New Horizon of 4D Imaging(ザイオソフト)
2013年5月号
ziostation2による頭部CT-Perfusionの活用
大村知己、豊嶋英仁、木下俊文(秋田県立脳血管研究センター 放射線科診療部)
秋田県立脳血管研究センターでは、320列CT導入と同時に、急性期および慢性期虚血性脳血管障害を対象にしてCT-Perfusionを臨床で数多く施行し、診断および治療方針の決定に有用な情報を提供してきた。特に、慢性期症例においては、同時期に測定したポジトロンCT(PET)による脳循環測定と比較し、CT-Perfusionの特性を評価してきた。近年のCT装置の多列化は、ダイナミックボリュームデータ(4Dデータ)の取得に大きなメリットをもたらしたが、4Dデータの有効活用には、汎用性と専門性を兼ね備えたワークステーションが必要と考える。本稿ではCT-Perfusionについて、ziostation2の機能を用いた解析方法と、病態予測によるマップの評価について、他モダリティと比較も含めて述べる。
[CT-Perfusionの現状とワークステーションの役割]
CT-Perfusionは、造影剤脳内循環のダイナミックデータの動脈入力関数(arterial input function:AIF)と、脳組織時間濃度曲線(time density curve:TDC)のデコンボリューション処理により得られる伝達関数より、脳血流量(cerebral blood flow:CBF)、脳血液量(cerebral blood volume:CBV)、平均通過時間(mean transit time:MTT)、ピーク到達時間(time to peak:TTP)のPerfusionマップを定量画像として得る検査法である。Perfusionは、灌流という意味であるが、ヨード造影剤は血液脳関門を通過しない非拡散トレーサーであるため、CT- Perfusionでは脳組織毛細血管床レベルの灌流を評価している。PETなどの核医学検査で用いられるトレーサーは拡散性である。
ワークステーション(WS)に求められる機能の1つに4Dデータの取り扱いやすさが挙げられる。機能を有効活用したPerfusionマップと血管の3D表示(図1)、4D imagingによる血行動態表示により、臨床現場でより有用な検査となりうると考える。
一方で、Perfusion解析処理装置としての機能も重要である。デコンボリューション解析処理は、従来から数種類の解析法が提唱され臨床応用されているが、それぞれが特徴を持った解析法である。解析法の特性を理解したユーザーが、多角的な視点からPerfusionマップの評価を行う上で、数種類の解析法の実装もWSに求められる機能である。
[ziostation2によるCT-Perfusion解析]
4DデータとしてのCT-Perfusion元画像は膨大な枚数となり、320列CTでは数千枚に上る。ziostation2の“CTボリューム血流解析”では、4Dデータの解析処理がわずか数分で終わり、施設ごとにさまざまに想定されるダイナミックデータ間隔、スライス厚にも対応したPerfusion解析が可能である。主なデコンボリューション解析法は、s-SVD法、およびb-SVD法が実装され、血管除去など解析パラメータも任意に設定可能である。また、解析の過程で元画像へのROI設定によるTDCの確認および、数値情報としてのファイル書き出しが可能である。これら機能の有効活用により、Perfusionマップの評価について理解がさらに進むと考える。
[デコンボリューション解析法と病態予測によるPerfusionマップの理解]
1.灌流圧低下に伴う脳血管自動調節能の概念
血管の狭窄および閉塞により脳灌流圧が低下した虚血領域では、灌流圧を維持するために脳血管の自動調節能(autoregulation)が働き、主幹脳動脈皮質枝が拡張して血流を維持する。血管拡張作用は脳循環予備能とされ、CBVの増加に反映される(図2)。この概念を理解して病態予測をすることが重要である。
2.急性期脳梗塞におけるCT-Perfusion
急性期脳梗塞の治療適応は、early CT-signsおよび、MRI拡散強調像による広範な早期虚血変化が見られない場合とされる。Perfusionでは、これらの変化が表れる以前の状態を血流変化としてとらえることが可能であり、治療方針の決定と予後予測という点からも有用な情報を提供する。CBVの低下領域は最終梗塞巣、その周囲に存在するCBFの低下領域は可逆性の領域とされ、治療による改善が期待できるとされる。
