セミナーレポート(ザイオソフト)
第52回日本医学放射線学会秋季臨床大会が2016年9月16日(金)〜18日(日)の3日間,京王プラザホテル(東京都新宿区)で開催された。16日に行われたアミン株式会社/ザイオソフト株式会社共催のイブニングセミナーES-1では,九州大学大学院医学研究院分子イメージング・診断学講座教授の渡邊祐司氏が座長を務め,東海大学工学部医用生体工学科教授の高原太郎氏と東京女子医科大学画像診断学・核医学講座准教授の長尾充展氏が,「Navigated by Ziostation2 all the way to your destination」をテーマに講演した。
2016年12月号
Navigated by Ziostation2 all the way to your destination
新時代のMR用自動後処理がもたらすパラダイムシフト
高原 太郎(東海大学工学部医用生体工学科)
ザイオソフト社製の3D医用画像処理ワークステーション「Ziostation2」に,新しいMR解析アプリケーションが搭載された。本講演では,拡散強調画像(DWI)に関連したアプリケーションとして,(1) MR/MRフュージョン,(2) Computed DWI,(3) ADCヒストグラム解析,(4) 完全自動WB-DWI(全身拡散強調画像)データ作成の4つを紹介し,最後に(5) MRA自動Segmentation/VR作成について述べる。
WB-DWIの最新動向
WB-DWIは近年,治療の経過観察,特に骨転移の診断にきわめて有用であることがわかってきた。
CTでは造骨性骨転移が増悪した際の石灰化と寛解時の良性石灰化を識別できず,また,骨シンチグラフィでは治療後の病変にも集積が遷延することがあるため病勢を評価できない。DWIでは悪性病変の位置を正確に表示するほか,良性石灰化では信号が消失することを複数の症例で経験しており,良悪性の鑑別が可能である。寛解例ではWB-DWIの画像所見に加え,腫瘍マーカーの低下によって完全に治癒していることを確信できるため,WB-DWIは非常に説得性の高い画像と言える。さらに,未治療の造骨性骨転移は,信号強度がやや低下するものの,ほとんどの病変が高信号に描出されるため,viabilityの評価にきわめて有用である。
全身MRIが骨シンチグラフィを明らかに凌駕するという報告1)もあり,また,欧米では骨転移の診断においてMRIの保険点数が最も高く設定されていることを鑑みても,骨転移の世界的な画像診断の流れはMRIに向かいつつあると言える。
DWI関連アプリケーションの特長
1.MR/MRフュージョン
骨転移の診断において,DWIはT1強調画像(T1WI)と比較しながら読影することが推奨される。多発転移など病変が多く比較が困難な場合は,T1WIとDWIのフュージョン画像が必須であり,病変の活動性の評価に非常に役立つが,一方で,フュージョン画像の作成は画像の濃度調整やDWIの閾値の設定などがきわめて難しいことが課題となっていた。
Ziostation2のMR/MRフュージョンでは,2DのT1WIを表示してフュージョンのレイアウトを立ち上げ,DWIを所定の位置にドラッグ&ドロップするだけでフュージョン画像が容易に作成可能であり,Windowや色味の調整,シネ画像の作成も簡単に行うことができる(図1)。また,スムーズな閾値設定のために非常に重要なAlpha/Blendパラメータが,スライダーバーで容易に変更可能である。
2.Computed DWI
Computed DWIは,2つの低いb値の実測点を結び,その延長線上にある,より高いb値を計算によって類推し画像を得る手法であり,背景信号を落として病変を際立たせることができるというメリットがある。
一方,Computed DWIでは骨に高輝度なノイズが出ると,それが骨転移に見えてしまうという問題がある。DWIはもともとSNRが低いため,ノイズがあると非常に多くのピクセルがb=0の信号よりも高信号となり,b値を上げることで高輝度になってしまう。この高輝度ノイズは各スライスに現れるため,Computed DWI をMIP処理すると画像全体に天の川のように顕著に分布し,内部が確認できなくなる(図2 a)。
実はこのとき,計算上はADCが負の値(ADC<0)となっており,数学的には明らかな誤りである。そのため,
