技術解説(ザイオソフト)
2022年3月号
腹部画像診断におけるITの技術の到達点
「Ziostation2」の腹部領域アプリケーション
下宮 大和[ザイオソフト(株)マーケティング部臨床応用開発グループ]
近年の医用画像ワークステーションの役割は,診断の補助にとどまらず,手術前のシミュレーションやナビゲーション,手術後のがん転移のフォローアップなどに広く臨床利用されている。なかでも腹部領域における医用画像ワークステーションの有用性は高く,手術前のCT画像から腫瘍の抽出,対象臓器の抽出,腫瘍に対する栄養血管を抽出することで術前のシミュレーションを行うための画像解析,手術後の合併症リスクの予測に用いられている。
本稿では,当社独自の画像認識技術“RealiZe”,および「Ziostation2」搭載の腹部領域のクリニカルアプリケーションから“IVRプランニング”についてご紹介する。
■三次元医用画像認識技術RealiZe
2017年に発表した画像認識技術RealiZeは,年々進化を遂げており,造影剤を用いない血管の抽出や,MR画像での臓器抽出など,幅広い領域での抽出を実現している。腹部領域においては,術前のシミュレーションに応用され,高精度な骨抽出,血管抽出,胃や大腸などの空気を多く含む領域の抽出など,目的に合わせた抽出が行える(図1)。また,近年,サルコペニア要因の有無が手術後の合併症発症率やQOLに影響することが注目されていることから,大腰筋の筋量を評価することが増えてきたが1),多くの施設では腹部CTから大腰筋断面積で計測している。しかし,CTのボリュームデータを最大限に生かすためには,体積として検討していくことも重要であるとわれわれは考えている。筋肉の抽出も行えるRealiZeでは,ワンクリックで大腰筋の自動抽出が行え,簡便に筋量の体積測定ができる(図2)。いままでは二次元で評価していたものを,立体的に三次元画像として評価していくことで,新たな知見につながることも期待している。
■IVRプランニング
従来は,救急の現場における出血の塞栓術において,マニュアル作業にてMPR面よりルートを探索し,パスを描画して手技に当たるというのが日常の現場だった2)。IVRプランニングでは,自動で大血管の抽出をし,ターゲットを選択することで,ターゲットまでのルートを自動探索するプロトコールになっている。主要な分岐血管の入口部にはマーカーが表示され,画像を回転することでカテーテルのかけやすさが容易にわかり,よりスピーディな手技を可能としている。
図3は肝動脈化学塞栓術(以下,TAE)のシミュレーション画像であるが,救急のIVRのみならず,さまざまなIVRの手技に対応可能となっている。
さらに,TAEのように栄養血管が2本ある場合は,図3に示すように色分け表示も可能となり,視認性も向上している。同時に2か所以上の塞栓術を行う際にも,各ルートを切り替えて観察することも可能だ。大動脈と主要な分岐のみをサーフェスレンダリング表示し,さらに,ray sum画像とフュージョンすることで,血管造影画像に酷似した仮想透視画像に仕上げている。
◎
本稿では,腹部領域におけるZiostation2の有用性を述べた。早期発見,早期診断をはじめ,術前画像の作成,治療後の経過観察,転移検索など,総括的な画像診断が今後は必要になってくることが予想される。ザイオソフトは,これからも独自の技術で患者に役立つ製品を開発し続け,医療に貢献していきたいと考えている。
●参考文献
1) Hirayama, K. : The mesurement of the psoas major muscle volume by 3 dimensional-CT for assessment of nutritional state. Journal of Japanese Society for Parenteral and Enteral Nutrition, 32(1): 871-877, 2017.
2) 一ノ瀬嘉明, 松本純一 : CT情報を透視下手技に活用するための仮想透視画像. INNERVISION, 32(12): 66-67, 2017.
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