図3は、右内頸動脈塞栓症の発症2時間後のCT-Perfusion画像である。元画像の中大脳動脈域脳組織TDCでは、虚血側で側副血行路を介した逆行性の血行動態による大幅な通過遅延が見られるが、TDCカーブ下面積は健常側とほぼ同等であり、自動調節能による血管拡張はほとんど見られない。b-SVD法によるPerfusionマップではMTTの延長による虚血側のCBFの低下が見られるが、CBVには低下が見られず、治療により改善が見込める領域と見ることができる。
急性期脳梗塞では、慢性期と比較して通過遅延が大幅に延長するため、b-SVDでも虚血側のCBF低下が比較的明瞭である。しかし、自動調節能の働きによる皮質枝の拡張および、側副血行路によりCBVが上昇し、CBFに影響するケースも考えられる。この場合、定性評価を優先して虚血域を明瞭に描出する(最大限の低下と見る)目的で、s-SVD法によるCBFの評価も有用と考える。
3.慢性期症例における高度な虚血状態におけるCT-Perfusion
図4は、慢性期左内頸頚動脈高度狭窄症例のCT-Perfusionおよび脳循環代謝PETの画像である。ゴールドスタンダードのPET-CBFでは、虚血側の広範な血流低下が見られる。元画像の中大脳動脈域脳組織のTDCでは、虚血側が健常側よりもCBVに相当するカーブ下面積が広く、造影剤通過の遅延が見られる。
通過遅延は解析法の違いで解釈が異なり、Perfusionマップにも違いが表れる。b-SVD法では頭蓋内の造影剤通過を正確にするため、頸部狭窄などによる頭蓋内への造影剤到達の時間差を補正する。補正によりMTTは頭蓋内通過のみを反映するが、血管拡張によるCBVの上昇の影響を受けて、central volume principleによりCBV/MTTで算出されるCBFでは、健常側、虚血側の左右差がほとんど見られない。一方、s-SVD法では通過遅延に到達遅延が加わり、虚血側のMTTがb-SVD法よりも遅延するが、CBVも上昇しているため、CBFの低下が明瞭となる。したがってPET-CBFと比べると、b-SVD法CBFでは過小評価し、s-SVD法CBFが類似した描出を示した。
さらに、虚血が進むと血流が低下するが、脳梗塞に陥らないように酸素摂取が亢進する働きが見られる。酸素摂取の亢進は脳代謝予備能とされ、脳循環予備能と併せて段階的に働き、明確なパターン分類には至らないが、高度な虚血状態では解析法と病態予測からPerfusionマップを評価することが重要と考える。
4.軽度な虚血状態におけるCT-Perfusion
軽度な虚血状態では、血流低下がほとんど見られない症例が多く、核医学検査においても安静時CBFが正常である場合が多
い。図5は右頸部内頸動脈閉塞症例のCT-Perfusion、および脳循環代謝PETの画像である。元画像の中大脳動脈域脳組織TDCでは、健常側と虚血側の脳組織TDCの形状はほぼ一致し、血管拡張によるCBV上昇、および通過遅延によるMTT延長がないことが示唆される。しかし、健常側と比較して虚血側は閉塞による造影剤到達時間の遅延が見られる。この場合、b-SVD法では虚血側の到達時間の遅れを補正するため、MTTでは健常側、虚血側の左右差が見られず正常灌流を示し、CBFにおいても同様である。一方、s-SVD法では遅延補正がないためMTTの延長に表れ、CBF低下を示す。PET-CBFでは患側に血流低下は認められないことから、s-SVD法CBFは過大評価を示したことになる。
CT-Perfusionのマップ評価について、当施設における臨床経験から、病態予測と解析法を踏まえながら解説した。代表的と思われる3症例を提示したが、虚血の程度と予備能は段階的な変化であり、提示症例のように明確な評価には至らないことも多いと考えられる。ゴールドスタンダードのPET-CBFと比べると、b-SVD法CBFおよびs-SVD法CBFは、病態を反映して過小評価または過大評価する特徴を有していた。言えることは、一解析法だけでのCT-Perfusion CBFマップは、虚血の程度を予測し難いということである。
以上より、臨床で有用なCT-Perfusion検査であるためには、撮像のほかに、病態および解析法の理解と、各種解析法を実装したWSの有効活用が重要と考える。
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