ADC<0のピクセルをカットすることで,内部を確認可能となる(図2 b)。子宮内膜がんや神経膠腫のminimum ADC値に関する論文で,腫瘍の最小ADC値は0.4×10−3mm2/s以下にはならないことが報告されており2),ADC<0.4のピクセルをカットすれば,さらに背景信号が抑制された適切な画像が得られる(図2 c)。なお,試しにADC<1.0のピクセルをカットすると,当然腫瘍も消えてしまう(図2 d)。このように,Ziostation2のComputed DWIには,この非現実的低ADC値を任意値でカットするフィルタが搭載されている。
また,b値調整スライダーを用いることで,b値を変更した際の画像の変化を容易に確認可能である。さらに,“オートウインドウ機能”により,b値を上げてもADC値を持つピクセルの画像上の信号が変わらないようにWindowが自動で調整され,画像の印象が変わることなく観察することができる(図3)。
このほか,非剛体レジストレーションで位置ズレを補正し正確なフュージョンが可能となる。非剛体レジストレーションはb=0と1000で行うため,より正確なADCマップを作成することができる。
3.ADCヒストグラム解析
ADCヒストグラム解析は,2つの異なるb値のDWIデータから求めたADCマップを利用し,任意の領域のADCヒストグラム分布の形状変化から尖度(Kurtosis)や歪度(Skewness)を求め,経時的な変化を評価するものである。
図4は肝右葉後下区域の病変で,治療後に約1/4に縮小している。右上のグラフを見ると,治療前(赤)は歪度が正の値,治療後(緑)は負の値となり,ADCの中央値(median)も高くなっていることから,治療効果があったことが確認できる。
4.完全自動WB-DWIデータ作成
WB-DWIの作成に当たっては,複数枚のDWI画像を集め,3つのstationのWindowを合わせるが,うまく合わないことが多いほか,その後に作成する画像の種類も多く,かつすべての画像の白黒反転処理もあるため,非常に手間のかかる作業となる。熟練の診療放射線技師でも,画像処理を完了するまでに約15分を要していた。
しかし,Ziostation2ではWB-DWIデータ作成の完全自動化が図られ,すべての行程が約1分で終了するようになった。撮像終了後,“マルチステーション結合(W.I.P.)”をクリックして3つのstationの画像を開くと,すぐに図5のような画像が得られるようになり,きわめて有用である。
MRA自動Segmentation/VR作成
MRAの読影は通常,MIP画像で行われている。動脈瘤の診断にはVR画像の方が適しているにもかかわらず,MRAではこれまで作成されることはほとんどなかった。その理由の1つは,画像作成が自動化されていないためと考えられる。
Ziostation2の“頭部MRA解析”では,MRAの自動作成を行うと,VRのシネ画像やMIP画像など,あらかじめメニューパレットに設定された処理がすべて自動で完了する。
図6は実際の画像であるが,左中大脳動脈(MCA)の腹側下方に突出する動脈瘤がVR画像(a)にてより容易に観察できる。
まとめ
Ziostation2では,これらの高機能アプリケーションによってMRIの画像解析がきわめて容易に可能となり,臨床により多くの有用性を提供している。
●参考文献
1)Lecouvet, F.E., et al., Eur. Urol., 62・1, 68〜75, 2012.
2)Inoue, C., et al., J. Magn. Reson. Imaging, 40・1, 157〜161, 2014.
3)高原太郎 : MRI自由自在. 東京,メジカルビュー社,1999.
高原 太郎(Takahara Taro)
1984年 秋田大学医学部卒業。獨協医科大学放射線科研修医,聖マリアンナ医科大学放射線科助手,杏林大学医学部放射線医学教室助手,東海大学医学部基盤診療学系画像診断学講師などを経て,2007年 オランダ・ユトレヒト大学病院放射線科客員准教授。2010年〜東海大学工学部医用生体工学科教授。
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