Intelligent CT『SOMATOM X.cite』Exciting Report

2021年6月号

SUBARU健康保険組合 太田記念病院 広範囲4D撮影やAI技術で循環器診療や救急診療を支える検査を追究─ 検査ガイド機能“myExam Companion”で夜間でもスムーズかつ確実な撮影が可能に

左から2人目が安齋 均副院長,3人目が西原郁雄技師。1人おいて右から2人目が秋山愛映技師。

左から2人目が安齋 均副院長,3人目が西原郁雄技師。1人おいて右から2人目が秋山愛映技師。

 

Siemens Healthineers(以下,シーメンス)が2020年春から発売を開始したSingle Source CT「SOMATOM X.cite」は,“Intelligent CT”をキャッチフレーズとする同社の最新装置で,高い基本性能に加え,人工知能(AI)技術を用いた全自動撮影を実現,最適な検査を可能にする。6回にわたり,装置の活用事例を紹介する本シリーズのScene2では,群馬県のSUBARU健康保険組合 太田記念病院の循環器診療や救急診療での活用を取材した。

地域医療の要として多くの検査・治療を担う

SUBARU健康保険組合 太田記念病院は,2012年2月に旧総合太田病院から新病院として新たに開設された。市民病院がない太田市で市民の健康を守る役割を担うほか,県内に4施設ある第三次救急病院の一つとして2012年6月に救命救急センターを設置,ドクターヘリの受け入れも行っている。また,循環器内科医の安齋 均副院長は,同院の特色について「循環器内科と心臓血管外科が連携して心臓血管センターを運営しており,県内初のハイブリッド手術室を設置し,高度医療を提供しています」と説明する。
画像診断部では,救急医療体制の確立に伴い緊急依頼のCTやポータブル撮影,心臓カテーテルなどの検査件数が増加傾向にある。また,経皮的冠動脈形成術や下肢動脈のインターベンション,大動脈瘤ステントグラフト内挿術の治療チームに参加し,高度な手技をサポートしている。1日あたりの検査件数は,一般撮影が約100件,CTが約80件,MRIが約25~30件となっている。診療放射線技師は21名在籍しており,夜間勤務も含めすべてのモダリティを1週間のローテーションで担当する。そのため,どちらかと言えばゼネラリストが求められる環境だと西原郁雄技師は説明する。

高性能Single Source CT SOMATOM X.citeを導入

同院では2021年2月,2台のCT装置のうち1台をシーメンスのSOMATOM X.citeに更新した。SOMATOM X.citeは,最大1200mAの管電流出力が可能なX線管「Vectron」を採用。検出器「Stellarinfinity Detector」や逐次近似再構成“ADMIRE(Advanced Modeled Iterative Reconstruction)”により,空間分解能や低コントラスト検出能,画質向上などを実現した。また,82cmのガントリ開口径や82cmの最大再構成FOV(拡張FOV),耐荷重量に優れる患者テーブルにより,体格の大きな患者や緊急検査に柔軟に対応できる。
SOMATOM X.citeの選定理由について,西原技師は次のように話す。
「当院の特徴として,循環器領域の広範囲4D撮影や外来での緊急検査が多いことがあります。救急搬送された患者は,患者テーブルの中央にポジショニングできない場合もありますが,SOMATOM X.citeはガントリ開口径が広く,拡張FOVを使用できることも決め手の一つとなりました。また,今後適応が広がっていくであろうdual energy撮影や低管電圧撮影は必須だと考えました」

広範囲4D撮影が可能なSOMATOM X.cite

安齋副院長は,SOMATOM X.citeの有用性について広範囲4D撮影が実現した点を評価している。同院で行う血管内治療(EVT)の約半数は重症下肢虚血(CLI)で,1日あたり約2件の下肢4D撮影を行っている。また,大動脈ステントグラフト挿入術のエンドリーク評価に際しては,ステント上部の血管や側副血行路まで見えることが重要となる。観察範囲を4Dで評価するにはエリアディテクタCTでもカバーできないため,最大44cmの撮影範囲で4D撮影が可能なSOMATOM X.citeを導入した。これにより,術前の診断から術後のフォローアップまで有用な情報を得られるようになったという。
さらに,X線管などハードウエアの性能向上などにより,低管電圧撮影でのコントラスト向上も実現した。安齋副院長は,「4D-CT画像においてコントラストが向上したことで,閉塞部や側副血行路をより明瞭に描出できるようになりました。また,慢性完全閉塞病変(CTO)の治療戦略を立てる上で非常に重要となる冠動脈CTA画像においても,コントラスト向上の効果が出ています」と評価している。
また,装置選定理由の一つでもある低管電圧撮影は,造影剤や被ばく線量低減の面でも有用だ。安齋副院長は,「循環器科では慢性腎臓病(CKD)を合併する患者さんが多く,本来必要なCT撮影を断念せざるを得ないケースもあります。しかし,低管電圧撮影により造影剤量を低減できれば,検査が可能になるケースが増えることが期待できます」とその意義を強調する。造影剤減量に加えて,被ばく線量の低減も実現しており,ハードウエアの性能向上やADMIRE の搭載効果により,下肢4D撮影での被ばく線量は従来に比べ1/4程度まで低減できている。

