New Horizon of 4D Imaging(ザイオソフト)
2016年11月号
Ziostation2による手術支援画像の提供で肺がん専門病院のトップクラスの治療をサポート〜肺動静脈自動分離や仮想内視鏡表示で安全・正確な手技のための3D画像を提供〜
札幌南三条病院
社会医療法人北海道恵愛会 札幌南三条病院(病床数:99、関根球一郎院長)は、「呼吸器疾患、特に肺がんの診療を中心として専門性の高い有効な医療を提供する」ことを基本方針として、肺がんに対する手術、抗がん剤治療など外科、内科での診療を提供し、北海道のみならず全国的にも有数の患者数を誇っている。同院では、2016年7月に3DワークステーションをザイオソフトのZiostation2にリプレイスし、肺がんの術前シミュレーション画像や経気管支肺生検(TBLB)の支援画像などの提供に取り組んでいる。同院でのZiostation2活用の現況について、放射線部スタッフに取材した。
肺がん治療に特化し国内でも有数の実績を誇る
札幌南三条病院は、呼吸器内科、呼吸器外科のほか内科、消化器内科、脳神経外科などを標榜するが、肺がんの手術や化学療法が9割を占める。肺がんの手術件数は、2014年度、2015年度ともに257件で北海道では1位、全国でもトップクラスの実績で、退院患者数でも大学病院やがんセンターを抑えて全国1位と、肺がん専門病院として有数の治療実績を誇っている。
また、同院ではサイクロトロンとPET/CT1台、PET2台を導入して検診、早期診断、肺がん術後のフォローアップなどを行っているのも特徴だ。そのほか、画像診断機器ではCT2台、1.5T MRI1台、マンモグラフィ、一般撮影装置、X線透視装置各2台などが導入されている。診療放射線技師は9名。放射線部の小池 豪部長は、「民間病院で限られたスタッフではありますが、肺がんの手術や気管支鏡による生検などの支援を目的とした画像提供などを積極的に行っています」と説明する。
術前の3D-CTA画像で肺がん手術を支援
同院では従来から使用してきた他社製の3Dワークステーション(WS)をリプレイスして、新たにZiostation2を導入した。その理由を小池部長は次のように説明する。
「当院では、呼吸器外科から術前シミュレーションとして3D画像作成の依頼があり、以前から肺の血管や気管支の走行が確認可能な3D-CTA画像を提供してきました。最新のWSによって、より高度で安全な手技支援と患者さんの負担軽減、また、手術件数が年々増加する中で画像作成業務の効率化なども期待して導入しました」
肺がん手術は、8〜9割が胸腔鏡下手術(Video Assisted Thoracic Surgery:VATS)で、術前支援画像は月平均30件程度を作成している。当初は16列CTによる動静脈を分離しない3D-CTAだったが、2013年に新たに80列CT(東芝メディカルシステムズ社製「Aquilion PRIME」)を導入し、ダイナミックヘリカルスキャンを用いた3相撮影による肺動静脈分離画像の提供を開始した。
放射線部の平野真理技師は、術前画像提供の経緯について次のように説明する。
「肺の動静脈分離撮影を行うに当たって、スタッフの誰でもが作成できる方法として、80列CTによる3相撮影を採用しました。その後、3D画像の作成件数がさらに増えたことから、より簡便で患者さんへの負担も少ない方法を検討してきました。WSの性能が進化して技術的にも大きな進歩があったことから、WSの画像処理による新たな撮影法を期待してZiostation2を導入しました」
1相撮影でZiostation2で肺動静脈分離画像を作成
Ziostation2では、独自のアルゴリズムによる自動処理機能によって、造影CTデータから肺動静脈の抽出と動静脈の自動分離が可能になる。これによって、1回の撮影による1相撮影で肺動静脈分離画像の作成が可能になった。放射線部の杉山健吾技師は、Ziostation2での肺動静脈分離画像の作成について、「撮影時間は3相撮影時の13秒から5秒になり、呼吸によるズレがなくなりました。患者さんにとっても息止め時間が短縮して負担が少なくなり、撮影自体も簡単になって検査の効率も向上しました」と評価する。
従来、肺動静脈分離の3D画像の作成には4時間以上かかっていたが、Ziostation2では2時間程度まで短縮された。平野技師は、「Ziostation2では、自動処理でワンクリックで動脈と静脈を選択し抽出してくれます。末梢血管についても、血管の連続性を確認しながら修正することが可能です。しかし、CT値の差で分離する多時相撮影のデータと違って、作成者の判断と経験が必要で、まだ少し時間がかかっています。今後、症例を重ねて経験を積むことで、最終的には作成時間を1時間程度まで短縮できると考えています」と述べる。小池部長は、Ziostation2による術前シミュレーション画像の作成への期待について、「現在は主に2名が3D画像作成を担当していますが、自動抽出の精度がさらに向上することで、ほかのスタッフでも対応が可能になることを期待しています」と述べる。
