Intelligent CT『SOMATOM X.cite』Exciting Report
2021年9月号
医真会八尾総合病院 Intelligent CTが可能にした検査の自動化で救急・急性期医療における速やかな診療を支援 ─“myExam Companion”によるガイダンス機能を充実させ検査の効率化とスタッフの業務負担を軽減
Siemens Healthineers(シーメンス)の最新鋭CT「SOMATOM X.cite」を導入する施設が増えている。“Intelligent CT”と呼ばれるこのAI技術搭載CTは,撮影プロトコルの設定や画像再構成・解析処理を自動化し,撮影者のスキルに依存することなく検査の標準化を図れる装置として,評価を高めている。SOMATOM X.citeを導入することで検査・診断の現場で何が変わるのか。大阪府八尾市の救急・急性期医療を担う医真会八尾総合病院で,その実力を確かめた。
二次救急医療機関として八尾市の救急・急性期医療を担う
医真会八尾総合病院は,1988年の開院以来,大阪市に隣接する八尾市において,急性期医療を担っている。二次救急医療機関として救急医療に力を入れており,2020年度は3000件強の救急搬送があった。社会医療法人医真会の理事長でもある鶴薗卓也院長は,「救急のほかに,整形外科領域をはじめとした急性期医療を提供しており,今後もさらに診療を充実させていきたいと考えています」と同院の特色を強調する。
救急・急性期医療を中心とした同院の診療を支えているのが放射線科である。放射線科には,現在,診療放射線技師17名が在籍。夜間や休日も含め,24時間365日,スタッフがローテーションで検査業務を担当している。このうち,CTの検査件数は毎月平均700件以上に上る。
低管電圧撮影やDual Energy CTを目的に最新CTを採用
毎月平均700件以上の検査を1台で担うことができる装置として,同院では「SOMATOM X.cite」を導入。2021年5月から稼働している。放射線科の細見和宏主任は導入の目的について,「腎機能の低下した患者さんが増えており,造影剤量の低減が求められていました。そのためにも,低管電圧撮影やDual Energy CTが可能な装置が必要でした」と述べる。特に,被ばく線量と造影剤量を低減するには,低管電圧撮影が有用だ。SOMATOM X.citeは,最大1200mAの管電流出力が可能なハイパワーのX線管「Vectron」,被ばく低減のためのX線スペクトラム変調技術“Tin filter technology”を採用し,低被ばく・低管電圧撮影が可能である。放射線科では,理念の一つに「被ばく線量を必要最低限に工夫する」を掲げており,これらの技術はSOMATOM X.cite選定の大きな要素となった。
加えて,Dual Energy CTについては,物質弁別画像など診断能の向上につながる画像を提供したいとの要望があり,それを可能にするSOMATOM X.citeへの期待が高まった。さらに,検査ガイド機能の“myExam Companion”,画像再構成・解析処理を自動化する“ALPHA(Automatic Landmarking and Parsing of Human Anatomy)Technology”および“Inline Results”,ポジショニングを自動化する「FAST 3D Camera」といったAI技術が搭載されていることを評価し,SOMATOM X.citeの採用を決めた。
多くの検査でmyExam Companionを活用
SOMATOM X.citeが稼働してから2か月が経過した現在,多くの検査でmyExam Companionが利用されており,検査の自動化が図られている。細見主任は,次のように説明する。
「myExam Companionによって基本となる撮影プロトコルを選択した後は,タブレット,またはコンソール画面上に表示される質問に答えていくだけで,適切に撮影技術を使い分けられるようにしました。胸部・腹部領域の検査では,息止めの可否を選択するだけで,十分な息止めができない場合は自動的にガントリの回転速度やピッチを上げるようにプロトコルを設定しています。また,整形外科領域の検査では,目的に応じてDual Energy CTや金属アーチファクトの低減を目的としたTin filter technologyの活用など複数の選択肢がありますが,myExam Companionを活用することで,従来は複数のプロトコルを用意して対応するしかなかった運用も,今は1つのプロトコルで管理できるようになりました(図1)」
