展示会に見るCT技術の変遷(ITEM in JRC 国際医用画像総合展)(シーメンス・ジャパン)
●2005
64スライスマルチスライスCT「SOMATOM Sensation 64,Cardiac 64」は新型X線管「Straton」と独自のデータ収集技術「z-Sharp」を搭載。世界最速の0.33秒/回転のガントリ回転スピードを実現し,心臓全領域の撮影時間は従来の半分以下に短縮される上,造影剤の量も減らせる。実物の新型X線管「Straton」は,実際に手に持って触れることで,いかに小型であるかを実感できた。
大口径82cmマルチスライスCT「SOMATOM Sensation Open」は,画像表示領域が82cmと従来比の約1.5倍。ポジショニングや被検者へのアクセスが容易となっている。体格が大きな被検者や生命維持装置を付けたままでの検査も可能。目視でカバーできる範囲が広がり,緊急時の正確な放射線治療や迅速な診断も可能となる。今回は大口径を確認できるよう装置全面部分のみ展示。
|
|
●2006
ブース正面の最も目立つ場所で紹介しているのが,Dual Source CT「SOMATOM Definition」です。管球と検出器を2対搭載して,撮影とデータ収集を同時に行うため,時間分解能は83ミリ秒,心臓のスキャンデータ収集は,わずか6秒程度で行うことができます。いま,CT開発は多列化の方向にありますが,シーメンスでは列数はあまり重要視しておらず,臨床ベースで何がしたいのかを追究しています。では,シーメンスでは64スライスの次がDual Source CTか,というとそうではなく,ひとつの選択肢としてこのような形態のCTを製品化し,現在実際に臨床で稼働しています。「SOMATOM Definition」では,時間分解能が飛躍的に向上するだけでなく,2つの管球を搭載し,異なったエネルギーで曝射することで骨などのサブトラクションが容易になり,これまでとは違ったイメージング分野に踏み出せます。また,「SOMATOM Definition」は心臓のみをターゲットにしているのではなく,全身に対応します。ですから,救急医療からこれまでにない新しいイメージングまで,幅広く対応できる装置ということです。
(早川 護 マーケティング本部CTグループプロダクトマネージャー)
|
|
●2007
● 臨床と製品開発に新しい風をもたらすDual Souce CT「SOMATOM Definition」
管球と検出器が2対搭載されたDual Souce CT「SOMATOM Definition」(写真上)と,グッドデザイン賞を受賞した新デザインの「SOMATOM Emotion」(写真下)が展示された。「SOMATOM Definition」は,CT開発の新しい方向性を示す装置として,2005年のRSNAで注目を集めた。心臓の撮影と救急に特化しており,2対の管球と検出器で同時に撮影とデータ収集が行えるため,時間分解能は83ミリ秒,心臓のスキャンデータ収集はわずか6秒程度で行うことができる。不整脈など,あらゆる鼓動の患者さんに対応できるほか,被曝線量も大幅に低減される。救急領域においては,体格の大きい患者さんのCTアンギオグラフィの際にも,2つの管球からX線を出すことで,線量や画質を落とすことなく通常のスピードで撮影することができ,スループットが向上する。また,管球ごとに異なった線量を出して撮影し,CT値の違いをサブトラクションする"デュアルエナジーイメージング"では,血管や骨といった診断に必要な部分だけ,または胆石などの性状の違いを画像化できるなど,形態評価だけでなく機能評価も可能だ。CTアンギオグラフィについても,通常は造影あり・造影なしの2回のスキャンが必要だが,「SOMATOM Definition」では造影ありの画像から造影なしの画像を作成することもでき,同じ位相でまったくズレのない画像が得られるほか,被曝線量も従来の約70%にてまで低減される。現状では,日本国内では医療法の関係で2つの管球から同時にX線を出すことはできないが,今回の展示では海外からの臨床画像を併せて紹介し,Dual Souce CTの臨床的有用性がアピールされた。
|
|
●2008
● Adaptiveテクノロジーを搭載した128スライスCT「SOMATOM Definition AS」
真のワン・オーガン・イメージングを実現する,従来のCTにはない新しい概念を持つAdaptive Scanner CT(ASCT)として,128スライスの「SOMATOM Definition AS」が登場した。Adaptiveとは「適合」を意味しており,Adapts to any patient,Adapts for new dimension,Adapts for complete dose protection,Adapts to your spaceの4つの特長を持つ。
最小設置面積18m2という優れた設置性を実現した「SOMATOM Definition AS」は,0.30秒という世界最速のガントリ回転速度と,通常モードで0.33mm,ハイレゾリューションモードでは0.24mmというきわめて高い空間分解能,100kWの高出力によって,高心拍患者や大柄な患者さんなど,あらゆる患者さんに対して優れた検査性能を持つ。開口径は78cmと大きく,生命維持装置をつけた状態での検査にも対応可能であり,200cmの撮影範囲をわずか10秒で撮影できるなど,救急でも威力を発揮する。
また,新技術として,従来にない次元での撮影を可能にする「Adaptive 4D Spiral」が紹介された。これは,最大27cmの範囲を四次元データ化する新しい撮影モードで,撮影時にテーブルを前後に連続的に動かすことで,一度の検査で全脳や全肝の灌流情報を得ることが可能となった。パーフュージョン以外にCTアンギオグラフィにも対応しており,心拍動や嚥下運動などの機能観察も可能である。このほか,スパイラル撮影の際に発生する撮影範囲前後の不必要な被ばくを,X線管の下に搭載されたDose Shieldで完全にカットする新撮影機能「Adaptive Dose Shield」が紹介された。
