座長の言葉
2013-11-25
Session Ⅰ : CT Image Contest 2013 Japanese Edition
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【審査委員長】 今井 裕(東海大学医学部専門診療学系画像診断学) |
【審査委員】
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【審査委員長総評】
CT Image Contest 2013 Japanese Editionの第一の目的は,各施設で工夫して撮影された素晴らしい画像の情報を参加者が共有することで,明日からの診療に生かしていただくこと,第二の目的は,医療現場のエンドユーザーとCT開発技術者との橋渡しにあります。技術者の方々には,今回のコンテストを次世代装置の参考にしていただき,新たなCT技術の開発につなげていってほしいと思います。
【審査委員総評】
◆General:福田国彦(東京慈恵会医科大学放射線医学講座)
受賞イメージは,造影剤の注入方法に工夫があり,かつ動脈相を担保するためにFlash Spiralを使い,短時間のウィンドウの中で撮影を行っています。また,低管電圧の100kVで画質を保ちつつ被ばく線量も低減し,三次元画像で動脈と静脈,そして気管を同時に描出しながら,腫瘍との位置関係をきれいに描出しているところが評価されました。
◆Cardio-Vascular:平野雅春(東京医科大学内科学第二講座)
本部門には応募全体の約1/4と,非常に多くのエントリーがあり,クオリティの高いイメージが多かったです。先天性心疾患の診断におけるCTの有用性は周知のとおりですが,小児の撮影には困難が伴います。受賞イメージは,本コンテストのコンセプトどおりRight Doseで非常に低被ばくであり,治療に直結するような情報量の多い画像を取得していることが評価されました。
◆Neuro:福田国彦(東京慈恵会医科大学放射線医学講座)
脳腫瘍に対する術前のCT検査で,造影剤の注入を分割してCTAとCTVを撮影し,さらにDual Energy Imagingを使ってBone Removalを行うための工夫が評価されました。また,SAFIREを併用し,線量低減を実現した点も優れています。
◆Oncology:今井 裕(東海大学医学部専門診療学系画像診断学)
今回,多くの悪性腫瘍の応募の中から乳がん画像が受賞しました。マンモグラフィや超音波,あるいはMRIが主流の乳がん検査の中でリンパ節転移,特にセンチネルノードの描出をCTで行っています。術前にセンチネルノードを確認できることで治療法の選択が的確になり,臨床的に非常に有用と考えます。
◆Dual Energy:内藤博昭(国立循環器病研究センター病院)
Dual Energy Imagingによる冠動脈CTAの石灰化除去には従来,syngo Body Bone Removalが用いられました。ここでは,Liver VNCをうまく使い, Dual Energyの処理設定を多少変更してIodine Imageを作成することで,結果的に石灰化を上手に除去しています。非常にインパクトのあるこの工夫が評価されました。
◆Technical:市川勝弘(金沢大学大学院量子医療技術学講座)
Technicalに優れたシーメンスCTの機能を積極的に利用すればRight Dose,そしてLow Doseが実現します。今回の受賞はやはり,シーメンスCTの機能をよく熟知して使うことで高画質な画像を提供しています。非常に低線量にもかかわらず十分な画質が得られていることは,驚くべきことだと思います。
◆Best Overall:今井 裕(東海大学医学部専門診療学系画像診断学)
受賞イメージは小児の右肺動脈欠損と,それに伴う大動脈からの側副血行路などを細かく描出すると同時に,Lung PBVで血流も同時に表現しているところが優れています。時間分解能に優れたDual Energy Imagingが可能なDefinition Flashでしかできない画像ではないかと思います。診療上の有用性のみならず,最新のCT技術をフル活用したところが評価されました。
Session Ⅱ : Benefits of Stellar Detector
平野雅春(東京医科大学内科学第二講座)
CT撮影に伴う被ばくと発がんの関係が注目されるようになり,線量調整ソフトウェアや逐次近似画像再構成法などの被ばく低減技術の開発が急速に進歩してまいりました。その中で昨年から英国や豪州において,小児期CT撮影における累積線量と発がんの関係が相次いで報告されております。この結果を踏まえ,画質を落とさずに,さらなる低被ばくが必要と考えられるようになりました。そこでこのセッションでは,シーメンスの次世代型検出器である「Stellar Detector」について,最先端の研究をしている先生方にお話を頂戴いたします。
市川勝弘(金沢大学大学院量子医療技術学講座)
Stellar Detectorは,X線の信号化に混入するノイズを極力抑制する検出器構成のため,特に低線量時に有効であると言われています。これについて,埼玉県済生会川口総合病院の富田博信氏より,物理特性試験について詳細な報告がなされました。この報告によると,Stellar Detectorは低線量時はもちろん,通常線量時でも骨などの高吸収体通過後の低線量状態によるノイズ(フォトン数低下によるアーチファクト)を効果的に抑制し,高画質を提供できることが示されました。
Session Ⅲ : Advanced Visualization System “syngo. via”
内藤博昭(国立循環器病研究センター病院)
CTの進歩は撮影と画像再構成の部分にとどまるものではありません。「CT検査」は,患者の前処置から始まって,適切な撮影を行って画像を作り,その処理と解析を経て,報告書の作成をもって完了するとすれば,撮影の後ろの部分の発展もまた,「進歩」に他なりません。syngo. viaは,得られたCTデータから最大限の情報を引き出し,最善の医療に繋げるための強力なツールであることが,このセッションのお二人の先生のご発表で明らかになったと思います。また,サプライズとして,プログラムにない慈恵医大の福田教授によるiPadを使用したデモが,セッションの最後に実施されました。
平野雅春(東京医科大学内科学第二講座)
数年前のRSNAでsyngo.viaが登場した時には大きな衝撃を受けました。このシステムは従来の画像解析にとどまらず,ワークフローに焦点を置いた開発がなされていました。すなわち,それまで存在していたPACSやワークステーションなど診断に重点を置いていたシステムが初めて,臨床使用を意識した領域までサポートされていたのです。あれから数年,さらにブラッシュアップされたsyngo.viaがどのように臨床で使用されているのか,本セッションではスペシャリストの先生方に実臨床での使い方を報告していただきました。
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Session Ⅳ : New Horizon in CT Diagnosis
内藤博昭(国立循環器病研究センター病院)
私の医師としての歴史とCTの歴史はほぼ重なっています。CTが登場し始めの頃は,複数のエネルギーで解析するという試みがありましたが,いつのまにか消えてしまいました。しかし,線減弱係数(CT値)の計測機器としての側面が,SOMATOM Definitionが登場したことで,Dual Energy Imagingとして再び広がることになりました。しかも,それが研究だけでなく,臨床現場で活用されていることは,まさにCTのルネッサンスではないかと思っています。本日の知識を臨床現場に生かしていただき, CT診断学が発展することを期待します。
市川勝弘(金沢大学大学院量子医療技術学講座)
埼玉県済生会川口総合病院の太田剛氏よりDual Energy Imagingによる手部の腱描出についてその有用性が示されました。従来は描出できなかった腱がDual Energy Imagingによって可視化され,臨床的価値の高い画像が供覧されました。また,東京慈恵会医科大学の福田国彦氏よりDual Energy Imagingによるbone marrow imageのMRIに匹敵する有用性が示され,さらに,仮想単色X線イメージングの高エネルギー画像によるメタルアーチファクト軽減の効果も示されました。