New Horizon of 4D Imaging(ザイオソフト)
第75回日本医学放射線学会総会が、2016年4月14日(木)〜17日(日)の4日間、パシフィコ横浜で開催された。ザイオソフト/アミンは、17日に共催のランチョンセミナー28において、「New Horizon of 4D Imaging」を開催した。セミナーでは、中島康雄 氏(聖マリアンナ医科大学放射線医学講座 教授)を座長として、林田健太郎 氏(慶應義塾大学医学部)、一ノ瀬嘉明 氏(国立病院機構災害医療センター)が、TAVI術前のプランニングや評価、救急・IVRを支援するZiostation2によるCTデータ処理について報告した。
2016年7月号
救急・IVRを支援するCTデータのポストプロセッシング
一ノ瀬嘉明 氏(国立病院機構災害医療センター放射線科)
はじめに
CTのデータは、1mm以下の詳細な解剖学的情報を持っており、IVRの術前検査でもMPRやVR、MIPなどさまざまな画像再構成法を用いて、有用な情報が提供されている。当院では、CTデータを生かすもう一つのオプションとして、Ziostation2を用いてRay Sumを使った仮想透視画像(Virtual Fluoroscopic Image)を作成している。本講演では、仮想透視画像の作成方法、救急や外傷などのIVRにおける活用、今後の展望について述べる。
仮想透視画像とは
仮想透視画像がどのようなものか、実際の症例を提示する。図1は、転倒して右側腹部を打撲して出血した症例で、図1aがCTのボリュームデータからZiostation2で作成した仮想透視画像である。Extravasationの位置を丸く示し、責任血管の走行をライン(パス)で表しており、実際のX線透視画像(図1b)とよく似ている。この画像から責任血管の起始部はL3棘突起上縁の2mm外側にあることがわかり、手技の際にはピンポイントでねらってカテーテル操作が可能になる。この症例で手技を担当したのはカテ経験1年弱の救急医だったが、血管を4秒程度で選択できた。仮想透視画像では、術前に透視と同様の画像で血管走行を確認でき、スムーズな手技が可能になる。以下に、仮想透視画像による症例を提示する。
図2は、術後に直腸断端に仮性動脈瘤が認められた症例で、左の内腸骨動脈末梢の蛇行した血管の先に出血部分が認められた。手技を行うに当たって仮想透視画像を作成し、蛇行血管のカーブの形状を把握しやすいCアームのワーキングアングルを検討したところ、LAO27°が最適と思われた。実際にその角度での血管走行を把握して手技を行ったところ、スムーズにカテーテルを進めることができた。仮想透視画像は3Dデータであり、画像上で任意の角度に振ることができるため、どの角度で見れば最も手技を行いやすいかを術前に把握して実際の手技に臨むことができる。また、骨だけではなくドレーンやチューブ、ステープラーやパッキングされたガーゼなども透視と同様に表示されるため、それらを目安にして手技に生かすこともできるのがメリットである。
仮想透視画像は、多発外傷や気管支動脈塞栓術など1回の手技で多くの血管を選択する必要がある症例で、より有用性を発揮する(図3)。例えば1本の血管を探ることなくピンポイントで選択して3分短縮できたと仮定すれば、手技全体で10本の血管を選択すればトータル30分程度の時間短縮となる。
さらに、血管系に限らず胆管など非血管系のIVRにも活用できる。図4は、急性閉塞性胆管炎に対して経皮経肝胆道ドレナージ(PTCD)を施行した症例である。仮想透視画像(図4a)では、胆管の走行や分岐、十二指腸の走行を描いており、この画像を用いて術前に標的胆管の分岐を重なりなく把握できる角度を検討している。穿刺した胆管から十二指腸遠位に至るルートは仮想透視画像で把握することができるため、必要最小限の造影にとどめ胆管内圧を上げずに手技を進めることが可能である。また、胆管造影時に閉塞部以遠が描出されないこともしばしば経験されるが、そのような場合にも仮想透視画像を参考に手技を遂行することができる。
仮想透視画像の作成方法(図5)
