New Horizon of 4D Imaging(ザイオソフト)
2015年9月号
Ziostation2の遠隔利用で大学病院と東病院での一体的な3D画像処理環境を構築 〜2病院を統合した運用でCT冠動脈解析など高精度な3D画像を提供して診療を支援〜
北里大学病院 放射線診断科/放射線部
神奈川県相模原市の北里大学は、2014年に大学病院が新規オープン、それに続いて同じく相模原市にある北里大学東病院と機能再編を行う“新病院プロジェクト”を進めている。放射線部門においても、CTやMRIなどのモダリティをリニューアルして診療機能の強化を図ると同時に、画像情報システムも2つの施設を一体的に運用できる体制を整えた。3D画像処理は、ザイオソフトの「Ziostation2」を採用し、画像処理サーバの遠隔利用によるネットワークを構築した。新病院での3D画像処理システムの構築と運用について、放射線診断科の井上優介教授と放射線部スタッフに取材した。
大学病院と東病院で一体的な診療体制を構築
北里大学病院では、相模原地区における新病院の建設と病院機能の再編を核とする新病院プロジェクトを、2005年から進めてきた。2014年5月に、急性期医療や特定機能病院として高度な診療機能を提供する新病院(以下、大学病院)がオープン。続いて、600m離れた北里大学東病院(以下、東病院)との機能の再編を進め、東病院にあった消化器外科・内科、整形外科などの診療部門を大学病院に集約。東病院では、精神科、神経内科のほか、回復期リハビリテーション病棟や心臓二次予防センター、健康科学センター(人間ドック)など、こころの医療と、回復期、慢性期への橋渡しの役割を担うべくリニューアルを進め、2015年5月から診療をスタートした。
放射線診断科および放射線部は、2つの病院を合わせて一体として運用されており、スタッフは放射線科医師が16名(うち放射線診断専門医10名)、診療放射線技師が大学病院81名、東病院10名。画像診断機器は、大学病院にCTが診断部門に4台、そのほか救命救急・災害医療センター1台、手術室に1台の計6台、MRIは3Tが3台、1.5Tが2台の計5台が稼働する。東病院には、CT、MRIが各1台導入されている。検査件数は、CTが1日平均で大学病院160件、東病院10件、MRIが大学病院75件、東病院15件などとなっている。
井上教授は、新病院での放射線診療について、「新病院では、特定機能病院としての高度先進医療を支えるため、最新の画像診断機器を導入し、中央サービス部門としての役割を果たしています。同時に、大学病院と東病院の一体的な運用を行うというコンセプトの下、放射線診断科、放射線部として診療をサポートする体制を整えました。機能再編に伴う東病院のリニューアルが終了し、新たな体制での診療が始まり、検査件数も少しずつ増加しています」と述べる。
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2病院で統合的な運用が可能な画像情報システムを構築
新病院での画像情報システムについても、大学病院と東病院の一体的で円滑な運用のため、2つの病院の画像診断業務を統合的に運用できるシステムが求められた。PACSは、それまで2つの病院で3つの異なるベンダーのシステムが稼働していたものを一本化し(PSP社製)、3D画像処理システムはザイオソフト/アミンのZiostation2で、遠隔利用が可能なネットワークを構築した。
井上教授はシステム構築のコンセプトについて、「2つの病院、複数のベンダーに分断されていたシステムを統合し、一体的な診療が可能な体制を構築しました。実際に両施設を受診されている患者さんも多くいますが、患者さんは“北里大学”にかかっているのであり、大学病院か東病院かは関係ありません。PACSでは両病院で別々の患者IDが発行されていることが問題でしたが、内部的に“名寄せ”の仕組みを取り入れて、IDを変更せずにあたかも1つの施設かのような運用が可能になりました」と述べる。
2病院での3Dシステムの遠隔利用環境を実現
Ziostation2による3D画像処理ネットワークは、大学病院にサーバを設置し、東病院を含めたネットワークを構築することで、2施設での3D画像処理システムの遠隔利用が可能になっている(ネットワーク構成図参照)。東病院では、機能再編によって急性期疾患の撮影は減少したが、心臓二次予防センターでの心血管疾患患者への定期検査での冠動脈CTや、人間ドックでの肺がん検診の低線量CTなど3D画像処理が必要な検査が増えている。2病院での遠隔利用が可能なシステムの導入について井上教授は、「心臓二次予防センターでは、心疾患患者の定期的なフォローアップとして冠動脈CTを行っており、この解析には3DWSが不可欠です。3D画像処理に関しても大学病院と一体となった運用が求められることから、2施設を1つのネットワークで運用できるシステムとしてZiostation2を導入しました」と説明する。