●2009
● ハイパワーなヘルシアCT「SOMATOM Definition Flash」を発表
CTは,1管球の128スライスCTと同じユニットが2基と100kWのX線発生器が2基搭載されたデュアルソースCT「SOMATOM Definition Flash」が注目を集めた。デザインはガントリ開口径78cm,寝台のストロークが200cmと従来製品を踏襲しているが,2つの管球による二重螺旋スキャンを行う新技術“フラッシュスパイラル”の実現によって,従来とはまったく違った大きく2つの臨床上のメリットを得ることができる。その1つが,息止めなしの撮影。ガントリ回転スピードが0.3msから0.28msへと向上したほか,フラッシュスパイラルによって従来よりも収集できるデータの密度が高くなったため,秒間43cmという高速なテーブルピッチが可能となった。これにより,たとえば30cmの全肺を0.6秒,約12cmの心臓なら1/4心拍という,きわめて短時間で撮影することができる。2つめは,心臓CTにおける大幅な被ばく低減。新しい被ばく低減技術によって,デュアルエナジーでありながら,1回の撮影あたりの被ばく線量が,従来の30mSvから1mSv以下にまで低減可能となった。患者さんへのやさしさをコンセプトとして打ち出しており,それを表現する“ヘルシアCT”というキャッチフレーズが紹介された。
●2010
● SOMATOM Definition Flashの被ばく低減技術をアピール
高速撮影と低被ばくが特長の,128スライスCTと同じユニット2基を搭載したデュアルソースCT「SOMATOM Definition Flash」が展示の中心となった。同社独自の技術であるフラッシュスパイラルによって,ガントリ回転スピード0.28秒,テーブルピッチは秒間46cmを実現し,この被ばく時間の短縮によって,心臓CTでは1回の撮影あたりの被ばく線量を1mSv以下に抑えることができる。寝台にLEDが設置され,色の動きと変化によって,実際の各部位の検査における撮影スピードが実感できるよう工夫されていたほか,壁面に設置されたモニタには,世界中のSOMATOM Definition Flashでの心臓検査における実際の被ばく線量の平均値が30分ごとにアップデートされ,実臨床で1mSv以下での検査が行われていることが実証されていた。
CTは今回,同社がこれまでに取り組んできた被ばく低減技術の研究成果が大きな年表として掲示され,“Low Dose CT”が最大のテーマとなった。中でも最新の被ばく低減技術である,逐次近似法に属した反復画像再構成法の“IRIS(Iterative Reconstruction in Image Space)”では,従来と同じ線量であれば画質を大幅に向上し,従来と同じ画質であれば被ばく線量を最大60%低減することが可能となる。IRISが搭載された新製品として,今年3月に「SOMATOM Definition AS IRIS」の販売が開始された。このほか,スパイラルスキャン時に発生する不要な放射線を遮断する“Adaptive Dose Shield”が展示され,放射線を遮断する際のシールドの動きが見られるようになっていた。
|
|
●Spring of 2011
128スライスCT装置 「SOMATOM Definition AS」
● Maximize Outcome. Minimize Dose.
高機能・高画質をはじめとするCTに求められる「最大のアウトカム」を,
最新のハード&ソフトウエアにより「最小限の被ばく」で提供します。
SOMATOM Definition ASは,多様化する検査への対応,被ばくの低減,検査時間の短縮,コスト削減といったCTに求められる多様なニーズを高次元で結実させた新世代のマルチスライスCT装置です。 新たに搭載されたFAST CAREは,高機能・高画質をはじめとする医療の質,自在かつ最適なオペレーションなど「最大の効果」を「最小限の被ばく」で得るために開発されたシーメンスの最新のソリューションです。
Be FAST ─Fully Assisting Scanner Technology
「FAST」は,ワークフローを向上するための最新テクノロジーの総称です。スキャン範囲や画像再構成範囲を撮影部位に応じて自動的に,よりスピーディに設定する「FAST Planning」など,FAST機能を活用することで,従来は時間を要したスキャン過程の複雑な手順が自動化されます。 これは単にワークフロー効率が向上するだけでなく,検査結果の再現性を高め,被検者の負担を軽減するなど,総合的に臨床アウトカムを最大化します。
Take CARE ─Combined Applications to Reduce Exposure
CAREとは,シーメンス独自の総合的な被ばく低減プログラムです。rawデータベースの逐次的再構成法で,さまざまなプロトコールにおいて画質向上と最大60%の被ばく低減を実現する「SAFIRE」などのソリューションが,最小限の被ばくで最大の効果を提供します。
●2012
●コンパクトでコストパフォーマンスに優れた「SOMATOM Perspective」を展示
