New Horizon of 4D Imaging(ザイオソフト)
2013年7月号
JRC2013 ziosoft/AMIN Seminar Report 超四次元画像“PhyZiodynamics”テクノロジーによる定量解析の可能性
呼吸動態をPhyZiodynamicsで観る 〜呼吸動態の局所的解析
森谷浩史 氏(大原綜合病院附属大原医療センター画像診断センター長)
第72回日本医学放射線学会総会が、2013年4月11日(木)〜14日(日)の4日間、パシフィコ横浜で開催された。ザイオソフト/アミンは、最終日の14日に共催のランチョンセミナー27において、「New Horizon of 4D Imaging〜超四次元画像PhyZiodynamicsテクノロジーによる定量解析の可能性」を開催した。セミナーでは、山下康行氏(熊本大学大学院生命科学研究部放射線診断学分野教授)を座長として、真鍋徳子氏(北海道大学病院放射線診断科講師)、森谷浩史氏(大原綜合病院附属大原医療センター画像診断センター長)が講演した。PhyZiodynamicsによる心機能解析と呼吸動態解析への応用についての講演を“特別編”として誌上採録する。
[ADCTとPhyZiodynamicsを用いた肺の局所動態解析]
PhyZiodynamicsは、2つのphaseから形態の変化、濃度の変化などを解析して補完していく技術で、従来の補完技術とはまったく異なるアプローチで精度の高いデータ補完を実現する技術である。2つのphase間で各ボクセルがどのように変化したか、ボクセルの移動情報を持っており、データそのものが機能解析のデータとなる。また、phaseの間のデータを補完することで動きを滑らかに補完することが可能である。さらに、複数のphaseを補完することで、特にCT画像ではノイズリダクションに大きな効果を発揮する。
われわれは、肺野領域で320列面検出器CT(ADCT)を用いて連続したボリューム撮影を行い、動態情報から局所的な肺の機能解析を行っているが、このPhyZiodynamicsを用いた低線量での撮影と、呼吸動態の定量的な解析を行ったので、その成果を報告する。
[ADCTのダイナミックスキャンによる肺の4D撮影]
ADCTでは、寝台を固定したまま320列(160mm)の範囲を撮影できる。われわれは、肺動静脈瘻(AVF)などの症例で、通常の静脈注入の造影CTで連続したボリューム撮影を行うダイナミックスキャン(dynamic volume scan)を行って血行動態を観察している(図1)。ADCTでは、Iso-phasicな撮影が可能であるため、血管造影の肺動脈撮影と同様の情報を立体的に得ることができる。
このダイナミックスキャンを呼吸動態に用いて撮影を行った。呼吸動態の撮影では、被ばく線量への配慮が必要で、4phase、もしくは6phaseで撮影している。以前は、60mAでの撮影だったが最近では20mAまで線量を下げている。撮影のタイミングは、呼気の片道、吸気の片道、あるいは1呼吸で行う。進行した肺がんで、胸壁への癒着、浸潤があるかどうかを判断する目的で行ったダイナミックスキャン(図2)では、浸潤の有無は判断できたが、phaseが少ないため、よりスムーズな動きが必要だと考えられた。肺野の葉間胸膜に接した腺がんの症例では、葉間の癒着の有無を確認するためには、さらに連続的な情報が必要であり、連続スキャン(continuous scan)で撮影を行っている。
[ブタの生肺を用いた呼吸動態ファントムによる撮影]
そこで、ブタの生肺を用いた呼吸動態ファントムを作成し、ADCTで連続スキャンを行い、肺の構造がどの程度見えるか検討した。作製したファントムは、ブタの生肺を密封した容器の中に装着し、陰圧と陽圧を切り替えることで肺の呼吸動態を再現させた(図3)。ファントムでは、線量を制限することなく連続スキャンができるため、肺の小葉構造が拡張する様子や、縮んでいく様子が鮮明にとらえられている。この4Dデータから、PhyZiodynamicsを用いて気管支のStretch viewを作成した。Stretch viewの短軸像では、同一の気管支で形態の変化を連続してとらえられており、その周辺の小葉が膨張していく様子もわかる。被ばく線量に配慮が必要な臨床画像ではここまでの高解像度の動態画像の撮影は難しいが、PhyZiodynamicsでは補完技術による動きの補正、ノイズリダクションなどが可能になることが期待される。