Ziostation2の端末は、大学病院にはフル機能クライアント(VGR)端末がCT操作室エリアに5台、MRI室、救命救急・災害医療センターのCT室、核医学検査室、手術室に各1台で計9台。東病院ではCT室とMRI室に各1台が設置されている。また、読影室では、PACS端末にZiostation2をインストールした相乗り端末が、大学病院で9台、東病院に2台が稼働する。両施設間は電子カルテやPACSと同じ回線で接続されているが、東病院の伊熊秀記主任は、「サーバが別施設にあるという意識はありません。Ziostation2でのデータの転送や画像処理についても同一施設のようにストレスなく利用できています」と使用状況を説明する。
◆北里大学2病院におけるZiostation2ネットワーク構成図
冠動脈解析、MRフロー解析などで各科に情報提供
大学病院では、CTについてはMPRの作成を含めて、頭部の単純撮影以外はほぼ全例で3D画像を作成しており、1日130件。MRIは、心血管の流速計測やMRトラクトグラフィーの作成などを行っている。CT室では、7名のスタッフで検査と画像処理業務を分担して行っている。CT室の塙 宏典主任はZiostation2による画像処理について、「MPRのほかは、血管や骨の3D構築がメインです。冠動脈CTの血管処理、肺の気管支処理、肝臓体積測定などを行って、診療科に提供しています。Ziostation2は、血管や気管支の抽出など自動処理の精度が高く、手術支援などに有用な画像作成が可能です」と説明する。秦 博文技師長補佐は3D作成業務について、「Ziostation2では、技師が作成したデータを“ワークスペース”に保存することで、医師がそのデータを使って必要な画像処理や解析が可能です。クライアントサーバ型で、院内のどの端末からでもデータを共有して作業できますので、効率的な運用が可能です」と評価する。
MRIの画像処理では、“MRフロー解析”を用いた心血管の流速測定などを行っている。秦技師長補佐は、「Ziostation2では、1つの心位相でROIを設定すれば位相ごとに変化する領域を自動的に追従するDynamic ROI機能によって、手間や時間をかけずに簡単に精度の高い解析が可能になります」と評価する。そのほか、MR/MRのマルチデータフュージョンによる“MRトラクトグラフィー”を脳腫瘍の術前情報として提供している。
PhyZiodynamicsの活用やCTCなどに取り組む
Ziostation2による今後の取り組みについて塙主任は、「PhyZiodynamicsについては、今後当院でも開始予定のTAVIの術前プランニングなどで適応を検討していきたいですね」と述べる。同院では、術前検査としてCT Colonographyの導入も予定しており、検査や読影体制の準備を進めている。
井上教授は、3DWSへの期待について、「3DWSは、一般診療科との連携で有用性が増すと考えています。すでに、循環器内科や呼吸器内科とは、放射線部、放射線診断科がチームを組んでZiostation2を活用した診療を展開しています。手術ナビゲーションは3D画像の大切な役割であり、外科系診療科とも連携を深めています。作成した3D画像に対して、実際の使用状況をフィードバックすることで、高精度で的確な3D画像の提供が可能になると考えています。その中では、より精細で視認性に優れた画像を提供するために、技師の作業のウエイトも高まります。3DWSには、いっそうの自動化と、その先の臨床のニーズに応えられる操作性を持ったシステムの開発を期待しています」と述べる。
3D画像処理を含めた一体化した診療体制の構築によって、北里大学病院の高度医療の提供、地域医療への貢献が期待される。
(2015年7月30日取材)
北里大学病院
神奈川県相模原市南区北里1-15-1
TEL 042-778-8111
北里大学東病院
神奈川県相模原市南区麻溝台2-1-1
TEL 042-748-9111
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