CTでは,日本の市場を見据えて開発した64スライスCTの「SOMATOM Perspective」(以下,Perspective)が展示された。Perspectiveは,世界のCTの4割近くを有する“CT大国”である日本の市場をターゲットに開発された装置で,日本の医療環境にマッチした64スライスCTとして投入された。収集スライス厚0.6mm,最大ガントリ回転速度0.48秒など,従来の64スライスの性能を搭載しながら,リーズナブルで使いやすい装置をめざした。具体的には,設置性だけでなく搬入,取付まで考えたコンパクト設計(16スライスクラスと同等の設置面積18.5 m2),高画質,低被ばくに加え,“効率的(efficiency)”な撮影を提供する「eMode」を搭載した。eModeでは,省電力だけなく,装置にとってやさしい条件で稼働することで,長期の安定稼働を実現してランニングコストを抑え,効率的な運用を可能にする。撮影では,64スライスによる高速,高精細画像を提供でき,Rawデータベースの逐次近似的再構成法である「SAFIRE」を搭載する。64スライス以上のCTでは,今回の診療報酬改定で新たな撮影診断料が設定されたほか,大腸CT撮影加算(CTコロノグラフィ)が新設されるなど,心臓検査や外傷全身CTの加算に加えて追い風となっており,Perspectiveには大きな期待が寄せられる。
|
|
◆次世代型検出器「Stellar Detector」
「Stellar Detector」は,シーメンスが開発した次世代型検出器で,電気信号を変換するフォトダイオードとADコンバータをワンチップ化して,電気ノイズとクロストークを最小限に抑えることで,さらなる被ばく低減を実現する。ハイエンドのSOMATOM Definition Flashから搭載していく予定だ。
●2013
● 日本市場向けのコンパクト64スライスCT「SOMATOM Perspective」を中心に紹介
CTコーナーでは,2012年のITEMに続き,64スライスのCTとして新たに開発され,コンパクトで経済性を考慮した「SOMATOM Perspective」を展示した。SOMATOM Perspectiveは,日本市場向けに開発された64スライスで,従来のシングルスライスCTと同じ面積に設置が可能で,展示では日本の医療機関で実際に設置されている13.8m2の空間を再現し,コンパクトさを実感できるようになっていた。また,電源や空調設備,ストレッチャーでの搬送などワークフローにも配慮されており,心臓検査まで対応できる高いパフォーマンスがポイントである。
また,ハイエンドのSOMATOM Definition Flash,SOMATOM Definition Edgeに搭載されている次世代型検出器「Stellar Detector」も展示された。フルデジタル化することで電子ノイズやクロストークを抑え,低線量で高画質の撮影を可能にする。同社では,逐次近似画像再構成技術だけでなく,Stellar Detectorなどハードウエアからもアプローチすることで,低電圧撮影が可能になり最適な線量で最高のイメージクォリティが得られることをアピールした。
|
|
●2014
● 2管球CTのフラッグシップ機「SOMATOM Force」と16列の「SOMATOM Scope」
SOMATOM Forceは,新開発のX線管“VECTRON”と,新型の検出器“StellarInfinity Detector”を2セット配置した2管球CTで,ガントリ回転速度は0.25秒/回転,検出器は96列,倍密サンプリングで192スライスとなり従来から25%増加し,最高分解能で0.24mmとなっている。
新開発の高出力X線管であるVECTRONは,最大管電流1300mAの設定ができ,これによって画質を維持したまま低電圧(Low kV)での撮影が可能になった。高速撮影と低電圧撮影を組み合わせることで,例えば胸部CT検査では単純X線撮影と同等の0.1mSv程度の低被ばく線量での検査が行える。さらに,2管球システムと0.25秒/回転による高速二重スパイラルスキャンであるTurbo Flash Spiral撮影で,秒間70cmを超える広範囲撮影が可能になったほか,心臓では0.1秒,胸部でも0.5秒での撮影時間で,息止めなしの検査を可能にする。また,画像再構成法としては,シーメンスの逐次近似画像再構成法であるSAFIREを進化させた“ADMIRE(Advanced Modeled Iterative Reconstruction)”を搭載している。
同時に発表されたSOMATOM Scopeは,短時間,高画質撮影を可能にしながらコスト効率を考慮した16列CTである。奥行69.2cmのスリムなガントリで,設置スペースはクラス最小底面積の8.0m2(日本間で6畳程度)というコンパクト設計で,シングルスライスCTを設置していた部屋にも導入が可能なレベルに小型化した。また,運用コストの削減と安定稼働のために開発された“eCockpit”機能を搭載している。eCockpit機能は,1) スキャン前のウォーミングアップで管球の負担を軽減するeStart,2) 個々のスキャンに合わせた設定でシステム稼働を最適化するeMode,3) スタンバイ時に消費電力を抑制するeSleep,の3つの機能で構成されている。eCockpitによって管球およびシステム全体への負担を10%軽減し,安定した長期間の稼働によって運用コストが削減できる。
シーメンスの16列CTは,ほかにSOMATOM Perspective,SOMATOM Emotion 16があるが,SOMATOM Perspectiveは32列や64列へのアップグレードが可能で,医療機関の方針などに合わせた上位互換性を備えたタイプ,SOMATOM Emotion 16は稼働実績が多く汎用性に優れた機種とタイプが異なる。その中でSOMATOM Scopeは,シングルスライスや2列,4列からのリプレイスといったニーズに対応する製品と位置づけられる。
|
|
|
●2015
● 1管球のCTでデュアルエナジー撮影を可能にする“TwinBeam Dual Energy”を発表