気管支のVE画像を作成しTBLB(経気管支肺生検)を支援
同院では、肺野病変に対して気管支鏡を用いた生検(TBLB)を行って治療方針を決定している。TBLBは呼吸器内科が月35件程度行っているが、手技に際して病変まで必ず到達する気管支の経路をZiostation2で作成し提供している。手技の際に術者が確認する透視画像と類似したRaySum画像、気管支鏡の視野と同様の仮想内視鏡表示(VE)によって、TBLB検査を正確にナビゲートする。小池部長は、「呼吸器内科医は、手技の前にはVE画像を確認してシミュレーションし、術中はiPadを検査室内に置いてナビゲーションとして確認しています。最初は画像支援に懐疑的だったのですが、今では手技の際にはなくてはならないものとして頼られるようになりました」と述べる。平野技師は、Ziostation2での画像作成について、「Ziostation2では、簡単により詳細な画像が柔軟に作成できるようになりました。以前に比べて約半分の時間で作成できます。TBLBの支援画像の作成で大事なことは、病変に向かう気管支を選択してルートをつけることですが、Ziostation2では作成した気管支の3D画像で、対象となる気管支を選択することで、病変から気管支口までの最短ルートを、自動で選択してくれます」と説明する。VE画像についても、Ziostation2では複数点のCT値を設定できるため、実際の内視鏡画像に近い内腔表示が可能で、より正確で安全な手技の支援につながっていると平野技師は評価する。
マクロ機能など作成業務の効率化で時間短縮
同院では、微小で画像では確認が難しい病変に対して、バリウムマーキングを施した上で切除手術を行っている。この手術に際しても、バリウム留置のための仮想気管支画像の作成から、切除術のためのシミュレーション画像までを提供している。平野技師は、「Ziostation2をフルに活用して、病変とバリウムマーカーの位置関係がわかる3D画像を作成して手術を支援しています」と述べる。
そのほか、同院では、週2回の脳神経外科の診療と検診やドックの頭部MRAの画像作成に、Ziostation2の標準機能に追加された「頭部MRA解析」を活用している。MRIを担当する放射線部の宮崎暢也副部長は、「ワンクリックで必要な部分が抽出されることから、MRAの作成が従来の半分程度の時間に短縮されました。まだ症例によっては修正が必要なこともありますが、作業効率は大きく向上しています」と評価する。
Ziostation2の使い勝手について宮崎副部長は、「操作がWindowsに似ているので直感的に扱えます。また、キーボードのショートカットを使うことで、マウスから手を離さずにいろいろなメニューから操作でき、作業効率がいいですね」と述べる。杉山技師は、「Ziostation2では、よく使う機能をマクロ化してボタンとして登録でき、作業効率の向上につながっています」と評価する。
臨床のニーズに応じた3D画像作成を推進
Ziostation2の端末は、現在、放射線部のCT、MRI、PETなどの操作室を中心に9台が設置されている。診療科への画像提供は、作成した画像をシネ保存して画像サーバに転送し、PACSビューワで参照できるようにしている。平野技師は、今後の3D画像の診療科への提供について、「診療科の要望や診療のニーズを見極めながら、画像の提供方法などについて検討していきたいと思います」と述べる。また、今後の活用について、「Ziostation2は使えば使うほど、いろいろな可能性が広がりますが、それだけに機能やアプリケーションも多く上位機種であると感じています。肺動静脈分離について、さらに精度を向上させながら、肺切除解析などのアプリケーションについても活用していきたいですね」(平野技師)と展望する。
小池部長は、「肺がん治療で全国のトップを走る病院として、診療を高いレベルで支援できるように、Ziostation2を活用していけたらと考えています」と俯瞰する。肺がん診療の専門病院でのWSの可能性を生かした、さまざまな活用が期待される。
■症例1 肺動静脈分離画像
■症例2 TBLB支援画像
(2016年9月20日取材)
社会医療法人北海道恵愛会
札幌南三条病院
札幌市中央区南3条西6丁目
TEL 011-233-3711
- 【関連コンテンツ】