技術解説(シーメンスヘルスケア)
2017年4月号
Cardiac Imagingにおけるモダリティ別技術の到達点
心臓カテーテル治療のワークフローを最適化する血管撮影装置「Artis one」
森田 英樹(アドバンストセラピー事業本部CA/IR事業部)
昨今,カテーテル治療はデバイスの進化により高度化が進み,血管撮影装置には透視,撮影の画質向上はもとより,支援機能の充実も求められている。特に,心臓領域においては治療精度だけでなく,ワークフローの改善にも寄与する機能が求められている。シーメンスは,このようなニーズに応えるため,システム設計を見直し,心臓カテーテル治療に特化し,さまざまな支援機能を搭載可能とした「Artis one」を開発,製品化している。本稿では,このArtis oneと特長的機能である“HeartSweep”“CLEARstent Live”を紹介する。
■ロボティクス技術を取り入れたフレキシブルCアーム
Artis oneは,近年注目の高まっている下肢領域への対応も考慮し,26cm×29cmの視野サイズを有する新型フラットディテクタを搭載している。一般的な心臓専用装置よりも一回り大きな視野サイズであるが,シーメンスの血管撮影装置の特長であるコンパクト設計を施し,冠動脈造影(以下,CAG),経皮的冠動脈形成術(以下,PCI)に必要な深い角度づけが可能である。
床置型システムであるが,ロボティクス技術を取り入れたことにより,Cアームの可動域は天井懸垂型システムを凌駕している。可動域は長手方向(図1)に加え,横手方向も可能となり,長手210cm×横手190cmとワイドな撮影範囲を実現した。各穿刺部位への視野移動も,Cアームの移動のみで行える。さらに,このロボティクス技術により可能となった機能がHeartSweep(図2)である。
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■2軸同時回転撮影機能HeartSweep
CAGには,ルーチン角度ごとの造影剤注入と撮影が必要であり,検査時間も一定時間を要す。
本機能は,CアームのLAO/RAO方向とCRA/CAU方向の2軸を同時に回転させ,ルーチン角度をつなぐ軌道を描くことによって,1回の造影剤注入で左冠動脈および右冠動脈のCAGを,おのおの数秒で完了することができる。従来のCAGと比べ,検査時間は大幅に短縮され,PCIが必要と判断された場合,本機能で収集された一連の画像から最適なアングルの画像を選択し,Cアームの角度に反映することができる。このように,HeartSweepはCAG,PCIのワークフローの改善に貢献する機能であり,また造影剤量の低減により,腎機能低下症例への対応も期待できる。
■リアルタイムステント強調機能CLEARstent Live(図3)
冠動脈ステントは,近年の改良の結果,ストラットが薄く繊細な構造のタイプが開発され,従来のX線条件では明瞭に描出することが難しくなってきている。また,低線量撮影のトレンドとも相まって,描出能の低下による手技の長時間化,撮影回数の増加,被ばく増加が懸念される。
このような背景から,シーメンスはステントの視認性向上を図るステント強調機能“CLEARstent”を開発した。本機能は,ワンタッチ操作で利便性の高さもあって広く普及したが,それに合わせて「リアルタイム性」が求められた。CLEARstentは,撮影後の収集フレームの加算処理による静止画表示のため,拡張前のステントポジショニング,あるいはステント拡張後の評価に活用されているが,操作中のステントをリアルタイムに強調できれば,ワークフローを阻害することなく,さらに高い精度でポジショニングがリアルタイムに行える。このようなニーズに応えて開発された次世代のステント強調機能が,CLEARstent Liveである。本機能のアルゴリズムを図3 aに示すが,専用のプロトコールを選択してX線曝射を行うと,バルーンマーカー2点を検出し,これをランドマークとした上で,収集されるフレームごとに加算処理をリアルタイムに行う。その結果,ステント部分の動きを抑制した動画表示を可能にした。
例えば,分岐部病変の使用症例では,2ステントのオーバーラップの状況をストラット単位で確認でき,精度の高いポジショニングが可能となる。
また,図4に示すように,CLEARstent Live画像は通常のLive画像と並列表示され,両画像の比較も容易である。
CLEARstent Liveは,従来型の強調機能にリアルタイム性を加え,最新デバイスへの対応を可能とし,治療支援だけでなく,手技時間の短縮などさまざまなメリットが期待できる。
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本稿では,新設計の血管撮影装置Artis oneを対象に,心臓カテーテル治療を支援するHeartSweep,CLEARstent Liveを紹介した。これらの機能の活用により,心臓カテーテル治療のワークフローの改善,最適化を図ることができるものと考える。シーメンスヘルスケアは,今後もさまざまな医療トレンド,ニーズをとらえながら,製品開発に取り組んでいく所存である。
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