CTコーナーでは,JRC2015前に発表された1管球でデュアルエナジー(DE)撮影を可能にする新技術である“TwinBeam Dual Energy”を紹介し,それを搭載したシングルソースCTの最上位機種「SOMATOM Definition Edge」を展示した。
高エネルギーと低エネルギーの2つのX線出力でスキャンを行うDual Energy(DE)は,低・高管電圧CTの融合画像や造影剤成分のみを抽出した非造影CT,石灰化や骨除去画像や結石の成分解析など,従来のCTでは得られないさまざまな情報を取得することができる。シーメンスでは,2管球を搭載したデュアルソース(DS)CT「SOMATOM Definition」を2005年に上市し,DEイメージングに関する豊富な実績とさまざまな技術を蓄積してきた。今回,そのDEイメージングをシングルソースCTでもルーチンで利用可能な技術として開発されたのが,TwinBeam Dual Energyである。シングルソースCTによるDEイメージングには,出力を変えて2回スキャンする方法や高速スイッチングなどの方法があるが,TwinBeam Dual Energyでは,1つの管球から発生するX線に対して,線質の最適化を実現するフィルタを入れることで2つのエネルギーのX線を照射することが可能になり,精度の高いデュアルエナジー撮影が可能になった。画質の低下や被ばく量を増やすことなくルーチン検査(シーメンスでは,これをTrue Dual Energyと定義している)で利用可能で,これまでDSCTで蓄積されてきたさまざまな画像解析アプリケーションを利用することができる。TwinBeam Dual Energyは,SOMATOM Definition Edgeのほか,「SOMATOM Definition AS+」にも搭載することが可能だ。
|
|
●2016
● ECRで発表された最新DSCTのSOMATOM Driveが参考出品
シーメンスは2015年に,医療機器メーカー初のCT「SIRETOM」の製品化から40周年,世界初のDSCT「SOMATOM Definition」の発表から10年を迎えた。この長年の歩みの中で,革新的な技術を生み出し市場に存在感を示してきた。今回の展示では,同社CTの代名詞とも言えるDSCTを前面に押し出し,“yes, DS”をテーマに掲げて,最新技術を来場者に紹介した。
中でも最も注目を集めたのが,参考出品された最新のDSCTであるSOMATOM Drive(薬機法未承認)である。プレミアムクラスの「SOMATOM Force」に次ぐハイエンド装置としてECRでお披露目されたSOMATOM Driveは,新開発のX線管“Straton MX Sigma”を搭載。検出器に“StellarInfinityDetector”を採用した128スライスのDSCTである。スキャン速度は458mm/s,時間分解能も75msという高性能を有し,心臓CTのほか,4D撮影で威力を発揮する。Straton MX Sigmaは,ハイパワーを特長としており,管電圧を70~140kVで10kV単位で設定でき,低電圧撮影でも従来よりも20%高い管電流を使用することが可能である。加えて最近のトレンドであるLow kVイメージングやX線スペクトルを変調したスキャンなども可能となっておりpersonalized low doseの実践を可能としている。
このほか,CTに関しては,読影支援システム「syngo.via」を発展させて,臨床研究や技術開発向けに用意される「syngo.via Frontier」が展示され,そのアプリケーションである“Cinematic Rendering”の画像が来場者に紹介された。
|
|
|
●2017
● タブレット操作でワークフローを革新するSOMATOM go
CTのコーナーで最も注目を集めたのが,ITEM直前に発表されたSOMATOM goである。ガントリの前面パネルにある着脱可能なタブレットとリモートコントローラを用いて,患者登録から条件設定,撮影,画像確認,転送までの一連の操作をほとんどタッチパネルで直感的に行える。このため,装置本体のある撮影室と操作室の間を何度も行き来することがなくなり,検査スループットが向上し,ワークフローの改善を図ることができる。また,従来操作室に設置していたシステム制御や画像再構成を行うコンピュータをガントリ横に組み込んだため,操作室を必ずしも設置しなくても撮影が可能。これにより,設置場所の省スペース化にもつながる。さらに,持ち運びが自由なタブレットから操作することで,撮影時以外は被検者の近くにいることができ,小児や高齢者の場合も,介助者がいなくても検査を行える。一方で,従来装置よりも低被ばく化が図られており,「SOMATOM Force」などのハイエンドクラス装置に採用されている“Spectrum Shaping”を搭載した。Spectrum Shapingは,「錫」のフィルターによって,不要な低エネルギー成分を除去するだけではなく,X線スペクトラムの形状そのものも最適化され胸部単純X線撮影と同等の線量で撮影できる技術。低線量肺がんCT検診などへの適用も期待される。SOMATOM goは,ほかにも新型のX線管“Chronon”や“Stellar Detector”を搭載するなど,新技術が数多く採用されている。
前回のITEMで参考出品されたSOMATOM Driveは,2016年8月に国内で発表され,製品としては今回が最初の展示となった。X線管“Straton MX Sigma”を採用しており,管電流は最大1.5A(750mA×2)で,低電圧撮影でも高画質画像を得ることが可能。また,管電圧は,70〜140kVの間で10kVごとに設定でき,被検者や撮影内容によって,最適な管電圧を選択することで,よりいっそうの被ばく低減が図れるだけでなく,造影剤使用量も減らせて,低電圧撮影をルーチンで行える。さらに,臨床・研究用の最上位機種「SOMATOM Force」と同じ検出器“Stellar infinity Detector”が搭載され,スキャンスピード458mm/s,時間分解能75msの高速撮影に対応。小児・高齢者などの静止画が困難な被検者や高心拍症例でも検査を行うことができる。このほか,ガントリの操作パネルにタッチパネル方式を採用し,直感的な操作が可能となっている。
