技術革新が進んだ現在においても，MRIの高速化と高画質化は期待の大きい臨床ニーズである。本稿では，この相反する2つの課題に注力して開発されたAIソリューション「SmartSpeed AI」を解説し，乳腺領域における応用例を紹介する。

●高速化・高画質化AI：SmartSpeed AI

SmartSpeed AIは，sensitivity encoding（SENSE）とcompressed sensing（CS）をOne-Go方式で融合したCompressed SENSE^1）のフレームワークをベースに，CSのwavelet変換とノイズ除去のプロセスをAIに置換した技術である。k空間データのランダムアンダーサンプリングにより発生するノイズ状折り返しアーチファクトの展開・除去をAIが担うことから，SmartSpeed AIは高速化AIと言えるであろう。さらに，フルサンプリングされた画像を教師データとして使用することで，高画質化機能も備わる。繰り返し再構成の中で使用されるiterative SENSE^2）とAIが，折り返しアーチファクトの展開・除去，g-factorノイズの最小化を行う。
図1は，SmartSpeed AIを使用した乳腺ultrafast dynamic contrast-enhanced MRIの臨床例である。13.5倍速で撮像することで，時間分解能3秒の高速化を実現し，アーチファクト，g-factorノイズ共に限りなく低減した0.7×0.7×1.5mm³の高分解能画像を取得できる。時相間でデータ共有を行うview-sharing技術を使用しないため，maximum slopeやtime to enhancementといった血流動態パラメータの診断能向上が期待される。

高速化技術SmartSpeed AIが臨床ニーズを解決し，新たな臨床エビデンス創出に向けて応用されていくことを期待する。

図1　SmartSpeed AIを乳腺超早期相イメージングに応用した臨床例（画像ご提供：熊本中央病院様）

^{●参考文献
1） Geerts-Ossevoort, L., et al. : Compressed SENSE Speed done right. Every time. Philips FieldStrength Mag., 2018.
https://philipsproductcontent.blob.core.windows.net/assets/20180109/619119731f2a42c4acd4a863008a46c7.pdf
2） Pruessmann, K.P., et al. : Advances in sensitivity encoding with arbitrary k-space trajectories. Magn. Reson. Med., 46（4）: 638-651, 2001.}