2012-10-18
条件付きMRI対応植込み型心臓ペースメーカ
「メドトロニック Advisa MRI®」
日本メドトロニック(株)は 2012年10月1日より,日本初の条件付きMRI対応植込み型心臓ペースメーカ1「メドトロニック Advisa MRI®(アドバイザ エムアール アイ)」(以下「Advisa MRI®」)と条件付きMRI対応心内膜植込み型ペースメーカリード「キャプシュアーFIX MRI リード®(フィックス エムアールアイ リード)」(以下「キャプシュアーFIX MRI®」)の発売を開始した。
上記2製品はメドトロニックが開発した条件付きMRI対応テクノロジー「SureScan®」を採用している。本製品を植込んだ患者さんがMRI検査を受ける際には,いくつかの「条件」を満たす必要がある。
- MRI装置が1.5テスラの円筒型ボアタイプであること
- 植込まれたペースメーカ本体とペースメーカリードの両方が SureScan®を採用していること
- それ以外のMRI検査非対応の植込み型デバイスが患者さんの体内に植込まれていないこと
- MRI検査前に循環器科医師による検査に対する安全性の確認を受け,検査前後にペースメーカの設定変更を受けること
などが検査を受けるための条件となる。これらの条件および一定の施設基準を満たした場合において,従来「禁忌」であったペースメーカを植込んだ患者さんにもMRI検査の機会を提供できるようになった2。
MRI検査は,脳や脊椎,四肢,また内臓,子宮,前立腺等,全身の数多くの疾患の診断に多用されている。MRI検査は多くの疾患で診断に欠くことができない主要な医用画像診断ツールとされている。また,侵襲性が非常に低いため患者さんの身体的負担が少ないこと,さらに放射線被曝がなく経過観察などのために高頻度に使用することができるなどの利点を持っている。しかし,ペースメーカ患者さんのMRI検査は,従来重篤な健康被害を及ぼす可能性への懸念から添付文書上「禁忌」とされていた。
心臓ペースメーカによる徐脈性不整脈治療を受けられる患者さんは国内に約40万人3いると報告されている。また,MRI検査のニーズは65歳を越えると急激に増える4という報告もある。そのなかで,最初のペースメーカ植込みの平均年齢が74歳5とペースメーカ患者さんも高齢の方が多いことから,MRI対応ペースメーカの登場は長く待ち望まれていた。今回の条件付きMRI対応植込み型心臓ペースメーカとリードは,こうしたニーズに応えるべく発売された。
発売に際し,2012年9月に日本メドトロニックは,循環器内科と脳神経外科,整形外科の医師を対象とした“MRI検査とペースメーカ治療の現状とニーズに関する医師調査”6を実施している。この調査から,医師がMRI検査は患者さんにとって必要な診断手段であり,MRI対応のペースメーカおよびリードの必要性は非常に高いことを示唆する結果が得られている。
医師調査では,“MRI検査は患者のベネフィットに繋がると思うか”の質問(単数回答)に対して,「とても思う」73.3%,「思う」25.7%と合計で99.0%がMRI検査は患者のベネフィットに繋がると答えている。その理由 (複数回答)は,「診断能が高い」91.9%,「侵襲が低く,患者の身体への影響が少ない」78.5%,「医療被曝がなく,患者の身体への影響が少ない」69.0%となっている。“担当する診断領域でMRI検査を重用したほうがよい疾患はあるか”との問い(単数回答) に対しても90.7%が「ある」と回答。この「ある」とした回答者に対する “MRI検査が受けられない場合の代替手段にはどのようなものがあるか”との質問(単数回答)に14.3%が「MRI検査の代替手段を探すのは難しい」と回答している。またMRI検査の代替手段をあげた85.6%に対して,“MRI検査に比べて代替手段を利用した場合,デメリットが生じる可能性はあると思うか”との質問に対し,「とても思う」34.3%,「思う」57.9%と合わせて92.2%が「デメリットが生じる可能性がある」と回答している。
さらに,上記で「デメリットが生じる可能性がある」とした回答者に,“どの様なデメリットが生じると思うか”との質問(複数回答)には,「医療被曝が増えることでの患者の身体的負担」47.0%,「侵襲的検査を用いざるを得なくなることによる患者の身体的な負担」40.0%,「診断回数が増えることでの患者の時間的,経済的な患者負担」22.8%と,患者にとってのデメリットを懸念する回答が示された。