ITEM初日14日に発表されたSOMATOM Confidence RT Proは,会場内の液晶ディスプレイで説明が行われた。治療計画用CTとして,新しい画像再構成技術“DirectDensity”を搭載。治療計画を作成する上で重要となる線量分布計算において,従来は同一の管電圧を用いて撮影しそのCT値を電子密度に変換していたが,DirectDensityでは撮影条件によらず一定の電子密度へ変換できるため,被検者の体格や部位など条件を変更して撮影を行える。また,金属アーチファクトを低減する“iMAR”を搭載しているほか,dual energy撮影も可能である。
|
|
|
|
●2018
●高機能で抜群のワークフローを持つSOMATOM go.TopとAI技術を搭載したFAST 3D CameraをPR
CTは,2018年に国内販売を開始する新製品を展示した。128スライスのSOMATOM go.Topは,2017年に発売した「SOMATOM go」(16スライス)とともに,Single Source CT,Dual Source CTに続く,CTの第三のカテゴリーである“モバイルワークフローCT”に分類される装置である。SOMATOM goの特長であるタブレット型コンソールによるワークフローはそのままに,ハイエンド装置の技術が惜しみなく投入された。
ガントリ前面左右に設置された着脱可能なタブレット端末では,患者登録から撮影部位選択,撮影後の画像確認まで,曝射以外のすべての操作を行える。そのため,スタッフは検査室と操作室を何度も行き来する必要がなくなり,常にベッドサイドで業務を行えるため,患者の安心感にもつながる。
新たに搭載された“Tin Filter技術”は,スズフィルタによりX線スペクトラムを変調させることで,大幅な被ばく低減を可能にする。胸部撮影では,通常のCT検査の約1/50,一般的な胸部X線撮影と同等の線量での撮影を実現。心臓や脊椎に重なった病変の検出が難しいという胸部X線撮影の課題を,同等の被ばく線量で撮影できるCT検査で克服する。
被ばく線量低減に加え,低侵襲化の技術としては,800mAを超える大電流での低管電圧撮影にもオプション対応しており,造影剤使用量を大幅に低減できる。また,Dual Energy Imaging技術“TwinBeam Dual Energy”や心臓CTといったより高度な検査も提供可能で,低侵襲かつ臨床的に有用性の高い画像で医療現場に貢献していく。
同社のバリュープロセスの一つ,プレシジョン・メディシンにフォーカスした新ソリューションとして,AIを搭載した3Dカメラ FAST 3D CameraをPRした。FAST 3D Cameraは,検査室天井にCT寝台を見下ろすように設置され,撮影ボタンを押すと画像認識技術と赤外線センサーにより,被検者の寝ている向きや体型,大きさ・体厚を認識し,撮影部位が中心となるように天板が撮影開始位置まで自動で移動する。この機能により,AEC(自動露出機構)のより正確な動作,再現性の向上,画質の向上などにつながる。また,患者が寝ている向きが設定と異なる場合にはアラートが表示されるため,医療事故を未然に防ぐことができる。“CTが患者を見る目”を持ったことにより,最適な被ばく線量で,最高の画像の提供を実現し,同時に検査スループットの向上にも寄与する。現時点では,組み合わせられるCT装置はSOMATOM Edge Plusのみだが,対応機種は順次拡大の予定である。
●2019
●AIによる高精度なポジショニングを実現する「FAST 3D Camera」やタブレット操作が可能な「SOMATOM go.Top」をPR
CTコーナーでは,AI技術搭載の「FAST 3D Camera」とハイエンドクラスのDual Source CT「SOMATOM Drive」を組み合わせたシステム,タブレット操作が可能な「SOMATOM go.Top」が展示された。前回のITEMで発表されたFAST 3D Cameraは,Single Source CTの最上位機種「SOMATOM Edge Plus」に加え,新たにSOMATOM Driveにも対応した。寝台を見下ろすように天井に取り付けられたカメラと赤外線センサで寝台に横たわった被検者を撮影・計測し,3Dモデリングを行う。そのデータをAIアルゴリズムで解析し,自動的にアイソセンターになるようにポジショニングする。最適なポジショニングが行われることで,再撮影のリスクを軽減して,画質の向上を図れる。さらに,被ばく線量の低減にもつながるほか,スループットの向上にも寄与する。
今回,FAST 3D Cameraへの対応が発表されたSOMATOM Driveは,管電流が最大1600mAまで設定できるハイパワーX線管“Straton MX Sigma”を採用。低電圧撮影でも高画質を実現し,被ばく線量や造影剤量の低減を図れる,ハイエンドクラスにふさわしい被検者にとっても優しい装置である。さらに,検出器は“Stellar infinity Detector”を搭載しており,スキャンスピード458mm/s,時間分解能75msを実現。心臓CTにおいて高心拍の被検者に対してβブロッカーを用いない撮影が可能になる。