さらに,画像再構成・解析処理も,ALPHA TechnologyやInline ResultsといったAI技術により,自動化している。例えば,頭部CTのMPRや冠動脈CTAにおける主要3枝のCPRなどの画像再構成,Dual Energy CTの解析処理も自動で行われるため(図2),診療放射線技師の作業負担を軽減し,処理時間も5〜10分程度の時間短縮を図れている。
AI技術がもたらした検査時間の短縮と迅速な診断・治療
AI技術による自動化がもたらすスループットの向上は,救急医療に力を入れる同院に多くのメリットをもたらしている。鶴薗院長は,SOMATOM X.citeについて,「CT検査後すぐに結果画像を得られる」と述べ,迅速かつ正確な診断に寄与していると評価している。冠動脈CTAでも,CTの寝台から患者を下ろした時点で画像処理が完了しており,速やかに診断・治療へと進めるようになった。
一方で,診療放射線技師にとってもスループットの良さは,業務効率の向上につながっている。特に,新型コロナウイルス感染拡大の中,陽性疑い患者の検査では,PPE着脱や消毒,清掃に時間を要するほか,換気の時間も確保しなければならない。これについても,myExam Companionによって時間を確保できるようになった。細見主任は「感染症対策がスタンダードになった今,CT検査にかかわる業務量が増えています。特にCT装置1台で運用する当院では業務効率化は重要です」と述べる。
さらには,検査の自動化は,放射線科スタッフの負担を軽減している。放射線科ではローテーションで検査を担当するため,経験の浅い診療放射線技師も担当することになるが,以前はほかのスタッフがサポートしなければならないケースも多々あった。それがmyExam Companionによって,サポート不要で検査を行えるようになったという。入職4年目となる放射線科の小谷 茜技師は,「先輩方がmyExam Companionで“道標”を作ってくれたので,これまで経験していない部位や目的の検査であっても,サポートを受けることなく一人で落ち着いて行うことができます」と述べる。SOMATOM X.cite導入後は,myExam Companionを使うことによって, 経験の浅いスタッフの不安をなくすとともに撮影技術を共有できるようになり,高いレベルで検査の標準化が図れている。さらに,経験豊富なスタッフが応援に呼び出されるケースが減少するなど,放射線科全体の業務量を削減できている。
検査の効率化で生まれた時間を業務拡大やスキルの向上に生かす
放射線科では,これからもmyExam Companionの適用を拡大させ,検査の自動化を進めていくこととしている。医師の働き方改革としてタスクシェアやタスクシフトが進む中,診療放射線技師法が改正され2021年10月1日から施行される。これから診療放射線技師の業務拡大が進むと考えられ,そのためにも検査効率の向上が求められている。細見主任は,「myExam Companionなどを活用して自動化を進め,私たちはほかの業務に取り組めるようにすることで,業務拡大にも対応できると考えています」と述べる。さらに,鶴薗院長は,「検査の効率化によって,残業時間を削減するだけでなく,時間を有効活用してスキルの向上を図ってほしいと思います。
ひいてはそれが質の高い診断・治療に結びつくはずです」と期待を込める。SOMATOM X.citeは,八尾市の救急・急性期医療を担う同院にとって欠かせない装置として,今後さらに活用されるに違いない。
(2021年7月15日取材)
myExam Companion Use Case
医真会八尾総合病院▶Dual Energy CT
救急の脊椎骨折,股関節骨折疑いでは全例でDual Energy CTを撮影
医真会八尾総合病院では,ほとんどの領域の検査でmyExam Companionを利用している。SOMATOM X.citeの稼働後も,検査目的に応じてアレンジを加え,前機種の時に作成していたマニュアルも参考にして適用範囲を拡大している。特に,整形外科領域の検査では,すべてにmyExam Companionを使用している。CT更新の大きな目的でもあったDual Energy CTでも,myExam Companionを活用。救急の脊椎骨折,股関節骨折疑いでは全例でDual Energy CTを撮影し,Inline Resultsで自動解析された“DE Bone Marrow”画像を提供している。DE Bone Marrow画像は,整形外科医からも新鮮・陳旧性骨折の鑑別に有用との高い評価を受けている。今後症例を積み重ねていくことで,将来的にはMRIを省略するなど検査のディシジョンツリーが変わる可能性がある。
医真会八尾総合病院
住所:大阪府八尾市沼1丁目41番地
TEL:072-948-2500
URL:https://ishinkai.or.jp/hospital/
病床数:241床
診療科目:20科