myExam Companionで撮影技術の標準化を実現

さらに,西原技師は検査ガイド機能myExam Companionや画像再構成・解析処理を自動で行う“ALPHA(Automatic Landmarking and Parsing of Human Anatomy)Technology”などのAI技術を用いた全自動撮影技術も,大きなメリットだと感じたという。myExam Companionは,患者の性別や年齢,体格などのほか,息止めが可能かといった質問項目に回答することで,撮影プロトコルが自動調整される。同院では,装置導入時に救急診療や夜間対応も想定した独自のプロトコルを詳細に設定,検査ごとに最適な撮影が行えるようにした。
同機能について西原技師は,すべての技師が,同じレベルの画像を撮影できるようになったと高く評価している。また,質問項目に回答していくことで,改めて患者の状態を確認できる点もメリットだという。
さらに,ALPHA TechnologyによるMPR画像の自動作成は,ポストプロセスに要する時間を従来の1/3~1/4程度に短縮した。秋山愛映技師は,「SOMATOM X.citeでは,次の検査に移る時にはすでに画像がPACSやワークステーションに送信されています。装置更新後も全体の撮影件数は変わっていないため,短縮された時間をそのまま3D画像作成などに充てることが可能になりました」と話す。

myExam Companionを活用したプロトコル設定画面の一例

myExam Companionを活用したプロトコル設定画面の一例

 

COVID-19対応に有用なタブレット型コンソール

多彩な機能を誇るSOMATOM X.citeだが,ハード面のユニークな特徴として,タブレット端末が搭載され,ベッドサイドでプロトコルや撮影範囲の設定,画像の確認を行うことが可能である。患者から目を離すことなく一連の操作が可能で,操作室との往来が減るため,スループットが向上する。特に,それが功を奏しているのが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応だ。検査室内でタブレット端末からプロトコル設定を行うことで,入退室に伴う防護衣の着脱が不要となるため,現在ではCOVID-19陽性/陽性疑い患者は,すべてSOMATOM X.citeで対応している。

プロトコル設定や画像確認がベッドサイドで行えスループットが向上

プロトコル設定や画像確認がベッドサイドで行えスループットが向上

 

両下肢重症下肢虚血(CLI)に対する血管内治療(EVT)の1か月後フォローアップ検査画像。両下肢ともに治療後閉塞なく血流が保たれていることが確認できる。CLI患者のように左右の下肢で血流速度が違う場合,通常のCTAでは撮影タイミングの違いで血管抽出不良が生じる可能性があるため,4D撮影によって血流状態を把握することが重要となる(撮影範囲44cm,管電圧70kVp)。

両下肢重症下肢虚血(CLI)に対する血管内治療(EVT)の1か月後フォローアップ検査画像。両下肢ともに治療後閉塞なく血流が保たれていることが確認できる。CLI患者のように左右の下肢で血流速度が違う場合,通常のCTAでは撮影タイミングの違いで血管抽出不良が生じる可能性があるため,4D撮影によって血流状態を把握することが重要となる(撮影範囲44cm,管電圧70kVp)。

 

AI技術の活用で現場の改善と収益化の両立を図る

AI技術の導入により,医療現場の大きな変革が予想される。安齋副院長は,「2024年に医師の時間外労働時間制限が始まり,働き方改革はよりいっそう進んでいくでしょう。しかし,診療体制の維持に不可欠な専門人材の育成・確保は容易ではありません。その解決のため,特定の業務をAIが代替することも有用ではないでしょうか」と話す。また,AIの活用で受け入れ患者数が増加すれば,病院の収益にも寄与する。SOMATOM X.citeの活用は,地域医療を担う同院の基盤を確かなものにするに違いない。

(2021年4月3日取材)

 

myExam Companion Use Case

SUBARU健康保険組合 太田記念病院▶救急CT

検査の自動化で救急診療でも一貫したCT検査を実現

第三次救急病院の機能を担う太田記念病院の救急外来では,見逃しを防ぐことを第一に考え,ほぼすべての患者に画像検査を行っている。SOMATOM X.citeは,ガントリ開口径が大きくFOVが広いことに加え,myExam Companionにより緊急時でも適切なプロトコルを迅速に設定し,確実な撮影が行える。また,バックボード使用による影響など,救急外来に特有の条件を考慮したプロトコルがあらかじめ設定されている。若手技師が単独で夜間勤務を行うことがあるが,経験年数を問わずスムーズかつ確実な撮影が行えるのは非常に有用だという。加えて,外傷のルーチン検査として頭頸部の固定撮影を行っているが,ALPHA Technologyにより正確なMPR画像が自動的に作成されることで,画像再構成に充てていた時間をほかの作業に振り分けることが可能になった。秋山技師は,「慌ただしい救急現場では,大変ありがたい機能です」と高く評価している。

 

SUBARU健康保険組合 太田記念病院

SUBARU健康保険組合 太田記念病院
住所: 群馬県太田市大島町455番地1
TEL:0276-55-2200
URL:https://www.ota-hosp.or.jp
病床数:404床
診療科目:30科

 

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