一方,SOMATOM go.Topは,前回のITEMで初披露されたモバイルワークフローCT。ガントリ前面に固定もできるタブレット型のコンソールを採用。このタブレットで,患者登録から撮影部位・プロトコールの設定,撮影後の画像確認まで,ほとんどの操作を行える。従来のCTのように検査室と操作室を行き来することなく,タブレットを持ちながら寝台横で被検者の顔を見ながら撮影業務を進めることができ,まさにJRC 2019のテーマにある「患者に寄り添って」検査ができるCTである。このほか,装置本体と造影剤のインジェクタを一体化していることもSOMATOM go.Topの特長である。
さらに,両機種ともに,X線スペクトラムの最適化を図る技術として,フィルタの素材にスズ(Sn)を用いた“Tin filter technology”を搭載。従来に比べ大幅な被ばく低減を実現し,胸部単純X線撮影と同等の被ばく線量で高画質画像を得られるようにした。このTin filter technologyは,今後発表されるシーメンスのCT装置にはすべて搭載される予定である。
●2021
●“myExam Companion”による撮影の自動化などAIでワークフローを向上する「SOMATOM X.cite」
2020年4月に発表された「SOMATOM X.cite」は,今回のITEMがお披露目の場となった。その最大のアピールポイントは,AI技術を用いた自動撮影機能によりワークフローの向上を図れることである。代表的な技術が検査ガイド機能のmyExam Companionである。myExam Companionは,患者の性別,年齢,体格といった情報の入力のほか,検査目的に応じて用意された質問項目を回答すると,最適なプロトコールを提案するように開発された。心臓CTの場合,SOMATOM X.citeが心電図のデータから心拍数,不整脈などを認識。検査者は,カルシウムスコアリング実施やステントの有無といった問いに答えるだけでよい。この機能は,これまでのCT検査の撮影プロセスをAIで分析したことで実装できた。myExam Companionにより,検査者の技能を問わず,すべてのスタッフ,高品質の画像を撮影できるようになる。一連の操作は,操作室のコンソールと,SOMATOM X.citeのガントリの両サイドにある着脱可能なタブレット端末から容易に行える。セッティングや被検者のポジショニングをベッドサイドでタブレット端末から行い,撮影も操作室に移動せず実施できることから,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査にも有用である。さらに,撮影後は,AI技術で開発されたALPHA(Automatic Landmarking and Parsing of Human Anatomy) Technology”により,MPR画像などの画像再構成や解析処理も自動で行われる。このほかにもオプションとして,被検者のポジショニングを自動化する「FAST 3D Camera」を提供している。FAST 3D Cameraは赤外線カメラを搭載しており,ベッド上の被検者の体厚も含めた体格を立体的にスキャンする。このデータをAIアルゴリズムで解析することで,撮影部位がアイソセンタになるよう自動でポジショニングする。そのため,高精度で位置合わせができ,高画質化に寄与する。これらのAI技術により,CT検査の標準化が図れるとともに,検査時間の短縮が可能となり,医業経営の観点からもメリットを生む。
SOMATOM X.citeは,AI技術だけでなく,ハードウエアでもCTとしての優れた基本性能を有している。X線管は,シーメンスヘルスケアのDual Source CTの最上位機種である「SOMATOM Force」と同じ“Vectron”を採用。最大1.3Aの高出力を得られる。さらに,最新検出器の“Stellarinfinity Detector”を搭載した。このほか,SOMATOMファミリー独自技術である“Tin filter technology”によって,胸部単純CTならば胸部一般撮影と同等の被ばく線量で撮影が可能なことも大きな特長である。
●2022
●CTを再定義する世界初のフォトンカウンティングCT「NAEOTOM Alpha」をアンベール
RSNA 2021で発表された世界初のフォトンカウンティングCT「NAEOTOM Alpha」が,日本初披露となった。ECR 2022の現地開催が7月に延期されたため,世界で2番目の展示となる。フォトンカウンティングCTはRSNA 2021でも大きく注目され,関連セッションも多く行われた。従来CTの限界を超える次世代のCTとして各社がフォトンカウンティングCTの開発を進めているが,シーメンスがいち早く製品化を果たした。国内では2022年1月26日に医療機器製造販売認証を取得し,国内初号機が東海大学医学部付属病院で6月から稼働することが発表されている。
◇日本の半導体メーカーと15年をかけて研究開発したフォトンカウンティング検出器を搭載
シーメンスが “CTを再定義する”システムと位置づけるフォトンカウンティングCTは,従来CTと比べて高解像度化,大幅な被ばくの低減,全検査でのスペクトラルイメージングの実現などが大きな特長である。それを可能にするのが,新開発のフォトンカウンティング検出器“QuantaMax detector”である。従来CTに搭載された固体シンチレーション検出器では,シンチレータでX線エネルギーに比例した強度の可視光を発生させ,フォトダイオードで可視光を電流に変換するという2段階の間接変換が行われる。そのため,変換によってノイズが発生したり,個々のX線フォトンのエネルギー情報が失われたりといったデメリットが生じるほか,シンチレータを区切る隔壁で空間分解能が決められるといった限界があった。これに対してテルル化カドミウム(CdTe)半導体を用いたフォトンカウンティング検出器では,半導体でX線フォトンがエネルギーに比例した多数の電子正孔対を発生させ,電子をピクセル化された陽極へ引き寄せてエネルギーごとに個々にカウントする。この仕組みにより,X線は電流に直接変換されるためノイズが生じず,フォトンごとのエネルギー値を計測でき,かつ隔壁が不要なため空間分解能を向上させることが可能となっている。
