New Horizon of 4D Imaging(ザイオソフト)
第76回日本医学放射線学会総会が2017年4月13日(木)〜16日(日)の4日間、パシフィコ横浜で開催された。ザイオソフト / アミンは15日に共催ランチョンセミナー16において、「New Horizon of 4D Imaging」を開催した。セミナーでは、森谷浩史氏(大原綜合病院副院長/画像診断センター長)を座長として、塚本信宏氏(さいたま赤十字病院)、山城恒雄氏(琉球大学医学研究科)が、“PhyZiodynamics”の有用性について報告した。
2017年7月号
JRC2017 ziosoft/AMIN Seminar Report New Horizon of 4D Imaging
4Dモーション解析を利用した呼吸追尾放射線治療計画の支援
塚本信宏(さいたま赤十字病院放射線治療科)
当院では、CyberKnifeによる放射線治療を行っており、ザイオソフト社の3D医用画像処理ワークステーション「Ziostation2」の動態解析技術である“PhyZiodynamics”が治療計画に非常に役立っている。本講演では、定位放射線治療における呼吸性移動対策と、CyberKnifeによる動体追尾の特徴を概説し、PhyZiodynamicsを用いた4Dモーション解析による治療計画支援の有用性について述べる。
定位放射線治療における呼吸性移動対策
当院で使用している「CyberKnife M6」(アキュレイ社製)は、ロボットアームに小型の放射線治療装置を搭載しており、多方向からのX線照射が可能なシステムである。頭頸部、肺、肝臓に加え、2016年には前立腺の定位放射線治療も保険適用となっており、治療に当たっては分布が最適となるようロボットが多方向からX線を照射して、方向・強さを最適化する。
この時、肺、肝臓などの呼吸性移動のある臓器の腫瘍には呼吸性移動対策が必要となるが、その方法は大きく分けて以下の3つとなる。1つ目はCyberKnifeによる呼吸追跡照射で、腫瘍の近傍に金(金属)マーカを留置し、それをX線透視で確認しながら、ロボットアームが追尾して照射する。2つ目は呼吸抑制照射で、呼吸によって腫瘍が動いてもX線が外れないよう十分に広い照射野を設定する。3つ目は間歇照射で、腫瘍がある特定の位置に来たときのみ待ち伏せして照射する。
CyberKnifeによる動体追尾の特徴
CyberKnifeは、ロボット型X線照射装置、可動式寝台、患者位置検出用X線装置で構成されており、天井に設置されたX線管から直交2方向のビームで撮影して患者位置を検出し、患者の体内にある金マーカの位置を経時的に把握する。それをロボットが追尾し、自動補正して標的に照射する。
CyberKnifeは、金マーカを基準に呼吸性移動を追跡して照射するので、治療計画においては金マーカが不動であると仮定して標的の輪郭を入力する。呼吸性移動があっても金マーカが腫瘍と同じように動いていれば、静止時の座標から設定した金マーカとの相対位置で問題なく治療することができる。
また、動体追尾にあたり、連続的に透視を行うと患者の被ばく量が増大するため、CyberKnifeでは、専用の呼吸追尾システムである“Synchrony”を使用している。これは、治療中の患者の腹部に貼られているLEDマーカと金マーカのX線画像から、呼吸位相における両マーカ位置のモデルを作成し、動いている腫瘍の照射時の位置を予測して追跡しながら照射する。これにより、連続的な透視を避けて被ばく量を低減することができる。
PhyZiodynamicsを用いた4Dモーション解析による治療計画支援*
1.治療計画における課題とPhyZiodynamicsの有用性
金マーカを腫瘍内に留置できれば動きが完全に一致するため最良であるが、実際には、腫瘍が血管に富む、留置経路上に大血管があるなど、腫瘍内への留置が望ましくない場合もある。出血や播種などの合併症を避けるため、留置実施医は留置のしやすさ、安全さを重視する。一方、治療計画医は、呼吸性移動の一致や治療計画用CTのアーチファクトなどを考慮し、腫瘍に近い位置に金マーカを留置してほしいと考える。つまり、留置のしやすさと計画のしやすさは、相反する要求と言える。
そこで当院では、この相反する要求を両立させるためにPhyZiodynamicsによる4Dモーション解析を利用しており、金マーカや腫瘍の描出および正確な動体追尾が可能である(図1)。
4D-CTによる放射線治療計画の手順は、まず呼吸性移動評価を行い、動きがあれば金マーカを留置する。治療計画用CTは4D撮影を行い、呼吸性移動をPhyZiodynamicsで計測してから、それに則って必要最小限のマージン設定を行い、標的の輪郭を入力、線量計算を行い、治療計画を終了する。
2.PhyZiodynamicsによる4Dモーション解析の実際
図2は肺がん症例で、標的の周囲に3つの金マーカが留置されているが、動きを視覚的に確認することで、距離の遠近にかかわらず、追跡に最適な金マーカを簡単に判定することができる。
図3は、肝がんのリピオドールによる肝動脈化学塞栓療法(TACE)後に辺縁から再発した症例である。金マーカを肝臓の辺縁に近い比較的血管の少ない位置に留置したため、腫瘍とはかなり離れているが、ほぼ同じように動いており、治療にはまったく問題がない。このように離れた位置に留置するためには、金マーカと腫瘍の相対的な動きをきちんと解析する必要があるが、PhyZiodynamicsでは、腫瘍と金マーカの相対距離の変化をグラフ化し、CSV形式で出力することも可能である(図4)。
図5は、肺がん症例である。金マーカの脱落を防ぐためには胸膜に近い細気管支に留置した方が有利との判断から、腫瘍の周囲に4つ留置されている。それぞれ腫瘍との位置関係を解析し、マーカを1つ、あるいは複数使用するかどうかを検討し、追跡に最適な金マーカを選定する。
図6は肺がん症例で、3つの金マーカが留置されており、それぞれの腫瘍との距離がグラフで表示されている。腫瘍とほぼ同じ動きをしているのは赤(マーカ1)であることが一目瞭然である。このグラフは1目盛りが1mmのため、マーカ1の相対的な動きの誤差は±1mmであり、追跡に最適であることが数値で理解できる。
3.診療報酬の算定におけるPhyZiodynamicsの有用性
診療報酬の定位放射線治療における呼吸性移動対策加算の算定基準は、呼吸による移動が10mmを超える腫瘍に対して呼吸対策を行い、XYZ方向のそれぞれが5mm以下となることが治療前に計画され、照射時に確認される必要がある。そのため、PhyZiodynamicsにより移動距離が数値で表示できれば、より客観的な算定根拠となる。
例えば、済生会横浜市東部病院にてCyberKnifeで治療を行った1493例における治療部位別の統計を見ると、50%以上が呼吸性移動対策を行っている。そのためには、4Dモーション解析のような動態解析ソフトウエアが必要である。
まとめ
4Dモーション解析による放射線治療計画では、相対的な動きや距離の解析が可能であり、必要十分かつ最小の安全域を設定して、正確に安全な治療が施行できる。
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