仮想透視画像は、Ziostation 2のRay Sum画像をベースとして作成する。Ray Sum画像は、操作画面右上部の“3D画像種”のリストから“SUM”を選択、白黒反転、2DフィルターのEdge enhanceをかけて作成する。Ziostation2はフィルター処理が優れており、これによってCTデータから透視画像にそっくりな画像を作ることができる。当院では、ここまでの工程をマクロ化してPPP(Pre-procedural Planning)ボタンを設置している。このボタンをクリックするだけで仮想透視画像が自動的に作成されるため、あとはターゲットに向かう血管のパスを描くだけでよく、簡単かつ迅速に手技を支援する情報を提供できる。
救急外来での重傷多発外傷でのIVR支援
当院の外傷診療における仮想透視画像の活用について紹介する。当院では、重症多発外傷患者が搬送される場合、到着前に放射線科医師がERで待機してPrimary Surveyに立ち会う。動脈シースは初療段階で積極的に挿入する。CTによる全身Panscanを行い、コンソール上の画像でIVRの必要性を判断する。緊急IVRが必要と判断した場合には、CT室から直接血管撮影室に移動するため、CT撮影後から手技スタートまでの時間は10分以内となる。この間に仮想透視画像が作成できれば、外傷IVRでの活用も可能になる。ボリュームデータを3Dで開き、PPPボタンをクリックして自動で仮想透視画像を作成し、パスを描く作業に移る。血管のパスの細かさは、手技開始までの時間の猶予によって異なる。脾損傷Ⅲb・腎損傷Ⅲbの多発外傷症例で、責任血管や周囲分枝のパスを描き、その走行を確認しやすい角度を検討するまで、およそ4分50秒で行うことができた(図6)。
仮想透視画像作成のための体制:システム
救急外傷のIVRで仮想透視画像を作成するような状況では、CT撮影から手技が始まる直前まで作業をすることになる。また、手技の進捗状況に応じて、さらにプロットを追加したり、より細かくパスを引き直すことも多い。そのため、当院では血管撮影室にもZiostation2を導入し、検査室内の天吊りモニタでも作成画面を見られるようにしている。刻々と進む診療の現場で、リアルタイムに、画像情報をどのように有効に生かしていくかを追究することが、救急放射線診療の真髄だとも言える。
Ziostation2を血管撮影室に増設するのがコスト面で難しい場合には、ザイオソフト社から2015年10月に発売された3D医用画像処理ソフトウエア「ZioCube」でも同様の作成が可能である。ZioCubeは、ソフトウエアとして薬機法の承認を受けた製品で、非常にリーズナブルなコストで既存のPCにインストールして利用可能となっている。
仮想透視画像作成のための体制:誰が作るか
仮想透視画像の作成を誰が行うかについては、当院では手技開始までに時間があれば術者自身が手技内容の予習を兼ねて作成し、手技の際には検査室内のモニタに並べて表示している。外傷症例のように一刻を争う手技では、操作室に画像作成や手技全体の統括を担当する“コンダクター”を置いている。術者のカテーテルの動きを見ながら、血管分岐の位置を指示する。術者はほかの画面に視線を移すことなくカテ操作に専念できるため、より迅速な手技が可能になる。また、診療放射線技師が作成を担当するケースも考えられ、日本救急撮影技師認定機構監修の『改定第2版救急撮影ガイドライン』ではPPPについても掲載されている。
さらに、マンパワー的に厳しい状況でも活用できるよう、ザイオソフト社ではZiostation2に搭載予定のソフトウエアとして「IVR プランニング」を開発中である。CTデータから仮想透視画像を作成し、大動脈の自動抽出、分枝血管のパス抽出、入口部の位置とサイズを自動認識し、出血や腫瘍などの病変部位までの血管ルートを自動で解析する。最新の血管撮影装置の一部にも類似した機能が搭載されているが、Ziostation2があれば血管撮影装置を更新しなくてもその利便性を享受できることになる。
まとめ
仮想透視画像は、CTデータから作成した透視ライクの画像で、術前に血管の走行が確認でき、角度を振って最初から最適なワーキングアングルで手技ができ、スムーズかつ正確な治療を可能にする。Ziostation2を用いて3ステップで簡単に作成でき、救急や外傷のIVRのみならず、非血管系や気管支鏡など透視下の手技に幅広く適応可能であり、安全な手技のためのナビゲーションとしてより広く活用されることを期待している。
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