フォトンカウンティング検出器は,2012年に子会社化した日本の(株)アクロラド(沖縄県うるま市)との共同開発により実用化に至った。アクロラド社は,検出素子の開発だけでなく素子の原料であるカドミウムとテルルの開発・製造から手掛ける唯一の半導体メーカーで,CdTeを用いたフォトンカウンティングCTの製品化をめざすシーメンスと2005年から共同研究を開始。原料高純度化技術と結晶成長技術の改良で,CTのX線環境で検出感度が低下する出力ドリフトの低減に成功し,シリコン半導体検出器よりも検出感度の高いCdTe検出器を実用化した。2014年から米国国立衛生研究所(NIH)などに第一世代のプロトタイプを導入,2019年からは改良した第二世代のプロトタイプをメイヨークリニックなどに導入し,全世界で6台のプロトタイプで研究を推進。100編を超える学術論文に支えられたエビデンスを得て,満を持しての上市となった。現在,すでに欧米で20以上のシステムがインストールされ,臨床での活用が始まっている。
◇面内分解能0.11mmの高空間分解能や最大45%の被ばく低減を実現
NAEOTOM Alphaは,体軸方向6cm幅のQuantaMax detector を搭載し,最大ピッチ3.2,66msの時間分解能(ハーフ再構成)を有するDual Source CTである。X線管には,最大1300mAの管電流出力が可能な“Vectron”を搭載し,被ばく低減技術“Tin filter technology”も採用されている。ガントリ開口径は82cmと大きく,耐荷重最大307kgの寝台は低い位置まで下げられるなど,ペイシェント・エクスペリエンスにも配慮されている。
フォトンカウンティングによる恩恵の一つである高解像度化においては,標準スキャンモードでスライス厚0.4mm,面内分解能0.24mm,高解像度スキャンモードでスライス厚0.2mm,面内分解能0.11mmを実現している。展示では,幅1.2mm程度のアブミ骨の骨折評価や蝸牛の先端までの描出,ステントの編み目形状の描出などの可能性について画像を供覧して紹介した。また,X線から電流への直接変換によりノイズが生じず,高い線量利用効率を有するため,従来CTと比べて線量を最大45%の低減できる。一般的な副鼻腔撮影は,自然放射線による被ばく1日分と同等の超低線量(0.0063mSv)で撮影可能なことなどが紹介された。
◇Dual Sourceによる高速撮影でも可能なスペクトラルイメージング
従来CTではX線を光に変換する時点でエネルギー情報が失われていたが,NAEOTOM AlphaではX線フォトンのエネルギーレベルを計測することで,すべての検査でレトロスペクティブにスペクトラルイメージングが可能になる。骨折の評価では,カルシウムを抑制することで浮腫や出血を検出でき,新鮮骨折か否かを評価することができる。また,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のフォローアップにNAEOTOM Alphaを用いた例を提示し,低線量・高分解能画像による肺炎評価だけでなく,スペクトラルイメージングによる血流評価もでき,1回の撮影でより多くの情報を得て評価できることを紹介した。
NAEOTOM Alphaによるスペクトラルイメージングは,dual energy CTによるスペクトラルイメージングと比べて高画質化が可能なことに加え,Dual Sourceを用いた66ms(ハーフ再構成)の高時間分解能を実現している点も臨床上大きな意味を持つ。秒間72cmの広範囲CTAや息止め不可患者,高心拍,小児などのスペクトラルイメージングを実現し,診療における意思決定を支援する。展示では,スペクトラルイメージングと高時間分解能を生かした活用法として,冠動脈の石灰化部分を表現しない画像を再構成するPURE Lumen(純粋な内腔)を紹介し,重度石灰化症例でも冠動脈CTAが可能なことをアピールした。
◇AI技術を活用したワークフロー向上でオペレータを支援
先進技術を臨床で活用するためには使いやすさが重要だが,NAEOTOM Alphaにはシーメンスがこれまでに開発してきたユーザー・エクスペリエンスを高める数々の機能が実装される。“myExam Companion”は,AI技術を用いて開発された検査ガイド機能で,オペレータが患者や検査に関する質問に答えると自動的に最適な撮影プロトコルが提案され,オペレータの経験によらずに適切な検査と一貫性のある結果の提供を可能にする。また,天井に設置する「FAST 3D Camera」は,赤外線カメラで患者を立体的にスキャンしてAIアルゴリズムで解析することで,撮影部位が中心となるように自動でポジショニングを行う。“GO technologies”は,ガントリ前面に備え付けられたタブレットやコンソールからアクセスでき,検査の一連の流れをサポートする技術。患者のセットアップから撮影,画像再構成,後処理・配信までのプロセスを標準化・簡素化することで,ワークフロー向上に貢献する。
●2023
●国内6施設で稼働を開始したフォトンカウンティングCT「NAEOTOM Alpha」
世界初のフォトンカウンティングCT「NAEOTOM Alpha」は,日本国内では2022年1月26日に製造販売認証を取得し,発売から1年が経過した。国内では初号機が2022年6月に東海大学医学部付属病院に導入されて以降,メディカルスキャニング東京,板橋中央総合病院,岡山大学病院,大阪大学医学部附属病院,名古屋市立大学病院に導入され,稼働を開始している。
