技術解説(フィリップス・ジャパン)

2024年3月号

腹部領域におけるITの最前線

腹部アプリケーション技術解説

平久保 拓[(株)フィリップス・ジャパンEDIビジネスマーケティング]

フィリップスの医用画像ワークステーション「IntelliSpace Portal(ISP)」は,モダリティ専用画像処理ワークステーションから現在のマルチモダリティ(CT,MRI,核医学),マルチベンダーワークステーションとして発展してきた。マルチユーザー環境に対応したネットワーク型と,シングルユーザーに対応したスタンドアロン型のどちらの環境でも運用できる。現在では70を超えるアプリケーションを持ち(2024年1月時点),幅広い診療領域で活用されている。近年では,Intelligent,Automated,Connectedをテーマにワークフローを改善し,解析者の負担を軽減できるように開発されている。
本稿では,腹部アプリケーションである「MR Liver Health」と「MMTT(Multi Modality Tumor Tracking)」および「MMTT qEASL(quantitative European Association for the Study of the Liver)」について紹介する。どちらも複雑な作業をせず,簡便でかつ定量的に解析できるように設計されたアプリケーションである。

■MR Liver Health

近年,脂肪肝が急激に増加しており,特に非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease:NAFLD)が増加している。NAFLDは肝硬変や肝細胞がんにも進行すると言われている。MR Liver Healthはプロトン密度脂肪率(proton density fat fraction:PDFF)を使用し,肝組織の脂肪割合(脂肪分画)と鉄沈着の測定が継続的に可能で,非侵襲的であり安定した再現性の高い測定が可能である。
また,アプリケーションを起動する前に,バックグラウンドで肝臓を畳み込みニューラルネットワーク(CNN)ベースのアルゴリズムによってセグメンテーションさせておくことも可能である(図1*1。それにより肝臓全体のボリュームを簡便に把握し,肝区域のボリューム解析やROI解析を行い,MRデータセットのマルチパラメトリックマップを作成することで,効率的に肝臓疾患を評価できる。肝臓のVOI測定値では,脂肪含有率のT2値範囲の定義を計算に組み込むことや,MRパラメトリックマップの縦断的評価にも対応しており,複数箇所で肝臓定量値の結果を比較できる。セグメンテーションに時間を必要としないことや,fat fractionの値が出るまでに多くの計算や時間を必要としないことは,ワークフローの改善にも役立てると考えている。

図1 MR Liver Healthによる肝区域設定

図1 MR Liver Healthによる肝区域設定

 

■MMTT qEASL

ISPではMMTTという腫瘍系疾患に有用なマルチモダリティアプリケーションがある。MMTTは,CT,MRI,PET/CT,SPECT/CT画像において,処理解析,定量化を目的としている。MMTTでは,1つまたは複数のスタディの時間的経過(複数の時間ポイント)において,自動位置合わせ,セグメンテーションと測定が可能なほか,腫瘍やリンパ節といった腫瘍病変の定量的かつ特性を示す情報が得られる。今回紹介するMMTT qEASLは,MMTTの機能を強化し,冠動脈化学塞栓術(TACE)の治療効果判定に特化した機能である。造影されたMR画像と非造影との比較により,肝がん用に適正化された腫瘍の治療効果判定が可能で,さらにボリューム測定においては腫瘍ボリュームの定量的な結果をcc(立法センチメートル)と総腫瘍ボリューム比で提供できる。画像上に計算された血流マップをオーバーレイした表示が可能であり(図2),視覚的に治療効果を認識することができるため,フィリップスは患者様への説明にも役立てることができると考えている。

図2 MMTT qEASLでのTACE後の造影効果を利用した血流カラーマップ

図2 MMTT qEASLでのTACE後の造影効果を利用した血流カラーマップ

 

*1 バックグラウンド処理はオプション

販売名:フィリップス画像診断用ワークステーション
医療機器認証番号:22000BZX00781000
特定保守管理医療機器
管理医療機器

 

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http://www.philips.co.jp/healthcare

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