酔時などのケーブル管理も容易になる。
- 外科手術の際は,Cアームを壁際に退避させ,かつIVR用のInnovaIQテーブルを90度回転させることで,空いたスペースに手術台を持ち込んで使用でき,IVRと外科手術のスムーズな連携を実現する。これにより,従来できなかったような複雑高度な手技や感染症などのリスクがあるような手技も,今後ハイブリッド手術室で可能になると見込まれている。
- Discovery IGS 730は昨年11月のRSNA(北米放射線学会)にあわせてグローバルローンチされ,血管内治療で世界的に有名な仏リール大学病院や米セントルーク病院など,欧米で5台が稼働している。
*1 血管造影撮影法(アンギオグラフィー)とは,血管内に造影剤を注入し,その流れをX線で撮影することで,血管の走行・形状・分布などを観察する方法で,略してアンギオともいわれる。X線を通しにくい造影剤を目的の血管に流し込んだ後にX線撮影することで,造影剤の入った部分の血管の形をクリアに映し出せる。手術をしない限り,見ることのできなかった血管の形態がほとんど身体を傷つけずに低侵襲で見られる。くも膜下出血や脳梗塞など脳血管障害,脳腫瘍,肺がん,肺梗塞,肝硬変,肝腫瘍,子宮がん,骨腫瘍,手足四肢血管狭窄などの診断に主に使用される。造影された血管をX線撮影する装置が血管X線撮影装置(アンギオグラフィーシステム:アンギオ装置)
*2 インターベンション(IVR)とは,アンギオ装置で撮影したX線の透過像をリアルタイムに見ながら,血管内からカテーテルなどを用いて病巣にアプローチする治療法。外科手術に比べて,患者の身体への負担およびリスクが少ない。血管内に挿入したカテーテルを操作して,動脈硬化などで狭くなった血管を広げたり(血管形成),コイルを詰めて血管が破れる恐れのある動脈瘤に血液が流れ込まないようにしたり,がん組織に栄養を与える血管の血液を遮断する(血管塞栓術)といった治療が代表例。動脈瘤,動静脈奇形,肝臓がんなどは,IVRによって外科手術なしに治療が可能になっている
*3 出典:株式会社アールアンドディー2011医療機器・用品年鑑
経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の症例数は毎年4%~5%の割合で増加し,08年で5.2%増の229,000症例,09年で4.1%増の238,500症例,10年で3.1%増の246,000症例。ステントグラフトの症例数は腹部で08年が2,520症例,09年で78.6%増の4,500症例,10年で28.9%増の5,800症例,胸部で08年が300症例,09年で350.0%増の1,350症例,10年で55.6%増の2,100症例と急速に増加している
*4 出典:Gilard M, Eltchaninoff, Iung B, et al; FRANCE2 Investigators. Registry of trans-catheter aortic-valve implantation in high-risk patients. N Engl J Med. 2012; 366(18):1705-1715.
*5 出典:“Heart and Vascular Integration Benchmarking Initiative Results”, US, Medical Advisory Board Company
●問い合わせ先
GEヘルスケア・ジャパン(株)
コミュニケーション本部
ブランチャード美津子・松井亜起
TEL 0120-202-021
www.gehealthcare.co.jp