この調査結果を受け,日本不整脈学会 会頭・弘前大学大学院 医学研究科循環呼吸腎臓内科学講座 奥村 謙 教授は,「医師は,患者さんにとって経済的・身体的な負担が少ない検査を選択し,最適な治療をしたいと考えています。今回の調査では,ほぼ全ての医師が『MRI検査は患者のベネフィットに繋がる』と考えていることを確認できました。MRI検査とペースメーカ治療が両立していなかったことは患者さんにとって大きなデメリットであり,MRI検査が可能なペースメーカの登場は,医療現場で待ち望まれていました。今回の条件付きMRI対応ペースメーカの国内使用開始を受け,ペースメーカ治療を担当する循環器科のみでなく,ペースメーカ患者さんに関わる全ての医療関係者がMRI検査に必要なプロセスを理解し,院内と病院間の連携を進めることで,ペースメーカ患者さんのMRI検査が安全かつ円滑に行われるようになることを望みます」と述べている。
メドトロニックでは,MRI検査を可能にするSureScan®テクノロジーの開発を1997年から開始し,あわせて10年以上の開発・試験期間を経て,2008年に世界で初めて製品化に成功した。ペースメーカ本体は,MRIの磁力の影響を受ける強磁性体の材質を最小化させる,電子回路間の干渉を防ぐなどのデザインの改良が施されている。また専用ペースメーカリードは,新たなデザインの採用により,高周波の伝導と発熱を抑えるなどの新機能を実現している。結果として,全身のどの部位のMRI検査においても,安全性が確認され,検査が可能となっている。
【MRI検査における条件について】
SureScan®テクノロジー対応の条件付きMRI対応ペースメーカを植込んだ患者さんがMRI検査を受けるためには,一定の条件を満たす必要がある。
●MRI検査に関する条件:MRI検査の装置,撮像条件に関する条件がある。まず,MRI装置は1.5テスラの円筒型ボアタイプである 必要がある(国内設置台数の約5割をこのタイプが占めると考えられる7)また,撮像に際しては,標準的な撮像モードである「通常操作モード*」で行う必要がある。(特殊な一部の撮像法以外はこの標準モードでの対応が可能)その他に,患者さんの検査時の姿勢の一部制限や,表面コイルという検査時のアタッチメントの一部制限などがあるがほとんどの場合検査の支障にはならないと考えられている。
● 患者さん側の条件:心臓ペースメーカ本体とペースメーカリード(2本)がメドトロニックの条件付きMRI対応製品(SureScan® テクノロジー対応製品)である必要がある。また,それ以外のMRI非対応の植込み機器がないことが条件となる(例:断線し放置されたリードがあるとMRI検査はできない)。また植込み後6週間はMRI検査ができない制限や,ペースメーカ管理上の測定値が一定の範囲を越えた場合にMRI検査ができない等の条件がある。
条件付きMRI対応ペースメーカに関する医療従事者および患者さん向けウェブサイト
http://www.mri-surescan.com
1 「条件付き MRI 対応」とは,限定された種類の MRI 装置を使用する,限られた設定下で撮像する,などの一定の条件を満たしたうえで MRI 装置での撮像が可能になるデバイスを指す
2 MRI 対応植込み型デバイス患者の MRI 検査の施設基準 http://www.mri-surescan.com/pdf/physician/facility-criterion.pdf
3 富士キメラ総研「2009 年メディカルマテリアル市場の現状と将来展望」
4 National Cancer Institute April 2009. US estimated complete prevalence (including counts) by age on 1/1/2006. Based on November 2008 SEERdatasubmission;DCCPS,SurveillanceResearchProgram, StatisticalResearchandApplicationsBranch.
5 日本メドトロニック調べ
6 MRI 検査とペースメーカ治療の現状とニーズに関する調査(日本メドトロニック調べ)
7 月刊新医療(発行:エム・イー振興協会)MRI設置施設名簿2012年4月1日現在 パート 1 :2012年6月号 p.134~155 パート 2 :2012年7月号 p.160~173 より,日本メドトロニックが算出
●問い合わせ先
日本メドトロニック(株)
Advisa MRI®広報事務局(株式会社オズマピーアール内)
TEL 03-4531-0212
http://www.medtronic.co.jp/