技術解説(シーメンスヘルスケア)
2013年3月号
造影超音波検査 最新技術
Contrast Pulse Sequencing
斎藤 雅博(持田シーメンスメディカルシステム(株)コラボレーション本部)
●生体組織信号と造影剤信号との分離のために
超音波造影剤は,血流に乗って生体組織に運ばれる。受信されるエコー信号の中には,造影剤からのものと生体組織からのものとが混在している。造影エコーのポイントは,この中からいかにうまく造影剤からの信号を取り出せるかである。造影剤からの受信エコーは,次のような性質がある。
(1) 二次高調波成分が多く含まれる。
(2) 受信エコーの音圧は,送信音圧に比例しない(振幅の非線形性)。
これに対して生体組織からの受信エコーは,基本波成分が主体であり,音圧は送信音圧に比例する(線形特性が強い)。
性質(1)を利用して,造影剤からの信号を組織からの信号から選別するのが位相変調法である。位相を反転させた2つのパルス波を別々に送信し,それぞれの受信信号を加算すると,基本波成分がキャンセルされ,二次高調波成分だけが残る。この方式は,画像分解能に優れるが,ノイズに弱く感度がやや劣るのが短所である。
また,性質(2)を利用するのが振幅変調法である。振幅の異なる複数のパルス波を別々に送信し,それぞれの受信信号に対して,線形特性の成分がキャンセルされるように,ある倍率をかけて加算・減算する。この方式は,信号強度の強い基本波成分を捨てずに生かすため,ノイズに強いのが長所であるが,分解能がやや劣るのが短所である。
●Contrast Pulse Sequencing (CPS)
CPSとは,位相変調法による高分解能と振幅変調法による高感度を兼ね備えた,シーメンス独自の造影法である(図1)。生体組織信号をきわめて効果的に抑制できるため,高い染影効果が得られる(図2,3)。
最近では,乳房腫瘍の描出にも使われ始めた(図4)。
●Contrast Dynamics
造影エコーのビジュアル的評価に,定量的評価を加えるためのアプリケーションである。造影エコーの動画像を取り込んだ後で,領域ごとの輝度の違いを測定したり,輝度の時間変動のグラフを描くことができる。さらに,最大輝度,最大輝度に至る時間,時間輝度曲線の時間積分値をカラーコード化したパラメトリックイメージの表示が可能である(図5)。
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