[PhyZiodynamicsによる呼吸動態解析]
◎データ補完によるスムーズな動態観察
PhyZiodynamicsを呼吸動態解析に応用した臨床症例を提示する。PhyZiodynamicsによる動態画像の再構成では、フレーム間を補完することで限られた時相からスムーズな動画を得ることが可能で、図4のようなすりガラス状陰影を示す腺がんと、充実性の扁平上皮がんでは、病巣の硬さの違いを視覚的にとらえることができる。
◎ノイズリダクション効果と超低線量スキャンによる動態撮影
CTでは、近年、逐次近似再構成法を応用した低線量撮影技術が搭載されており、ADCTではAIDR 3Dが利用可能になっている。100mA程度の低線量CTでは、AIDR 3Dだけでもノイズ除去の効果は見られるが、これにPhyZiodynamicsを加えることで、さらにノイズ低減が可能になる。動態撮影においても、肺野条件でオリジナルの6フレームの撮影データから、AIDR 3D処理とPhyZiodynamics処理を加えることで、動態画像を30フレームに増やして、滑らかな動きとノイズ低減を実現している。動態の低線量撮影では、AIDR 3Dだけでは線量不足のために情報のない画像の画質を改善させることは困難だが、PhyZiodynamicsでは別の位相のデータを利用することで、動きの補完とノイズ除去を両立することができるため優れた技術だと言える(図5)。
また、さらなる撮影線量の低減についても、60mAでの撮影データでもPhyZiodynamics処理でノイズが低減されて肺野の視覚的な評価が十分可能と思われるが、さらに超低線量の20mAでも、それぞれのフレームでは、線量不足のため構造が欠損していても、PhyZiodynamics処理では肺門の近くの気管支がしっかりと描出されており、十分評価が可能であると考えられる(図6)。
◎Dynamic MPR
従来、動態画像でのMPR表示では、面がずれてしまい目的の構造物を追い切れないという問題があったが、PhyZiodynamicsでは“Dynamic MPR”によって、気管支に沿ったCPR表示でも再現性よく、同じ構造を見ることが可能になる。Dynamic MPRでは、表示場所を3点で固定するとその面を追随して表示でき、呼吸に合わせた気管支の面積や、気管支壁の面積などの計測を信頼性高く行うことが可能になる。図7は、3点を固定したDynamic MPRで、Virtual endoscopyによって、右の中間気管支間を見ているが、腫瘍によって狭窄していることがわかる。Virtual endoscopyでも、位置を固定した定点での観察が可能で、従来、実際の内視鏡画像でしか得られなかった気管支内腔の動的情報がCTの4Dデータで可能になる。また、これらの情報からDynamic ROI、Dynamic VOIなどの定量評価が可能である。
[肺野領域における4Dモーション解析を使った動態評価]
図8は、PhyZiodynamicsを使ってボクセルの移動のデータから作成した肺の“4Dモーション解析”のVelocity mapである。aは気管支炎、bは高度のCOPD、cは特発性肺線維症(Idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)の肺野画像だが、組織の移動の速度をカラーマッピングして動態画像に重ね合わせて表示している。比較的正常に近い気管支炎の症例(a)では、カラーマップは左右対称で、かつ肺門から末梢にかけて均一な分布をしているが、重度のCOPD(b)では動きの悪い硬い部分(青)と、動きの強い(赤)の部分が不均一に分布していることがわかる。
図9はCOPDの症例だが、4Dモーション解析のVelocity mapでは、肺野の中に不均一に見える部分があり、肺の軟らかさや、動きの違いを表していると考えられる。動きが大きい赤に近いホットスポットは換気に関係していると考えられ、換気シンチグラフィと比較することで、新たな知見が得られるのではと期待している。
[まとめ]
PhyZiodynamics技術は、複数の位相、時相でボクセルとボクセルを結ぶ技術であり、機能解析、円滑な動きの補完、そしてノイズリダクションに効果があると考えられる。特に、ADCTを用いたダイナミックスキャンでは、補完による動態画像のなめらかな動きへの変換、ノイズリダクション効果などが期待できる。
- 【関連コンテンツ】