ブースではITEM初日(14日)10時30分から,代表取締役社長の森 秀顕氏,Siemens Healthineers AG フォトンカウンティングCTプロダクトマネージャーのフィリップ・ウォルバー氏,フォトンカウンティング検出器を共同開発したグループ会社・アクロラドの代表取締役社長の大野良一氏が出席し,発売1周年記念イベントを行った。挨拶した森氏は,JRC・ITEM 2023のメインテーマ“Be a Game Changer in Medicine with Radiology”に触れ,「NAEOTOM Alpha は,CTを再定義するゲームチェンジャーであることに加え,メイドインジャパンの検出器を搭載し,日本の技術で達成していることを誇りに思う」と述べ,さらなるイノベーションを世に送り出すために邁進していくとの意気込みを語った。イベントでは導入6施設へのインタビュー映像も上映し,NAEOTOM Alphaの臨床的有用性についてのコメントが紹介された。
世界ではすでに60台以上が稼働しており,130編を超える学術論文が報告されている。論文数は2023年に入ってからも加速度的に増加しており,放射線科医などの会員制Webサイト「AuntMinnie」のMinnies 2022(放射線医学分野で最も価値ある結果を残した話題に与えられる賞)では3冠を達成。NAEOTOM Alphaへの注目度と期待の高さがうかがえる。
NAEOTOM Alphaは,体軸方向6cm幅のテルル化カドミウム(CdTe)半導体を用いたフォトンカウンティング検出器「QuantaMax detector」を搭載し,高空間分解能,低線量・低造影剤量,スペクトラルイメージングを実現するとともに,Dual Sourceによるハーフ再構成で66msの時間分解能を有し,心臓検査にも対応する。また,AI技術を活用した検査ガイド機能「myExam Companion」や被検者を認識し自動的にポジショニングを行う「FAST 3D Camera」などを搭載し,検査ワークフローの向上も図られている。
今回,CTガイド下穿刺手技を支援するレーザーガイド機能を新たに用意したことがアナウンスされた。対応装置ではガントリ前面に4つのレーザー照射器を搭載し,レーザーマーカにより穿刺位置・角度をガイドし,安全で確実な穿刺手技をサポートする。
なお,JRS共催ランチョンセミナーでは,NAEOTOM Alphaに関するセミナーが15日と16日に行われた。会議センターメインホールで行われたランチョンセミナー21「世界初の臨床用フォトンカウンティングCT:NAEOTOM Alpha~CTの臨床的有用性を再定義する」には多くの聴講者が参加し,胸部,循環器,神経系におけるNAEOTOM Alphaの使用経験が報告された。循環器の演題では,NAEOTOM Alphaにより冠動脈ステントの内腔評価をより正確に行えることで,カテーテル検査の要不要を確実に判断できる可能性があることなどが報告された。
●2024
●ハードウエアとソフトウエアを一新し,高精度な心臓CT検査を効率的に実施可能な第5世代DSCT「SOMATOM Pro.Pulse」を発表
Dual Source CT(DSCT)の可能性をさらに発展させるべく開発された第5世代DSCTとして,SOMATOM Pro.Pulseが発表された。ハードウエア,ソフトウエア共に一新され,従来のDSCTと比べて比較的コンパクトでありながらも,さまざまな最新技術が搭載されている。
DSCTはもともと,Single Source CTの2倍の時間分解能によって高精度な心血管イメージングを可能とした装置として知られるが,SOMATOM Pro.Pulseでは新たに搭載された技術によって,より良好な心臓CT検査の提供が可能となった。ハードウエアは,Photon Counting CT「NAEOTOM Alpha」と同じプラットフォームを採用しつつ,エネルギー積分型検出器(EID)を搭載。86msというきわめて高い時間分解能によって,心拍の影響を受けづらい安定した画像が得られ,高心拍や不整脈の患者でもβブロッカーを使用することなく心臓CT検査を行うことができる。一方,DSCTでは,特に息止め不良患者などにおいて,マルチスライス撮影による画像のつなぎ目にズレが生じるバンディングアーチファクトが発生することが課題であったが,新開発の画像再構成技術「ZeeFree」によって,連続する心拍の位置情報の変位をベクトル解析することで,バンディングアーチファクトを解消し,心臓全体の連続性を担保した信頼性の高い画像の取得が可能となった。
また,SOMATOMシリーズのDSCTとしては初めて,人工知能(AI)を用いて開発された全自動撮影システム「myExam Companion」が搭載された。被検者の身体的特徴や心拍,息止めの可否,体内金属の有無などを選択するだけで最適な撮影条件を自動設定し,検査を実施するほか,検査後には必要な画像の作成や解析などが自動で行われる。これにより,難易度の高い心臓や脳卒中,dual energyなどの検査においても,オペレータのスキルや経験に依存しない正確かつ再現性の高い検査を効率的に実施可能となる。
そのほか,SOMATOM Pro.Pulseでは,従来は天井から吊り下げられていた3Dカメラをガントリ上部に搭載した。赤外線とRGBの2眼で患者の位置や体形などを確認し,最適な位置から撮影できるよう自動でポジショニングされる。また,ガントリ横には,DSCTで初めて操作用タブレットが搭載された。画面をタップするだけで検査を進めることができ,操作がより容易となる。操作用タブレットは取り外し可能で,画面を縦横どちらの向きでも使用することができる。さらに,ハードウエアにおいては電源容量を従来のDSCTの2/3まで小型化したほか,X線発生器をガントリに内蔵し,冷却システムを水冷方式から空冷方式に変更したことでチラーの設置が不要となり,設置面積が狭小化している。消費電力も従来のDSCT比で20%削減された。