New Horizon of 4D Imaging(ザイオソフト)

2014年1月号

手術前ナビゲーション画像作成におけるziostation2の使用経験報告

鳥取県立中央病院
中央放射線室 小山 亮、上山忠政、深田尚洋、川上美穂、小谷 怜、澤 和宏、岡村章仁
放射線科 松末英司

当院は、2013年2月に320列CT(Aquilion ONE:東芝メディカルシステムズ)と合わせてziostation2を導入した。ネットワーク構成は、CT室・診療科(脳神経外科、心臓内科)・救急外来を結ぶ医療用画像管理システム(PACS)とは独立したものとし、PACSトラブルの際に画像参照端末としての使用も可能とした。本稿では、当院におけるziostation2を用いた手術前ナビゲーション画像作成について、実際の画像を提示しながら紹介する。

[画像診断の現況]

当院におけるCTの年間検査数は、以前より使用している64列CT(Ingenuity Core 64:フィリップス)と合わせて約1万8000件(2012年実績)で、そのうち血管の画像処理を要するものは、冠動脈50件/月、頭頸部25件/月、体幹部30件/月となっている。画像処理に携わるのは、中央放射線室の18名のスタッフ中6名(CT:3、MRI:2、RI:1)が、ローテーションで対応している。画像処理に際しては、新しく導入されたziostation2を中心に、従来から使用されている他のワークステーションを含めて、画像の処理方法や表示方法などを依頼された診療科と検討しながら、手術前のナビゲーション画像作成を行っている。

[頭頸部領域]

図1 動脈・静脈・脳表画像・骨画像の加算表示

図1 動脈・静脈・脳表画像・骨画像の加算表示

動脈・静脈・脳表・骨を別々に抽出して加算表示を作成することを基本(図1)とし、疾患に応じて画像処理を追加している。さらに、開頭方向や術式の決定のために、手術の際に必要な解剖の位置関係が把握できるように、依頼医と相談しながら術前のナビゲーション画像を作成している。ziostation2は異なるシーケンスでサブトラクションできるため、動きによるズレの少ない頭頸部領域では有用であり、単純撮影で脳表画像が自動抽出できることも画像作成時のストレス軽減に寄与している。聴神経腫瘍などで行われている後頭下開頭法では、ナビゲーション画像としては、後頭乳突縫合とS状静脈洞の位置関係が重要となっている(図2)。図3は、クモ膜下出血で発症し、頭蓋底部のサブトラクションによって、脳底動脈瘤に加えて、内頸動脈-後交通動脈分岐部の動脈瘤が描出された例、図4は眼球突出で発症し、単純CTで上眼静脈の拡張を認め、CTAによって内頸動脈海綿静脈洞瘻が描出された症例である。ziostation2による頭部領域のサブトラクションは、血管病変の抽出の精度が良く、動脈瘤や血管奇形、動静脈瘻などの症例における有用性が高い。

図2 聴神経腫瘍等で行われる後頭下開頭法での作成例

図2 聴神経腫瘍等で行われる後頭下開頭法での作成例

 

図3 頭蓋底内の動脈瘤におけるサブトラクション

図3 頭蓋底内の動脈瘤におけるサブトラクション
この症例では、脳底動脈瘤(A)ではなく頭蓋底の骨で同定困難な内頸動脈-後交通動脈分岐部の動脈瘤(B)からのクモ膜下出血であった。頭部領域のサブトラクションは精度が良く、この症例のように、骨によって血管の同定が困難な症例では、有用性が高い。

 

図4 海綿静脈洞動静脈瘻のサブトラクション

図4 海綿静脈洞動静脈瘻のサブトラクション
内頸動脈海綿静脈洞瘻では、内頸動脈から海綿静脈洞を介した上眼静脈の確認が、頭蓋底のため描出困難であるが、サブトラクションを使用することで、動脈相において、眼動脈と併走して(A)、海綿静脈洞領域から逆行性に拡張した上眼静脈(B)を確認することが可能となる。

 

[胸部領域]

図5 肺動静脈分離画像

図5 肺動静脈分離画像

大動脈や肺動静脈、冠動脈や左房・肺静脈の形態評価を行っている。肺がん術前の肺動静脈評価では、Aquilion ONEの特徴であるボリュームスキャンで動脈相と静脈相を別々に撮影し、末梢の血管も評価できるように努めている(図5)。2013年10月に行われたziostation2のバージョンアップによって、肺動静脈分離ソフトは血管自動抽出機能が向上しており、作業の負担は改善されている。
冠動脈解析では、ステントや石灰化の影響が少なくなるよう、画像フィルタで画質調節するとともに、自動画像作成機能を用いて、冠動脈表示のパターンをあらかじめ設定することが可能であり、他のワークステーションより解析時のストレスが少ない(図6)。さらに、バージョンアップによる冠動脈自動ラベリング機能の精度も良く、今まで以上に解析の時間が短縮されている。そのほかの術前評価では、不整脈治療のためのアブレーションの術前には、肺静脈から左心房の形態評価(図7)、気管支鏡検査前には、気管支の分岐の評価(図8)として、仮想内視鏡画像(VE:virtual endoscopy)を作成している。

図6 冠動脈解析(a)

図6 冠動脈解析(a)
マクロ処理などの利用が可能であり(b)、他のワークステーションに比べて、作業効率が良い。また、独自のフィルタを調整することで幅広い画質調整が可能である。

 

図7 アブレーション術前画像

図7 アブレーション術前画像
肺静脈と左心房の形態評価、大きさの計測、VEを作成。

 

図8 仮想気管支鏡画像

図8 仮想気管支鏡画像
気管支鏡検査前にVEを作成することで、手技のサポートが可能となっている。
仮想内視鏡は非常にシンプルで使いやすい。実際の内視鏡からは観察不可能な方向からの評価も可能である。

 

[腹部領域]

大血管や各臓器の評価を行っている。任意多断面再構成(multiplanar reconstruction:MPR)を加算することで、血管周囲の解剖も容易に観察できる(図9)。結腸切除術前の末梢血管評価などで、選択的に血管を抽出する場合は、自動血管抽出機能の精度が高く使いやすい(図10)。臓器の評価の際には、ziostation2は多彩な画像処理機能を有し、末梢の血管評価でも選択的に処理できるため、複雑な処理をする場合でもストレスが少ない。

図9 腹腔内評価

図9 腹腔内評価
上腸間膜動静脈、門脈を巻き込んだ膵がん症例。血管を強調し、術前のナビゲーション画像として使用している。

図10 選択的血管抽出表示

図10 選択的血管抽出表示
結腸がん術前評価。上腸管膜動静脈と下腸間膜動静脈の走行の把握が可能である。

 

[まとめ]

当院のようにローテーションで、診療放射線技師が複数のモダリティの撮像に対応できることが求められている施設では、画像処理には、精度より使いやすさが求められる傾向にあるが、近年のワークステーションでは、画像処理能力の進歩によって、高い精度で使いやすいものとなってきている。今後も、ziostation2をはじめとしたワークステーションを駆使して、各モダリティで得られた画像情報を最大限に生かしつつ、関係診療科と連携、相談を密にして診断、治療に直結した画像を迅速に提供できるよう日々努力していきたい。

 

鳥取県立中央病院

鳥取県立中央病院
鳥取県鳥取市江津730
TEL 0857-26-2271

 

 

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