技術解説(シーメンスヘルスケア)
2015年12月号
Nuclear Medicine Today 2015 ハードウエアの最新技術紹介
シーメンス社PET・CT最新技術 新コンセプトPET・CT装置「Biograph Horizon」
2015年10月に開催されたヨーロッパ核医学会(EANM:European Association of Nuclear Medicine)において,PET・CT装置「Biograph」シリーズの新ラインナップ「Biograph Horizon」が発表された(図1)。この装置は,これまでに培われた妥協を許さない技術と,徹底した効率性との調和(ハーモナイズ)がコンセプトである。
治療効果などの評価には,PET検査でのSUV値という指標が有用であるが,施設間でのバラツキを低減させることが望まれている。Biograph Horizonでは,自施設内でのわずかなバラツキにまで着目することで,施設間での指標の一致性向上が期待できる。
検査を受ける方を中心に,PET検査にかかわるさまざまなスタッフの方への配慮をすることで,これまでにない効率化をもたらす。
■実績あるLSO検出器とTOF撮像
LSO検出器(Lutetiumベース)は,Biographシリーズで採用されており,FDG-PETからサイクロトロンによる短半減期核種によるイメージングまで,腫瘍,脳神経,循環器の全領域に至る幅広い疾患のPET・CT診断に優れた画像を提供する。
ランダムノイズ量と同時計数時間が比例関係にあることは一般的に知られている。LSO検出器の良好な発光特性を生かし,同時計数時間を短くすることでランダムノイズ量を大幅に低減でき,コントラストが向上する。また,Lutetiumベースだからこそ可能となるTime-of-Flight(以下,TOF)撮像により,さらなるコントラスト向上と短時間撮像にもつながる。
■SUV値変動を低減する高分解能システム(分解能3.4mm,スライス厚2mm,スライス数81)
高分解能システムというと,一般的には微小病変の検出能をイメージされるかもしれないが,PET装置ではSUV値変動の抑制にも寄与する重要な要素となっている。
分解能が高くなると部分容積効果が小さくなり,小さな腫瘍に対するSUV値の過小評価を防ぐことができ,より正確なSUV値の提示が可能となる。また,腫瘍と検出器素子との位置関係により,得られる信号量に違いが生じるが,検出器素子が小さくなると相対的なズレが小さくなり,得られる信号量が安定する。これは,Early/Delayなど複数回のPET撮像における安定したSUV値提示につながる。
■日々の検出器変動を抑える“Quanti・QC”
安定した検出器の状態を維持するためにノーマライズという管理があるが,装置管理ツールとしてファントム作成の手間や被ばくを抑え,短時間で実施できる次の機能を新たに搭載した。
(1) PETノーマライズを毎日実施
(2) クロスキャリブレーションファクタ(CCF)の毎日確認・更新
■画像再構成時間“21秒”
膨大なデータ量のPET検査において,最新の画像再構成技術を含めると計算時間は長くなる。一方,Biograph Horizonでは,TOF技術やpoint spread function(PSF)技術を組み込んだ画像再構成においても,21秒という従来にない計算時間を達成した。
計算時間が速くなることで,Delay撮像の必要性を検討しやすくなる,検査結果をより早く説明できるようになるなど,読影する医師だけでなく検査を受ける方にもメリットとなる。
【問い合わせ先】
コミュニケーション部 TEL 0120-041-387
URL http://www.siemens.co.jp/healthcare/